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INTERVIEW

Japanese

bookman

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メンバー:木囃子(Gt/Vo)

インタビュアー:五十嵐 文章

シンガー・ソングライター/詩人、木囃子(読み:コバヤシ)によるソロ・プロジェクト・ロック・バンド"bookman"のニュー・アルバム『ピアニシモ・ハートビート』がリリースされる。日常生活において避けられない心の痛みややるせなさをバンド・サウンドに乗せて描いた前作『farewell note.』のリリースより約3年。彼の歌はより懐が深くなり、親しみやすさと壮大さを身につけ、より多くの人々の心を掬い上げようとしている。歌い手としてまた新たな物語の1ページを刻もうとしている彼に、"bookman"を始めたきっかけ、そして今回の新譜について話を訊いた。


様々な感情を表現した楽曲の中に、流動的な命のBPMを感じていただけたのであれば、とても嬉しい


-今回Skream!初登場ということですので、最初に木囃子さんが"bookman"というプロジェクトを始めたきっかけをうかがえたらと思います。

もともと、中学生の頃よりバンドとして音楽活動はしていて、いろいろなライヴハウスのイベントで演奏させていただいていたのですが、18歳ぐらいのタイミングで、一度解散をすることになりまして、そのときに、新しくメンバーを探して、コミュニケーションをとって、もう一度最初からバンドというものを作り上げて......という気力が残ってなかったんです。作詞作曲を担当していたのですが、編曲もDTMでデモを全部自分で作り上げてから、メンバーに共有するというようなスタイルを当時からとっていたこともあって、だったらひとりでやれることを全部"自分だけで"やってやろうって思って、ソロ・プロジェクト・バンドという形態で活動することを決めました。

-直訳すると"読書人"、"文人"、"本屋"などの意味になる"bookman"というプロジェクト名が印象的です。このプロジェクト名にどのような意味合いやイメージを込められているのでしょうか?

この"bookman"という名前に関しては、父親の影響が強いですね。父は本に関わる仕事をしているのですが、幼少の頃より父親のイメージと言えば"本"そのものでした。書斎には大きな本棚と、床にも平積みになっていて、床抜けるんじゃないかなぁ、なんて思っていた記憶があります。もちろん、そういう環境で育ったこともあり、私自身も本の虫ではあります。漫画、アニメ他いろいろ好きでよく大切なインプットとして楽しみますが、少ししんどくなったときに欲するのはやっぱり活字なんですよね。救いとして長く付き合い続けているこの存在のようになりたいという思いから、ソロ・プロジェクト=自分自身である轍の名前に"bookman"を選びました。

-現在シンガー・ソングライターとしても活動されているかと思いますが、bookmanでバンドという表現方法を選ばれた理由をうかがいたいです。

理由としては至極単純で、バンドという存在に憧れて音楽続けてきたからですね。bookmanを始めたきっかけのお話と矛盾してしまうかもしれないのですが、メンバーがいて、それぞれの出す音と心の交差が楽曲を形作ってという活動の形に、強く憧れを持って音楽活動を続けてきました。今となっては、拙くも音楽で生きる人間として視野も広がり、アレンジの引き出しも増えて、どのようなサウンドが、自らが最も重要視している詩の世界をベストな形で伝えられるかを、少しは考えられるようになりましたが、やはりバンドのギター・ヴォーカルとしてギターをかき鳴らしながらステージに立っている姿が、一番しっくりくるなと今でも思っています。

-普段の活動の中で、ソロ・ヴォーカリストとしての活動との違いなどを感じることはありますでしょうか? 技術面やサウンド面だけでなく、楽曲を作る際のメンタリティの違いなどもありましたらお話いただければと思います。

どちらも"bookman"としての名前で自分自身であることに変わりはないので、正直、精神的な部分は大きな違いはないと思っています。活動を始めてしばらくは弾き語りソロで、ライヴで歌わせていただくことがほとんどでしたが、常に"bookman"というバンドのギター・ヴォーカルのつもりでステージに立っていました。

-今回リリースされる4thアルバム『ピアニシモ・ハートビート』では、サウンドの多彩さももちろん印象的でしたが、木囃子さんの歌声の美しさや懐の深さが大変印象的に感じられました。今までにどのようなシンガーに影響を受けてこられたのでしょうか?

届かないなぁ、という存在に憧れを抱いてしまうことが多いので、自分のフィルターを通して楽曲にきちんと落とし込めているかどうかはわからなくて、それを影響されていると表現することが僭越であるようにも感じてしまう人間なのですが、制作活動を行ううえで、自分の中に意識しているアーティストさんはたくさんいます。嫌いな、というか肌に合わない音楽ってあまりないので、選ぶのが難しいですが、その中でも強く自分の中にコアとして存在していると言うならば、amazarashiさん、CIVILIAN(ex-Lyu:Lyu)さんですかね。影響というか、敬愛しています。もともとは両親の影響でフォーク・ソングから音楽を始めているので、さだまさしさんとか、"ポプコン(ヤマハポピュラーソングコンテスト)"世代のアーティストさんにも影響を結構受けていると思います。

-サウンド面において影響を受けたアーティストなどございますか?

趣味としてサウンドトラック集めがありまして、サウンド面に限定すると、こういうのやりたいなって思うのはサントラ聴いてるときが多いですね。打ち込み要素や、ロック・バンドとしてはあまり使わない楽器で素材録りして、アレンジの中に細かく散りばめたりするのも、そういう影響だと思います。今組んでいる相棒のレコーディング・エンジニアにも"トラック数多っ!"ってよく言われます。大変そうなの見てよく後ろでニヤニヤしてます。

-今回のアルバムに関して、詳しくうかがいたいです。すべての楽曲を通して聴くと、ピアノや鉄琴のような音が心音のようなテンポで入っている楽曲が多いように感じます。これはやはりタイトルの"ピアニシモ・ハートビート"に関係しているのでしょうか。

今、楽曲を聴いていただいた感想を受け取って、ずっとチームの中でのみ意見を聞いてきたので、やっと外に出たんだと少し感慨深い気持ちになりました。そうですね、今回のアルバムには一貫して"心音"というテーマがありますので、アレンジの中に意図的に、そういったサウンドを織り交ぜています。結果的にそう聴こえるようになったというものもありますが、様々な感情を表現した楽曲の中に、流動的な命のBPMを感じていただけたのであれば、とても嬉しいです。

-情感豊かな歌詞も印象的です。生きていくうえでつい目を逸らしてしまいがちな重たい感情を、繊細な言葉で綴られているのがとても美しく感じますが、作詞において影響を受けたアーティストや作家などはいますか?

本は絶えず触れてきたので、作家さんというと選ぶのは難しいのですが、バンドマンとして、そして作詞家として強い影響を受けたと言えば、やはり秋田ひろむ(amazarashi)さんだと思います。もともと自身がやりたかったことではあるのですが、まともに受け取ってしまうとダメージを負ってしまうような、現代社会において避けられないピースを、フィロソフィックに、文学的に歌詞として、且つ泥臭くエモーショナルに編み込んで歌い上げる姿にはとても憧れています。もうファンになって10年以上経ちますが、はじめて出会ったときには、"こういう歌を、こういう感情を歌ってもいいんだ"とbookmanとして音楽活動を始める大きなきっかけになりました。まだまだおこがましいかもしれませんが、第一線でも足掻き続ける姿を見て、新譜が出るたびに、悔しいなという感情も少しずつ出てくるようになりました。

-普段作詞をするうえで、意識していることなどはありますか。

私は詞先行でしか曲を書いたことがなくて(というかそれしかできないです)、まず何の制約もなく、描きたいことを自由詩や散文詩のように書きます。メロディに乗せるために、表現を変えたりしながら歌詞へと整えていくのですが、漢字の使い分けとかは細かく意識していますね。より表現したい質感に合うほうを使ったり、もしくはあえて使わなかったり。文法的にも正しいだけが答えではないので、意味を意識しつつ自由に組んでます。造語にもあまり抵抗なく漢字の意味と音で使ってしまうことが結構多いです。曲の題名も本来ない言葉を使ったりよくしますし。それでも伝わるって言葉の素晴らしさだと思うんですよね。今まで使ったことないのに意味が理解できるって。

-アルバム収録曲について、1曲ずつフォーカスを絞ってうかがいたいと思います。1曲目に収録されている「Pianissimo Heartbeat(inst)」はインスト曲ですね。ピアノと、花が開くようなギターのアルペジオが美しいですが、どのような情景をイメージした楽曲なのでしょうか。

アルバム・タイトルを付けたこの曲は、実はバンドとして演奏することを意識して作りました。そのために、シンセ・ドラムとそれぞれの楽器のクリーン・サウンドが繊細に絡む前半のアレンジと、一気にドライヴしてエモーショナルにかき鳴らす後半のアレンジにわけました。前半はひとりの世界、シンセ・バスドラムの拍動をベースに、自分の思考回路が絡んでいくような表現をしたくて、後半のバンド・インからは、ひとりではなくメンバーも含めた力強いアンサンブルで、今までの道のりを肯定し確かめるようなイメージでアレンジをしました。

-2曲目の「夜をかかえて」はミュージック・ビデオも公開されていますね。アルバムの幕開けに相応しい疾走感ある楽曲となっていますが、どのようなきっかけでできた楽曲なのかうかがいたいです。

全楽曲の中で一番最初にできて外に出した曲です。様々な場面で夜というものが、負の代名詞みたいになっていることに違和感を覚えて、"夜は明ける"、"明日はくる"という夜は終わるべきともとれる表現を耳にしたときに、では朝が怖くて、この場所に心を置いている自分は間違っているのか? と思ってしまい、そんなはずはないだろうという思いを込めて書きました。今の時代、多様性の肯定が当然ですし、夜に居場所を見いだしている人もたくさんいると思います。でも、外側からの言葉や、世間様のイメージで日の当たる世界を愛しているふりをしなければならない人も、まだたくさんいるような気がして、あなたが愛したいものはあなたが選べばいいと伝えたくてできた曲です。