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INTERVIEW

Japanese

SUEMITSU & THE SUEMITH

2016年11月号掲載

SUEMITSU & THE SUEMITH

Member:末光 篤

Interviewer:石角 友香

-じゃあやはりそのときの体験が自然と出ているんですね。今回、その象徴的な1曲が、tofubeatsさんがアレンジとヴォーカル・エディットを手掛けて大江千里さんが作詞をしたTrack.3「Pinocchio」で。もう3世代集合みたいな(笑)。

ははは(笑)、そうですね。1曲の中でふたりの方に参加していただくのは偶然というか、当初はそんなふうに考えてなかったんです。千里さんもtofu君も関西出身ですよね? 大学も同じなんじゃないですかね。

-へー! おふたりとは実際に一緒に作業されたんですか?

いや、tofu君とは東京と神戸だったので、Skypeでやりとりして。僕はアーティストの方にお願いするときは、こういうふうにしてくれとか、ああいうふうにしてくれって本当は言いたくなくて、お任せしますって言いたいんです。でも、僕も受け手の場合はヒアリングをしたい方なんで、tofu君とはちゃんとお話して。千里さんには曲だけをお渡しして、歌詞はお任せしました。"(この歌詞は)遺書だ"って言ってました。

-たしかに覚悟というか、生き方が出てますね。

自分が書いた歌詞よりグッとくるというか、歌ってる感じで(笑)。

-しかもこの曲のタイトルに"Pinocchio(ピノキオ)"ってつける大江さんのセンスが素敵ですね。

タイトルをもらったとき、"やっぱり好きだな、大江さん"って感じでした(笑)。

-しかも大江さん世代の音楽をランダムに聴いてるtofuさんがアレンジしているのも必然的な感じがして。彼の音楽についてはどんなところに興味が?

tofu君の曲は普通に好きで、新しい作品が出たら買って聴いてますね。最初は森高(千里)さんとコラボした曲(2013年リリースの1stシングル表題曲「Don't Stop The Music」)を聴いたんだと思います。"あ、面白い!"と思って。森高さんを選ぶところにも自分に相通ずるものを感じて"いいな"と。あと、ポップ・センスですね。

-2010年代に、バンド・シーンなどの次に登場した新しい世代ですよね。

機会があったらそういう世代とも音楽を通じて関わってみたいと思っていたので、学校で教えることにしたのもその思いが一番大きかったです。(生徒とは)25歳ぐらい離れてるので、もしかしたらもう共通言語がないのかな? と思ったりして。僕は結婚もしてなくて子供もいないので、その世代と接する機会がないんですよ。で、話すとしんどい(笑)、というか計り知れない。最近のその世代の音楽を聴いてると"不思議だな"と思うことがあって、それを自分の音楽と混ぜ合わせたときにどうなるのかな? ってことにちょっと興味もありますね(笑)。でも違う世代の人と話すと、なんか違う脳を使うというか、僕が当然だと思ってることが(相手にとって)当然ではないので、違う発想で考えなきゃってなるし、触発されるところも多いですね。

-今の学生さんより少し上の世代となるUNISON SQUARE GARDENの田淵智也さんとのレコーディングはいかがでしたか?

ミト君(クラムボン)もそうなんですけど、メロディを作るベーシストのベース・ラインってほんとに独特で。あのベースはもうメロディだと思ってます。そういうところではやっぱり田淵君もすごくて、隙間を縫って聞こえてくる計算されたフレーズが、立体的に考えられてるからものすごくカッコよかったりして。今回の曲でも僕が考えた以上のものをプレイしていただいていますね。アニメ"夜桜四重奏~ホシノウミ~"のオープニング・テーマがUNISON SQUARE GARDEN(※2011年リリースの3rdフル・アルバム『Populus Populus』収録曲「kid,I like quartet」)でエンディング・テーマが僕(※2011年リリースのデジタル・シングル『Hello Hello』表題曲)だったことがあって、彼とはそこで1回お会いしたんです。そのあと何年もお会いしてなかったんですけど、meg rockさんのプロジェクトによく参加されてて、そこに僕も参加してたので、紹介していただいて。そうやっていろいろやってると、繋がりが増えるので会いたい人に会えるというか(笑)。

-アルバムは13曲入り(※ボーナス・トラック2曲を除く)でなかなかのボリュームになりましたね。

今まで作った作品の中で一番大変でした。やっぱり学校もあるし、実質マネージメントもない中でこれだけのプロジェクトを動かすので。スタジオの手配から始まり、時間も労力も使うし、精神的な部分も含めてほんとに大変でした。

-そういうプロジェクトの動かし方だと、関わっているみなさんもお仕事って感じじゃなかったのでは?

そんな感じはしてましたし、すごくありがたかったです。大変でしたけど、この作品をどうしても作りたかったので、それがやっと形になって嬉しいですね。

-末光さんの歌声は変わってないというか、むしろ若くなってるように聞こえます。

(笑)いや、でも結構年齢を感じるところもあるのかな? と思いますけど。デビュー当時はそれこそ学生じゃないですけど、"こう見せたい"、"ああ見せたい"って自分を作ってやってて、そこからだんだん引き算されてきたからもう大事なとこしか残ってないんで(笑)。そうなるとわりとすんなり解放されて歌えたりするんです。デビュー時はほんとにガチガチで、いろんなことを計算してやってましたね。

-末光さんのメロディはポップスの中に自然とクラシックの要素が入っていますね。

今作のタイトルも"Bagatelle(バガテル)"というクラシック用語を使ってて。最初のころは特にクラシックとロックとピアノと、みたいに打ち出してたところがあったんですけど。名前も戻したんで、もう1回わかりやすく記号的にそれを入れようかなと思って、タイトルも"Bagatelle"にしたんです。

-今作に参加してるアーティストも、それぞれの分野の特徴的な人というか。

並んでる名前を見ただけだとよくわからないかもしれないですが(笑)、聴いてもらったときに何か柱のようなものがひとつあって、そんな字面と音が全然違うということを感じてもらえるとは思うんですが。学生に教えてるので、その世代が聴いてる音楽やそこに対する感覚みたいなものがわかるんです。わかるだけに、例えば80年代のメロディが立ってた音楽がどういうふうに彼らに刺さるのかな? っていうのは想像できないと同時に、興味もあるところなんですよね。