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Japanese

セカイイチとFoZZtone

2014年01月号掲載

セカイイチとFoZZtone

Writer 沖 さやこ

2013年夏、突如舞い込んだ"セカイイチとFoZZtoneがCDを共同制作&ツアーを回り、ライヴ会場限定でリリース"の報。それを目にしたときのわたしのテンションの上がりっぷりといったら、死ぬほど入りたかった志望校の合格発表で自分の受験番号を発見したときくらいの歓喜の絶叫であった。彼らが我々リスナーの想像以上のエンタテインメントを実現してくれるという確信があったからだ。セカイイチとFoZZtoneは、2013年に10周年を迎えたバンド同士。この10年間、日本のロック・シーンは様々な面で大きく変化し、それぞれのバンドもメジャー・デビューやメンバーの脱退などを経験した。そんな激流とも言える状況のなか歩みを止めず、自分たちなりのユーモアをもって精力的に活動を続けてきた2組の共同制作が、単なるコラボレーションで終わるはずがない!今作『バンドマンは愛を叫ぶ』が"セカイイチ"と"FoZZtone"という2つのバンドによるスプリットCDだと思ったら大きな間違い。"セカイイチとFoZZtone"という、キャリア10年の大型新人バンドによるデビュー作なのだ。

1月15日にリリースされる『バンドマンは愛を叫ぶ』は、2013年のライヴ会場限定でリリースされた「リトルダンサー」と「退屈な僕と小さなギター」の2曲入り同名シングルに、2曲のライヴ音源と、新曲2曲を加えた6曲入りミニ・アルバム。「リトルダンサー」はFoZZtoneの渡會将士(Vo/Gt)が作詞作曲を手掛けた軽快なロック・ナンバー。YouTubeでも公開されているMVは当日のレコーディング風景を用いたもので、心ゆくまで心のままに音楽を楽しむ少年のような大人たちの姿がある。その楽しさの正体は喜びだろう。2つのバンドがスケジュールを合わせることは容易ではない。バンドを組むきっかけは"面白そうじゃん"という衝動が大きいのだろうが、それを実行に移すのはそれだけの情熱があるからこそ。戦友とも言うべき仲間とバンドを組んだ歓喜の感情が音の隅々にまで通っている。そんな瑞々しい音色を浴び、バンドっていいなぁ......と純粋にしみじみ思うと同時に、ひたすら楽しそうに音を鳴らす彼らが羨ましくて仕方がない(笑)!ソフトながらに芯がある、セカイイチの岩崎 慧(Vo/Gt)と渡會のツイン・ヴォーカルやハーモニーの相性も勿論ばっちり。こんな実力派シンガーが2人もいるなんて、まったくもって贅沢なバンドである。「退屈な僕と小さなギター」は作詞作曲を岩崎が手掛け、彼がメイン・ヴォーカルを務める、涙を拭うように寄り添うぬくもり溢れるナンバー。2人のコンポーザーによるそれぞれの個性も興味深い。

ライヴ音源は2013年10月に下北沢CLUB 251で行われたセカイイチとFoZZtoneのツーマン・ライヴのときのもので、両バンドによる互いのカヴァー曲が収録されている。セカイイチによる「LOVE」もFoZZtoneによる「バンドマン」も、しっかりと曲をバンドの身体に染み込ませ体現しているカヴァーだ。先ほどこの日のライヴはツーマンと述べたが、マインド的には"セカイイチとFoZZtone"のワンマン・ライヴという表現が正しい。勿論2組合同の演奏よりもそれぞれのバンドの演奏のほうが曲数は断然多かったが、バンドの気持ちは紛れもなくひとつで、信頼という強い想いが貫かれた非常に美しい時間だった。人と関わることは大なり小なり摩擦が起こり、傷つくことも少なくない。人と接することに臆病になり、心に壁を作ってしまうこともあるだろう。だがそんな壁を壊して人と触れ合えば、ひとりでは感じられなかった掛け替えのない思いをたくさん手にすることもできる。ほんの少しの勇気で人生は変わる――彼らは音楽とバンドでそれを証明している。このバンドの物語は、まだ始まったばかりだ。 

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