Japanese
パピプペポは難しい
Skream! マガジン 2023年02月号掲載
2023.01.17 @Zepp DiverCity(TOKYO)
Writer : 宮﨑 大樹 Photographer:宇佐美 亮
ヴィジュアル、歌唱力、ダンス、愛嬌――アイドルの魅力の側面はいろいろあるけれど、パピプペポは難しいのエンタメ性は、広いライヴ・アイドル・シーンにおいてもトップレベルだと思う。きっとファンもそれをわかっていて、だからこそパピムズ(パピプペポは難しい)のライヴは、ステージ上もフロアも、全力で楽しもうとする気概に溢れている。それは、彼女たちにとって最大規模の会場、Zepp DiverCity(TOKYO)においても変わることはなかった。
後輩グループのPety、キャッチミーがオープニング・アクトとして温めてくれたZeppにSEが鳴り響くと、メンバーそれぞれが堂々とした歩みでステージに登場。オープニング・ナンバーの「ち・ちん・ぷい」が始まると、推しジャン(※推しの歌唱中に連続でジャンプすること)、振りコピ、ペンライトとワチャワチャしたパピムズらしいステージが一気に展開した。その様子は、普段彼女たちが主にライヴ活動をしているキャパ数百人規模のライヴハウスの熱量、空気感をそのままZeppの大舞台に持ってきたような印象だ。そんな「ち・ちん・ぷい」から「だるい日」へとアッパーな楽曲を並べると、特撮ヒーローもののOP風の「スーパーSAMURAI忍者・カラテマン」では悪役に扮したバック・ダンサーたちが登場。さながらヒーローショーのような光景を作り出し、この日のために用意したという「パピプペポイズンLOVE中毒」で畳み掛けるように会場の熱気を高めていった。
MCではまずメンバーからの自己紹介があり、さらに先ほどの「パピプペポイズンLOVE中毒」がMOSHIMOの岩淵紗貴(Vo/Gt)と一瀬貴之(Gt)からの楽曲提供であることを木内小百合が紹介。鈴木めがねは、この公演のライヴ制作に向けたクラウドファンディングについてファンへの感謝を伝えた。ライヴの熱量などのいい部分はそのままに、新たな楽曲を用意し、大規模会場を彩る特別な演出のライヴをファンと共に作り上げる。前半だけでもすでにグッとくる内容だった。
ライヴは力強いロック・ナンバー「神様のきまぐれ」で再開した。パピムズのライヴは、ポップスをやっても、ロックをやっても、根底に"楽しさ"がある。様々な切り口で"楽しさ"を体験させてくれるこの感覚は、どことなく遊園地を彷彿させるのだ。そんなことを考えながらライヴを観ていたら「ロンリーバード」、「世界の終わりには牛丼つゆだくをあなたと食べたい」と続けたパピムズが一度ステージからはけ、バック・ダンサーが繋いでいる間に新衣装にチェンジをして戻ってきた。その新衣装が童話のキャラクターをモチーフにしたもので、衣装の世界観のミュージカルのようなものが始まったのだが、それがまさにテーマ・パークの演目のようで驚かされた。ここでとりわけ輝きを放っていたのはキリンのドン・グリだ。彼女がバック・ダンサーを従えて愛嬌を振りまく姿は、本人が憧れているミッ●ーマウスのそれを想起させ、この日のために研究と練習を重ねてきたことが窺えた。
「ホニャララ・アンビシャス」、「一軒家住みたいな」に続けてパフォーマンスしたのは「ビバ・トーキョー」。ユーロビート調のサウンドとバッチバチの照明が融合し、最高潮に達した盛り上がりもあいまって、この楽曲は本日のハイライトのひとつになった。続いて、プロデューサーでもあるカワシマユカがパピムズの結成の経緯を振り返り、"もしも僕たちがパピプペポは難しいじゃなかったら......"と想いを膨らませてから"もしも君がいない世界に生まれてたら/僕は何してたのかな"と歌う「決まりごと」をじっくり聴かせていく。いわゆるアゲ曲の多いパピムズだが、裸の感情で歌う生々しい歌唱に胸が熱くなった。
ライヴの後半では、新曲「ワンダフル・パレード」を初披露。タイトル通り、テーマ・パークのパレードを思わせる楽曲で、この日の遊園地感はここに極まる。パピムズにはコンセプトはないと言われているけど、彼女たちのライヴの遊園地感は唯一無二だし、十分コンセプチュアルな存在だと思う。新曲に続けて、ダメ押しとばかりに「ようこそゴーストハウスへ」、「アイマイニー」の2曲を届けると、MCで6月10日に初の主催サーキット・フェス"パピムズFES"を開催することを発表。記念撮影のあとに、メンバーひとりずつから涙を交えつつ言葉が贈られた。
"今日はみなさん満足できましたか? こんなもんじゃないです、パピムズ。まだまだ、もっとみんなの期待値を上げていって、それを越えられるアイドルでいますので、これからもずっとパピムズについてきてください"(鈴木めがね)
"さっきからトラブルばっかりで悔しいんですけど、身を削ってここまでみんなで来たから後悔はしません。楽しかったです。ここはゴールじゃないので、これからパピムズも、ドン・グリもどんどん大きくなりたいので、これからも応援をよろしくお願いします"(ドン・グリ)
"300回くらい言っているんですけど、Zepp DiverCityが本当に夢で。Zeppに行くだけじゃ夢が叶ったって言えない、ここをいっぱいにしないと夢が叶ったって言えないと言っていたんですけど、今日こんなにみんなが来てくれてとっても嬉しいです。ありがとうございました"(木内小百合)
"僕はあんまりうまいこと言えないので、ここではあまり言わないようにします。今日は本当にみなさん来てくれてありがとうございます。2023年、まだ1月が始まったばかりですので、今後のパピプペポは難しいもぜひ見守ってください、よろしくお願いします"(小枝みゆ)
"6月から半年、自分と戦ってきた半年間で、正直パピムズをやめようかなと思っていたんですけど。それくらい自分に打ち勝つのが難しかったです。でも、みんながこうやって期待して、「Zeppに行く」って言ってくれたから乗り切れました。私が支えなきゃいけないのに、みんなに支えられてきて。本当にみんながいてくれて良かったです。やめなくて良かった。この景色を見ることができて本当に良かったです"(白羽根優衣)
"私は大分県に生まれて。何もないところで生まれたんですよ。ずっと東京に憧れていて、特別になりたかったんですよね。私は突発的になんでも始めるんだけど、すぐやめちゃって、すぐ逃げて。叶っていない夢がたくさんあるんだけど、そんな私が今ここZepp DiverCityに立っています。特別だと言い続けてきた普通の私が、今日Zepp DiverCityに立つことができました。もし昔の私みたいに、不安をたくさん持っている人がいるなら、こんな私がZepp DiverCityに立っているから、みんなもちょっとだけ頑張ろうかなって思ってくれたら嬉しいです。いつも私たちパピプペポは難しいが、みんなのそばにいます"(カワシマユカ)
そうして感謝の気持ちを込めて「charm」を披露。最後はパピムズらしくパーティー・ソング「ラブげっちゅ! -お誕生日のお歌-」で締めくくった。アンコールがないのは少し意外だったが、そこには潔さも感じるし、またZeppに帰ってきてくれるんじゃないかと期待も持たせてくれた。パピムズにとってZeppは夢見た場所から、通過点のひとつになったのだから。
この日の体験は、メンバー、スタッフ、ファンの記憶に刻まれ、人生のふとした瞬間に呼び起こされる――ライヴのタイトル通りに"フラッシュバック"するのだろう。"楽しい"という記憶は生きていくうえでの活力になる。パピムズ=楽しい。楽しい=人生の活力。ゆえにパピムズ=人生の活力だ。
[Setlist]
1. ち・ちん・ぷい
2. だるい日
3. スーパーSAMURAI忍者・カラテマン
4. パピプペポイズンLOVE中毒
5. 神様のきまぐれ
6. ロンリーバード
7. 世界の終わりには牛丼つゆだくをあなたと食べたい
8. ホニャララ・アンビシャス9. 一軒家住みたいな
10. ビバ・トーキョー
11. 決まりごと
12. ワンダフル・パレード
13. ようこそゴーストハウスへ
14. アイマイニー
15. charm
16. ラブげっちゅ! -お誕生日のお歌-
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