Japanese
エルフリーデ / BRATS / 凸凹凸凹 (ルリロリ)
Skream! マガジン 2019年07月号掲載
2019.06.15 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 杉江 由紀
かわいいけれど、強かでもあって、何よりそれぞれに確固たる上昇志向を持っているガールズ・アーティストたちが、この夜の下北沢LIVEHOLICには3組も集結して饗宴することとなったのだった。今回のイベント"LIVEHOLIC 4th Anniversary series Vol.7"は下北沢LIVEHOLICの4周年を記念したもので、そのメンツの充実ぶりもあってか、梅雨の最中の本降りな雨模様にもかかわらず、満員御礼のソールド・アウト。

そうしたなかで今宵の幕開けを最初に飾ってくれたのは、アイドルとバンドの間を自由自在に行き来しながら、曲によって変幻自在に歌、踊り、演奏を次々と展開することで定評のある凸凹凸凹 (ルリロリ)。1曲目の「オレンジ」では、陽南子(Vo/Ba)がハンドマイクを持ってのヴォーカリゼーションを聴衆に聴かせながら、有南は有南でギター・ソロをとり、はたまた渚奈子も客席側に目を配りつつ訴求力が高いドラミングを繰り広げてみせることに。オーディエンスとの活発なコール&レスポンスが実施された「Jesus!!!」では、陽南子が一転して骨っぽいベース・プレイを見せつけただけでなく、ラップまで披露してしまうあたりが実にフレキシブルな凸凹凸凹 (ルリロリ)らしく、彼女たちの楽しいことに対する貪欲さがそこには強く表れていたように思えてならない。
タイトル通りにポップ・センスが詰まった「POP STAR」、かと思えばスイングするようなグルーヴを聴かせた「Miss Pretender」、渚奈子のプチ・ドラム・ソロが場を盛り上げた「ガブリ」、ポジティヴで爽快感に溢れた「未来証明」。曲によって彩りは本当に様々で、凸凹凸凹 (ルリロリ)はお菓子で言えばいわゆるアソート・ボックス的な遊び心を大事にしているアーティストであるのだな、ということが今回のステージングからはひしひしと伝わってきた。ちなみに、なんと凸凹凸凹 (ルリロリ)も今年で4周年なのだとか。ここは次の大きな節目である5周年へと向け、さらなる派手な開花ぶりを期待したいところだ。

その後2番手として登場したのは、天衣無縫で奔放なキャラクターを持つ黒宮れい(Vo)率いるBRATSだったのだが、彼女たちがほかの女性アーティストたちと圧倒的に違うのは......その危険分子ぶりにあるように思えてならない。たしかに、見目形の部分ではBRATSも間違いなく美しくかわいい要素を多分に持っているものの、なにしろBRATSにはいい意味で"愛想"がないのである。
端的なところでは、衣装にさえヒラヒラキラキラしたところは皆無で、パフォーマンス内容にしても物言いにしても媚びの要素はまったく無縁。もっと言うなら、彼女たちはステージ上で弾けるような笑顔の類いを見せるようなことさえほぼない。その代わり、BRATSはロックに不可欠な攻撃性を最大限にブーストした形で、その内圧の高いエナジーをここぞとばかりに我々へとぶつけてくるのだから、実に容赦がなさすぎる。
曲タイトルからしてシニカルな「Ms. Downer」といい、このところもまた何かと目につく"誰でも良かった"的な不条理系犯罪に対し"一人で死ねよ"とのヘイトを表明している「アンフェア」といい、BRATSが恋や夢や希望の対局にある闇や怒りや懊悩をなかば露悪的とも思えるほどの生々しさで浮き彫りにしてみせるその姿勢は、凡百のロック・バンドよりもよほどロックなのではなかろうか。
黒宮れいの実姉であるベーシスト 黒宮あやがアグレッシヴなプレイを炸裂させ、ギタリスト ひなこがパンキッシュなリフを力強く弾き、黒宮れいがアジテーションするように歌い叫ぶ「解放セヨ」から始まった後半戦での猛攻ぶりは特に烈しく、結果的に彼女たちはBRATSはBRATSでしかないというその明らかなる事実を、この場で自ら証明したと言っていいだろう。

そして、このなんとも色とりどりな一夜の最後を締めくくることになったのは、4月にメジャー・デビュー・アルバム『real-Ize』を発表して話題となったエルフリーデ。2017年夏に始動してからというもの、音楽的な面についてはピアノ・ギター・ロック・バンド Quintの小田内志徳(Vo/Gt)がサウンド・プロデューサーとして密に携わってきているということもあり、活動歴としてはまだ2年ほどながら彼女たちの奏でる音の完成度はかなり高い。
ストレートな8ビートでの真っ向勝負を見せた「memory」から始まった当夜のライヴにおいては、その次の「FATE」でエモさと爽やかさを同時に醸し出しながらも、3曲目の「Empty」ではギタリスト 山吹りょうとベーシスト 星野李奈がソロをきっちりとキメてみせ、オーディエンスたちを惹きつけるひと幕も。
また、ダンス・チューンの香りを纏う16ビートが軽やかに響いた「エンドロール」では、ゆーやん(Dr)の小気味よいスティック・ワークもずいぶんと映えていたように感じるが、やはり圧巻だったのは「Orange」でヴォーカリスト みくるが聴かせた、その伸び伸びとしたクリアな歌声であったような気がする。
アンコールなしの35分1本勝負というこのステージにおいて、エルフリーデは最後にアルバム『real-Ize』の中からドライヴ感たっぷりな「MONSTER」と、まさに躍動感に満ち満ちる「Vibration」でエルフ(※ファンの呼称)たちを大いに沸かせてみせ、結果としてこの"LIVEHOLIC 4th Anniversary series Vol.7"を大団円へと導いてくれたわけだ。なお、この日のライヴは彼女たちにとってツアー初日でもあったそうで、この旅路は9月18日に渋谷TSUTAYA O-WESTにて開催されるエルフリーデ史上最大規模のワンマン・ライヴまで続いていくとのこと。ひと夏のあいだに、果たしてバンドとしてどれだけ大きく育っていくのか......今から期待していたい。
かくして、三者三様の表現方法を持ち、かわいいけれど強かでもあって、それぞれに確固たる上昇志向を持っている3組が見せた饗宴は幕を閉じたのである。
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