Overseas
Hostess Club Weekender
2012.06.23 @恵比寿The Garden Hall
Writer 石角 友香
今年2月以来、2回目の開催となるHostess Club weekender。初日はUK、USの安定の中堅、ニュー・カマーの“バンド”にフォーカスしたラインナップに、こちらも新旧のインディー・ロック・キッズが集結。世代は幅広いが近い嗜好を持ったオーディエンスなせいか妙に居心地がいい。
初日のオープナーは1stフル・アルバム『Moth』をリリースしたばかりのEXLOVERS。音源でのフワフワ、シュワシュワしたPeterとLawrenceのウィスパリングなヴォーカルやコーラスは、ライヴでもそのままだが、ビキニ・トップにタトゥーのLawrenceのヴィジュアルは意外にワイルドで意表を突かれた。日本のFM各局でもパワー・プレイされた「Starlight,Starlight」のキャッチーさにダイレクトに湧くフロア。新世代シューゲというより、アルペジオで丹念に曲を編む真面目なギター・バンドといった趣きが頼もしかった。
続いては新作『Attack On Memory』が高い評価を得、日本のミュージシャン間でも支持の厚いCLOUD NOTHINGS。想像以上に長身痩躯のフロントマン、Dylanののっそりした佇まいと相反するエモーションにとにかくアガる。ギャップ萌えのニュー・アイコンとして、Rivers Cuomoを凌ぐんじゃないか?と。ドあたまから激情をリフに転化した「Stay Useless」「Fall In」を投下。中盤にはアルバムでは9分台の長尺を感じさせない「Wasted Days」が、ライヴではあの間奏というかインスト部分がさらに増幅。フロント3人がアンプに向き合い、フィードバック・ノイズがグルーヴと緊張感を増し、ドラムのフィルインでDylanのヴォーカルが始まる瞬間、興奮から勝手に上がった歓声が、彼らへの真っ当な評価だろう。切迫した轟音はグランジなどUSインディーを大きな背景にR&Rリヴァイバルや2010年代的なポスト・パンクのセンスも通過した鮮烈なものだった。
さてこの日、唯一ソロ・ユニットである元SUPERGLASSのGaz Coombes。ベース、ドラム、キーボード(シンセ)を携えて、本人はアコギを担いで登場。伸びやかでエモーショナルなヴォーカルが冴え渡る。シーケンスを走らせながら生音と同期させる疾走感溢れる「Hot Fruit」は、変なたとえだが、たとえばLOS LOBOSがエレクトロをやってるようなGazでしか有り得ない強烈な肉体性を備えたハイパーさ。また、イーブン・キックからエイトにリズム・チェンジする「Break The Silence」などは、70年代のDavid Bowieが持っていたような物語性の現代版。Gaz主演の架空のサントラみたいな世界観が生でも展開してるのだ。それが奇異に聴こえないのは自由自在で素晴らしいメロディのせいだろう。
初の米オースティン・レコーディングで実際、カントリー色も反映された4thアルバム『Radlands』リリース後初の日本でのライヴ。果たして音源でのニュアンスはどこまで今のライヴに反映してるのか?と妄想しつつ臨んだら、いい意味、MYSTERY JETSのポップ・ワールドの幹は太かった。メランコリックな導入からサビでシンガロングが起こった1曲目「Someone Purer」。フェティッシュなニュアンスすらあるシンセがそそる「Serotonin」のアレンジ力は、彼らとはカテゴリーの違うシンセ・ポップ・バンドより一回り音楽としての器の大きさを感じさせてくれたし、カントリー・テイストとギター・ポップの幸福なマリアージュなんて他のバンドにはできそうにない、新作のタイトル・チューンはMYSTERY JETSの盤石ぶりを体感させてくれた。変幻自在かつポップなメロディが軸にある限り、彼らの胸躍るバンド・サウンドの妙は進化し続けるだろう。
初日トリには、Johnny Marrが抜け、Jarman3兄弟に戻って作った新作『In The Belly Of The Brazen Bull』を携え、THE CRIBSが登場。バカでかいバック・ドロップに大歓声が起こる。サポートのギターと4人で叩き出す轟音は以前よりタフになった印象だが、ステージ上の“バンドで音を鳴らしているこの瞬間の楽しさ”が変わらないのがCRIBSのCRIBSたる所以だから、これはうれしい不変だ。新作からの「Anna」ではキラキラしたディレイがかったギター・サウンド、「Bolt Hole」ではエフェクティヴなギターからスローな展開などなかなか“聴かせる”場面も。以前に比べるとノイジーではあるが、よく聴くとコード・カッティングで隙間を埋めるのではなくアルペジオとリフで立体感を作っているのがわかる。ゲイリーが日本語で1stアルバムからのナンバーのリクエストを募るおなじみの光景もに続き、終盤には重戦車級のヘヴィネスを叩きつける「We Were Aborted」、続いてCRIBS流のダンス・チューン「Bovine」を繰り出す。シンプルな編成の中でアレンジの可能性を試し、バンドに対する情熱を枯らさない姿勢がライヴでの彼らを大きく感じさせた理由かもしれない。“アリガト、トキオー!マタキマス!”のMCとともにラストは新作のラスト・ナンバーでもある「Arena Rock Encore」。“ウィークエンド”気分を盛り上げてくれたJarman3兄弟の粋な計らい(!?)とRyanの大きな投げキッスを受け止めて、最高の1日が終了した。
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