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INTERVIEW

Japanese

S.O.H.B

 

S.O.H.B

Member:Natsumi Nishii

Interviewer:吉羽 さおり

必要のないものばかりに囲まれていると、大事なことを忘れちゃうんですよね


-他の曲もそうですが、Nishiiさんの中であるとき何かがまとまっていく瞬間というのがあるんですね。

いつも曲を作るときはそうなんです。ずっと考えていたものが頭の中でまとまるのに2~3週間かかるのかな。それがまとまり出すとすごい勢いで曲ができてくるので、それに私の手が追いつかないんです(笑)。歌も録らなきゃいけないし、楽器も弾かなきゃいけないしで、人手が足りない! っていう。そのきっかけが何かはわからないですけど、いつもそんな感じなんですよね。

-意識下で常に記憶やらなんやらのいろんな引き出しを開けて取り出してみたりしているイメージでしょうかね。その何かをずっと考えているときは、気持ち的にも感覚的にも過敏になっているのもあるんですか?

私は今知床に来ていますけど、例えば道を歩いているだけでも光の当たる角度でいろんなものが色を変えたりしていて、そういう瞬間をなるべく写真とかは撮らず、目で見て覚えて次の場所に行って、また何かを見て覚えては次の場所に行ってという感じで。

-旅に出ても、何かに記録していくというよりも、記憶する作業なんですね。

そうですね。写真は、人に自慢したいから撮ったりもしますけど(笑)。でも何か写真や映像で記録を残すというのはないですね。常にメモ帳を持っていって、そこで思いついたこととかをメモしたり、詩を書いたりはします。記憶の引き出しの取手のような感じですね、"こんなのあったな"というのを思い出せるように。

-大人になってそうして旅をしたりとか、自分で移動ができることで得る刺激はありますが、もっと若い頃、子供の頃はどうだったんでしょう。

文章を書くのがすごく好きだったので、日記を書いたり、あとは手紙を出すのが好きなんです。未だに、旅に出たら方々に手紙を書いたり、お世話になった人がいたら、家に帰ってからお礼の手紙を書いたりというのは続けていますね。

-自分で曲、音楽を作るのも、その日記であったり手紙を書いていた延長にあるものですかね。

今もし子供時代の何かが生きているとすれば、あの頃読んだ何百冊の本かもしれないです。

-そこで培った創造力が音楽にも生きていると。ある種その本の世界に浸るっていう時間は、Nishiiさんにとっての逃避みたいなものだったんでしょうかね。

友達がいなかったんですよ。本のほうが好きで、読んでいるほうが楽しかったし、知らないことを教えてくれるから、図鑑とかもすごく好きでしたね。

-旅する感覚も近いのかもしれないですね。知らなかったことを知る、まだ見たことがない景色を見るみたいな。

そうですね。たとえ来たことがある場所だったとしても、自然の中って毎回初めましてっていう気持ちになるし。こういう場所って、どうやっても自然のほうが優位じゃないですか。自然が許した場所でしか、人が何かを営んだりすることができないっていう感覚を再認識するのが本当に楽しくて。それで毎回、旅先に僻地を選んでいるんです。ただ、毎回忘れちゃうんですよね。都会にいるとすぐに忘れちゃうんです、自分が何もできない人間だっていうのを。

-そのたびにいろんな場所に足を運んでいる。

で、毎回同じことながら新しいことを発見したかのように"うわ、すごい!"って驚いて、同じようなことを何枚もメモをして。で、帰ってきてまた忘れてという繰り返しなんですよね。

-そういう生活って、何年くらい続いている感じですか。

5年くらいになりますね。自分でどこにでも行けるんだって気づいたのが結構遅かったんです。

-そうだったんですね。

その年は嫌なことがずっと続いて。生きるために生きねばという感じがあって。うまく言えないですけど、自然の持つ力の抜けた必死さというんですかね? あれが急に理解できて。そこでようやく力が抜けたんです。その自然の中で会いたい人だったり手紙を出したい人もちゃんと自覚して。そこからは、自分の人間性じゃないですけど、そういうのを思い出すために定期的に旅に出ていますね。

-前回も孤独について話をしましたが、それがNishiiさんにとっての良き孤独時間でもあるんですかね。

そうですね。誰も自分のことを知らないから、すごく孤独です。すごくこの時間が好きですね。やっぱり、必要のないものばかりに囲まれていると、大事なことを忘れちゃうんですよ(笑)。

-今回のアルバムは孤独と自立がテーマだったとうかがっていますが、それがこの1年くらいの大きなテーマでもあった感じですかね。

そういう質問があると思って考えていたんですけど......孤独と自立がテーマなんですけど、私は自分が自立できているとも思っていないし、作りたいものだけを作った1年でしたね。

-"自立"というのもその人によっていろいろ捉え方があると思いますが、Nishiiさんが"自立"を定義するならどういうものですかね。

なかなか難しいですよね、自立って。まぁでも、精神性のほうだと思いますね。ずっと悩んでいることをちゃんと何かしらの形で表に出せるような、ネガティヴなことをしっかりと表に出せるような──人の迷惑にならない形で、ですけどね。それは自立と見做していいと思います。

-本当によりクリエイティヴになれた1年だったんですね。

作品に集中したいときに集中できる1年だったと思いますし。あとは、音楽をしているときがものすごく楽しかったです。"もうやだ!"っていうのが一回もなかったので。すごく良かったです。締め切りもありましたけど、楽しく追い詰められました(笑)。

-制作、音楽に集中できる環境に身を置けているということだと思いますが、今年もそういう感じは続いていますか。

に、なればいいなと思ってますね。こういう場所に来たいときに来れて、音楽が作りたいときに作れるという環境があればいいと思いますけど、そうじゃなくても別にいいなと思っているんです。環境が変わるとまた違う曲もできるだろうから。昨年は、枠を取り払った音楽を自分で作りたいときに作る1年でしたけど、今年、来年はまた忙しいなかで命を削って曲を作る1年になってもいいんじゃないかなと思ってます。

-3月20日に今回のアルバムがリリースとなりますが、このあとの予定としてはライヴをしたりとかも考えていますか。思い描いていることがあれば教えてください。

相変わらずライヴの予定はないんですよね(笑)。昨年はリリースのペースとしては遅かったんじゃないかなと思うので、もっと曲を書きたいという気持ちがあるので。ライヴはしませんが、代わりにリリースがたくさん、たくさんできたらいいなと思ってます。今年、来年ともっともっとたくさんの曲を作って、歌いたいです。