Japanese
Alstroemeria
2023年12月号掲載
Member:りくお。(Vo/Gt) 田中(Ba/Cho) れいや(Dr)
Interviewer:石角 友香
"ライヴハウスはこういう場所なんだ"っていう考えから、"こういう場所にしたい"になってきた
-何曲かそれぞれの曲についてお聞きしたいんですが、リードである「彩開前夜」、これはどんなきっかけでできた曲ですか?
りくお。:結構複雑なんですけど、最初からこの曲をリードにしようと思って作ってなくて。このアルバムを出すのが12月だったんで、安直な考えでクリスマスの曲にしようと思ったんですけど、作っていくうちにそうじゃないなって。"彩開前夜"っていう言葉だけはずっとあって、1回企画ライヴの名前にもしてたんですね("祝豊橋clubKNOT14周年Alstroemeria pre.「-彩開前夜-」")。造語なんですけど、その意味合いの捉え方を少し変えたというか。"彩り開く前の夜"なんですけど、やり切れないっていうかやるせない感じを表現したくてこういう曲になって。希望と暗さ両方が詰まった曲になってますね。
-歌詞にもありますが、部屋を爆音で埋めてるだけじゃなんか物足りない、自分は受け手じゃなくて送り手なんだっていう焦燥感を感じたんですよね。バンドとして動いてるんだけど、きっとりくお。さんの中で何かが物足りないみたいなことが、それぞれの曲の中に見え隠れするなと思っていて。だから直近の1年~1年半に感じてたことがすごく伝わるというか。
りくお。:嬉しい。
-そしてこの"7179"と書いて"チナンチング"と読むこの曲は、どこから来てるんですか?
りくお。:すげぇ友達が少なくて。これ書いたのがたしか3rdデモ・シングル(2022年リリースの『永遠の居場所』)のときなんですけど、そのときはバンドで悩んでて曲も作れなくてワーッてなってる状態で。久しぶりに地元の友達が遊ぼうよって言ってくれて、地元に戻って酒とか飲んだりして遊んでたんですけど、なんかその瞬間、心が軽くなるじゃないですか。本当の友達ってこういうことなんだなっていう。でも、ただ"友達"という表現は気に入らなくて、他の言い回しがないか考えたんですけど、やっぱ友達は友達だしっていう、単純だけど一番わかりやすくて心が軽くなるような曲にしたくて、できましたね。
-後半の「髪」と「つよがり」と「彼の話」っていうのは恋の中で感じる繊細な瞬間というか、そういう曲が続いてますが、この3曲を続けようっていう感じはありましたか?
りくお。:結構自分のことを書いてる曲が多いんで、偶然繋がってる部分はあるかもしれないんですけど、「つよがり」って曲は初めて女の子目線で書いたんです。ただ、繋がってるのかな? もしかしたら繋がってるのかもしれないですけど(笑)、繋げる意識で書いたっていうよりは、自分の今までの経験を書いたっていう感じではあります。
-「つよがり」は女の子目線だから書けることがあるなっていう感じでした?
りくお。:そうですね。映画とかドラマとか観てて、女の子のほうの気持ちになって考えてみようっていうタイミングがあるんですけど、そうなったときに世界が広がるっていうか、"たしかにこっちだったらこう思うのかもな"っていう部分がすごい出てきて書いたんです。新しい表現の幅が増えたっていう気持ちはありましたね。
-映画やドラマを観てても、10代のときと違う見え方がしたりしますか?
りくお。:しますね。10代の頃はそんな深く観てなかったっていうか、集中して誰かの気持ちを考えて観てなかったんですけど、小説をちょっと読むようになってきて、気持ちの表現とかを自分なりに解釈できるようになって、映画もまた観るようになったんで、少し気持ちを考えるようになりましたね。
-歌詞の書き方に作家性みたいなものが出てきますよね。
りくお。:そうですね。物語にしたいってのはあったんで、今回のアルバムは結構全体的に物語にできたかなっていうのがあります。
-そして「彼の話」っていうのはより大人になった感じがしましたね。
りくお。:そうですね。そこが1stデモ・アルバムからすごい変わった。少し大人の恋愛になったというか、感情が変わった感じはあります。
-嫌いになるとかでもなく、曖昧な感じで。
りくお。:まさに。意識というか、自分の位置がどこかわかんなくなるような感じがありますね。
-ラストの「溢れたものは。」。これは最後に相応しい感じがありました。この曲の着想はどういうところですか?
りくお。:これはもうライヴで盛り上げてぇってのは決めちゃって(笑)。あとは他のバンドとか見てて"シンガロングしてぇな"ってなって、この曲が定着したら最初のギターのあたりでコーラスが入ってくるタイミングで歌える曲になると思うし。歌詞的に言うと、ライヴハウスのあるべきところっていうか、僕らだけかもわかんないですけど、目指したい部分というか、どういうライヴハウスであってほしいみたいな希望も書かれてるんで、そこはすごい意識しました。
-初期衝動だけじゃなく、なぜバンドを続けているのか? その理由があるのかなと。何もわかんなくて始めたと違う印象を受けました。
りくお。:そうですね。ライヴハウスがどういう場所であってほしいってのも、最初は"ライヴハウスはこういう場所なんだ"っていう考えだったんですけど、"こういう場所にしたい"になってきたんで、そこはすごい成長したと思う。
-自分たちがこういうライヴをやるからこういう場所になるっていうことですね。それは続けてないと思わないことなんじゃないですかね。
りくお。:絶対そうだと思います。
-田中さんとれいやさんは今回のアルバムの中で、特に語る部分がある曲があったら教えてください。
田中:ちょっと加担しすぎかもしれないけど、「じゃあね、霞む灰色」って曲はレコーディングまでもう時間がないみたいな切羽詰まった状態で、りく(りくお。)がオケだけ持ってきて、その段階で"これヤバいんじゃないかな"みたいになって。詰めていく中で一番僕が大事にしたのは、ベースのアレンジもそうなんですが、コーラスは結構得意なんで、上でも下でもいろんなとこつけるんですけど、この曲に関してはめちゃくちゃ自分の中で練りました。今までリリースした曲の中でも一番コーラス・ワークが、曲の世界観を表現するのに背中を押せてるのかなっていう感じはあります。なのでやっぱ「じゃあね、霞む灰色」は僕の一番のお気に入りの曲になりますね。
-Alstroemeriaを聴く人にとっても、きっとこの曲はひとつのフェーズを進む曲に聴こえるんじゃないですかね。
田中:うん、そう思います。
-れいやさんはいかがですか?
れいや:田中と一緒なんですけど、「じゃあね、霞む灰色」は今までにない感じで、やりたいこともできて好きな曲ですね。あとは昔から速い曲が好きなほうで、今までのAlstroemeriaは速い曲は2ビートに頼りがちだったんですけど、それをなくしていきたいっていうことで、1曲目の「セルフィッシュガール」は速いんですけど、2ビートに頼らず歌のメロをしっかり支えて、しかも疾走感もあるので、ドラムがずっと忙しいんです(笑)。ライヴでもやってて楽しいし、お客さんも楽しそうなのが伝わってくるので、好きだなっていつも思う曲ですね。
-ミックスでも曲が伝えようとしてることの解像度が上がってるんじゃないですか?
田中:そこに関しては僕が結構こだわりが強いほうで、メンバーふたりの意見もありつつ、僕がエンジニアにもグイグイ言っちゃって、かなり僕の好みとかも出てる部分ではありますね。
-これは余談ですけど、新しいアーティスト写真がなぜこんなにソファにパスが貼ってあるのかなと思ったんですね。
りくお。:ははは。ライヴハウスいろいろ回ってきたうえで、ライヴを大事にしたいっていうのがすごいあったんで、"生モノでやってるよ"っていうのを表現したくて、いろんなライヴハウスのパスをベタベタに貼りましたね(笑)。
-(笑)ところでAlstroemeriaは地元の豊橋市を拠点にしていますが、そのこだわりって?
りくお。:本気でやろうってなってから出た初めてのライヴハウスが豊橋 club KNOTって場所だったんです。そこの居心地がすごく良くて。もちろんそこだけに収まっちゃいけないなとは思ってるんですけど、豊橋 club KNOTっていう場所を背負って売れたら僕たち的にもすごく嬉しいし、TAIL RECORDSでもすごいお世話になってるんで、その恩返しになればっていう気持ちがありますね。
-拠点になっている場所やチームのカラーも重要ですもんね。バンドの目標は新たに出てきていますか?
りくお。:Zeppツアーは絶対回れるようになりたいっていうのはありますね。日本武道館にも行きたいですし、そこまでの流れとかはちゃんと考えてやりたいとは思ってます。
-では最後に、全国を巡るアルバム・ツアーの抱負をお聞きできれば。
田中:こんだけツアー回ってやってくるんで、一番最初からひと皮とは言わずに、もう15皮ぐらいは剥けて帰ってきたいなっていう。一本一本、意味のあるライヴをしていけば絶対いけると思うんで。全部違ういい日にしたいって感じですね。"その日にしかない"をやり続ける、ですかね。
れいや:結構スケジュールが詰め詰めなんで、連続してるライヴも大切にして、手を抜かず一本一本しっかり3人でやっていって。ツアーでしかできない成長があると思ってるんですね。ツアーを回るからこそ変われるところ、良くなってくるところがあると思うので、そこをツアーが終わったあとに自分らで実感できるぐらい、何か大きく変わりたいなっていう気持ちですね。
りくお。:今までもいいツアーではあったんですけど、今後に向けて一本一本を大事にする意識がもうちょっとギューッて深まれば、"FINAL SERIES"の頃にはめちゃくちゃいいバンドになってるっていうのは確信できてるんで、ライヴ力を上げるってのと表現力を上げること、もっともっと細かいところまで意識してできたら、すげぇいいツアーになるなと思ってます。そこは目標です。
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