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INTERVIEW

Japanese

World's End Super Nova

2023年10月号掲載

World's End Super Nova

Member:ツモト アキ(Vo/Gt)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

パッケージされて名前が付いたときが、創作で一番美味しい瞬間――今はこのアルバムがかわいくて仕方ない


-今回のアルバムには「惑星と流星群」をはじめ、様々な時期に作った曲が収録されています。ツモトさん自身にとっては、その時々の自分の心の状態がそのまま反映されているアルバムなのではないでしょうか。

そうですね。曲を書くことって自分自身を剥いていって、丸裸にしていくことなので、自分の弱いところと向き合わんとアカン瞬間もあるんですよ。たぶんアーティストと言われる人種は"カッコ悪いところも、カッコいい曲になったでしょ?"、"俺はクズでも曲にすれば大丈夫や"という感じで採算を取っているようなところもあると思うんですけど、自分の場合も、曲になった時点で愛さざるを得ないから、言ってしまったもん勝ちみたいな感覚があって。曲ができてタイトルが付いてパッケージされて、"こういうやつだ"とわかった瞬間は創作中で一番美味しい瞬間で、やっぱり達成感があります。ホンマに世界が変わるような感覚になるというか......"この作品があればどうにでもなれそう"、"どこまでも飛んでいけそう"という気持ちなれるんですよね。そういう曲たちが集まったアルバムだから、やっぱりかわいくて仕方ない。それで何回も聴いちゃうんですけど(笑)。

-過去に作った曲を改めて聴いたときに何か感じたことはありましたか?

やっぱり曲と一緒に歳を取ってきたんだなと思います。例えば、3曲目の「愛の歌」は昔付き合っていた女性に対して歌った失恋の曲で。作った当時はちょっと強がって、相手の幸せを願うような内容にしていたんですよ。そう思わないとしんどかったので。だけど歳を重ねた今では、この曲で歌っているようなことを純粋に思えるようになっています。

-恋愛の出会いと別れはもちろん、バンドを長く続けているから、メンバーはじめ、いろいろな人の背中を見送るタイミングはあったんでしょうね。

それこそ5曲目の「未完傑作」は、バンドマンとの出会いと別れを歌っている曲で。一番仲良かったバンドマンの友達......SPARK!!SOUND!!SHOW!!のヴォーカル(タナカユーキ)なんですけど、彼が上京するときに作った曲です。夢を追っている以上、出会いと別れってつきものだけど、俺も彼もバンドをやめることなんか考えへんタイプの人間やから、"またいつか会えるよな"と思いながら書きました。こうやって振り返ると、ホンマにそのときの自分やからこそ書けた曲ばかりだなと思います。

-新曲の「凌霄花の流れる日々に」も素敵でした。きっと、今の年齢だからこそ書けた曲ですよね。

そうですね。安藤裕子さんの「のうぜんかつら」という曲があるんですけど、僕はその曲が使われている月桂冠"つき"のCMが幼少期からずっと好きなんです。永作博美さんが出演していた、男女の日常を描いたCMなんですけど、あのCMが僕の中で幸せの象徴になっているというか。"こういう生活ができたらいいな"、"こういう幸せな景色が見られたらいいな"というイメージが昔からずっとあって。自分が幸せを感じた瞬間には脳内で「のうぜんかつら」が流れるんですけど、今一緒に住んでいる人と暮らすなかで「のうぜんかつら」が流れてきた瞬間があったんです。そこから"幸せを感じられたってことをちゃんと歌にして残さなければ"と書き始めた曲ですね。

-"陽だまり 温もり 幸せの匂い 諦めたはずの日々"という歌詞が気になりました。1度は幸せを諦めていたのか、と。

さっき話した「愛の歌」が、当時一番大事に思っていた人と一緒になれなくなったときに作った曲だったので、自分の人生の中で「のうぜんかつら」が流れてくることはたぶんもうないねんやろなと思っていたんです。だけどあれから10何年後に再び「のうぜんかつら」が流れてきた。諦めていた幸せを、確かに感じられたという歌詞ですね。"過去以外の全部をあなたにあげるよ"という歌詞もありますけど、今、僕と彼女はお互いの過去も含めて認め合ったうえで一緒にいるから、僕が過去の経験をないがしろにしては意味がないよな、と思っていて。前向きな意味というか、互いに認め合っているからこその表現だと解釈してもらえると嬉しいです。

-もうひとつの新曲「ミッドナイトソングライティング」についても聞かせてください。SNSに上げていたこの曲を題材にした漫画に対して、バンドマンからの共感の声が集まっていましたね。

「ミッドナイトソングライティング」は冒頭のメロディと歌詞が一緒に降ってきたところから始まった曲なんですけど、この曲の場合は、わりとすぐにどんな子なのかわかったかな? 最終的に僕が創作するときの手順や苦悩を歌ったような、自分の説明書のような曲になりました。あの漫画で描いたことは、近しい思想で活動しているバンドはみんな、程度の差はあれど通ってきている道やろうなと思っていて。僕はたまたま絵が描けたから、それを上手いこと説明できたというだけ。たぶん"いいね"と言ってくれた人たちも、自分が思っていたことが可視化されたような感覚だったのでは、と思ってます。なので、たくさん反応を貰えて嬉しかったです。

-最後に、今後の展望について聞かせてください。こういうバンドになりたいというヴィジョンや、実現させたい夢などはありますか?

僕の場合、"バンドを続けていたい"、"作品を作り続けていたい"ということが一番の目標なので、CDをリリースできている時点ですごく満足感があるし、今、やりたいことをほとんどやれている状態ではあるんですよ。もちろん、"もっとたくさんの人に聴いてもらいたい"とか"もう1度「フジロック」のステージに立ちたい"とか、そういう夢はあります。でも"だから僕についてきてください"というテンションにはあんまりなれないので......ずっといいものを作り続けるので、長いことお付き合いいただけたら嬉しいな、という感じです。