Japanese
The Slumbers
Writer : 石角 友香
人が音楽を聴く1つの理由として、旅の擬似体験をしたい気持ちがあると思う。忙しない毎日のなか、突然何もかも投げ打って最終電車に飛び乗ったり、自分のことを誰も知らない街にふらりと出掛けたりすることは現実的には難しい。でもだからこそ人には旅情への渇望があり、どこの誰でもない自由な自分を感じたいのだと思う。その擬似体験に似た音楽として、人はどんなものを選ぶのだろう。時代や国を超えて、心地よい孤独に誘ってくれる普遍的な名曲が世界にはある。人それぞれだと思うけれど、風を感じたり、気持ちをニュートラルにしてくれたりする音楽を聴きたくなるんじゃないだろうか。例えば何度聴いてもまた1歩踏み出す胆力をくれる曲としての奥田民生の「さすらい」であったり、Bob Dylanを筆頭に脈々と続く、アメリカン・フォーク・ミュージックに滲む孤独の影やブルージーな側面はElliott SmithやTim Buckley等、枚挙にいとまがない。また、旅の感情を日常にも持ち込んで、自分のテーマ・ソングとして思わず口ずさみたくなる日本語のロックも人それぞれにあるだろう。エレファントカシマシ然り、THE BLUE HEARTS然り、くるり然り、だ。
ここで紹介する京都出身、拠点で活動する4人組ロック・バンド The Slumbers(スランバーズ)の"そもそものキャパシティ"を説明するために、古今東西の先人たちの名前を挙げてみたのだが、偉大さというのは後の評価によって定義されるもので、ここで言うのはThe Slumbersに対して説明を重ねることへの遠慮や難しさ、つい"いいバンド"としか言いようのない"大きさ"にちょっと怯んでしまうからなのだ。一言言っておきたいのは、このバンドは決して昭和を引きずっているわけでも、レトロなスタンスやサウンドのバンドでもないということ。ただ素直に彼等の楽曲に出会ってほしいが故に、むしろ周辺に見えてくる形容詞を片しておきたいというお節介な心情が働くのだ。
京都発のThe Slumbers。少ししゃがれたブルージーな声質と、脈々と受け継がれてきたグッド・メロディを生み出す能力を持つフロントマン 佐々木智則(Vo/Gt)と、ルーツ的なロックンロールもオルタナティヴやインディー・ロック的なセンスも窺わせる中田京悟(Gt/Cho)を中心に結成され、上西 響(Ba/Cho)を迎え活動してきた。1stデジタル・シングル「嗚呼、素晴らしきこの世界」はアコギのアルペジオがフォーキーでありつつ、Louis Armstrongの「What A Wonderful World」を彷彿とさせる広義の意味でのソウルも曲の底流に存在し、歌詞には社会に対する素朴な疑問が井上陽水の「傘がない」へのオマージュも込みで表現されている。コンスタントにリリースを重ねてきた作品は決して同じ傾向ばかりではなく、大きなグルーヴに乗るロックンロール「レトロカー」(2ndシングル)や、インディー・ロック的なアレンジも感じさせる「ブランコ」(シングル『さらば、憧れ / ブランコ』収録曲)等、ジャンルありきではなく佐々木が歌いたい曲の世界観がアレンジに結び付いている印象だ。それにしても、比較的ゆったりしたBPMと楽器のシンプルな鳴りを活かした曲作りは若い世代には珍しい。どんな音楽体験が彼等にこのタイム感を育ませたのか、興味を持たずにいられない普遍性を滲ませている。
The Slumbers - 『嗚呼、素晴らしきこの世界』(Music Video)
The Slumbers -『レトロカー』(Music Video)
今必要な生き方と歩調を合わせる曲の説得力
歌詞も旅であったり、人との関係の温かさをどこまでも自分の言葉で表現しようとする懸命さがこのバンドに対する信頼を厚くする。「アフターロール」(4thシングル)では、自我やエゴがむしろ弱くなることを肯定的に捉えているような、人を圧することでは得られない愛情のようなものがリリカルに描かれている。また、「さらば、憧れ」(『さらば、憧れ / ブランコ』収録曲)では情景的な歌詞の中で、少年時代への決別を思わせる自己の確立もイメージさせて見事だ。時代への反発とか閉塞感より、生き物としての瑞々しい感性を自分の言葉と声で届けようとする佐々木の姿勢はあまりジャンルに関係なく思える。ただ、シンプルなアレンジが彼の思いを純度高く届けることに、バンドも意識的なのだろう。
The Slumbers -『さらば、憧れ』(Music Video)
2024年は4曲を配信リリース。ますます波に乗ってきたThe Slumbersが新たに自身のレーベル"madoromi RECORDS"を設立し、さらに活動のフィールドを広げる宣言も込めたニュー・シングルが、1月15日にリリースしたばかりの「それは、この海のように」だ。生楽器でレコーディングした波音に重なってくる佐々木の一切の飾りがない強い声。踏みしめるようなスロー・テンポで"ああ どうか/なにも 言わないで"と始まるこの曲のなんとも言えない心強さはなんだろう。ただ存在しているだけでいい、だけどその存在はとてつもなく厳しい。そして優しい。人間は海になれはしないけれど、どう生きるか? を模索するとき、胸に大きなイメージを広げるこのバンドの態度は今こそ必要なものかもしれない。1人で心を落ち着かせたいとき、何かに立ち向かうとき、この曲のテンポと情景はあなたの歩幅とリンクするんじゃないだろうか。
The Slumbers - 『それは、この海のように』(Music Video)
今年からは、これまでサポートで参加していた菅野哉太(Dr/Cho)が正式メンバーになり、東京等各地でのライヴもより精力的になりそうだという。時代性と関係がないというのは大きな間違いで、現在、アメリカでも新たなフォーク・ミュージック回帰が起きていて、言葉とメロディに対する再認識は恐らく全世界的な傾向にある。人々の心が求める音楽のある種の共時性が今年あたり、明らかになるのかもしれない。(石角 友香)
▼リリース情報
The Slumbers
NEW DIGITAL SINGLE
「それは、この海のように」
NOW ON SALE
[madoromi RECORDS]
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