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LIVE REPORT

Japanese

mzsrz

Skream! マガジン 2022年12月号掲載

2022.11.03 @吉祥寺SHUFFLE

Writer 長澤 智典 Photo by Daisuke Suzuki

"見ず知らずだった私たちから、まだ見ず知らずのアナタへ"をコンセプトに誕生。音楽プロデューサーにDECO*27を迎え活動中の、"踊ることもうまく笑うこともできない、歌うだけのガールズ・バンド"がmzsrz(ミズシラズ)だ。メンバーは大原きらり、作山由衣、実果、ゆゆん、よせいの5人。
彼女たちが、初の主催イベント"水底現在地 vol.1"を11月3日に吉祥寺SHUFFLEにて開催。ゲストでシンダーエラ、9DayzGlitchClubTokyoが登場した。当日の模様をここにお伝えしたい。

病気(慢性上咽頭炎)療養のために休んでいたよせいが、約2ヶ月ぶりに復帰となったこの日。mzsrzは、オープニング・アクト、トリの2ステージを担当した。
イベントの幕開けを飾ったオープニング・アクトとしてのライヴでは、「パンデモニウム」を歌唱。幕の裏から登場したメンバーたちは凛々しい声をぶつけた。楽曲が躍動するのに合わせるように自身の感情も起伏する。時に荒々しく、時にジャジーにとドラマチックに転調してゆく楽曲の上で、曲調の変化により5人の歌声の表情も変化していった。パフォーマンス面の動きは少なめだが、放たれてくる熱はグングンと上がり始める。流動する楽曲展開や5人の感情的な歌声に惹き込まれるかのように、フロア中の人たちも熱を感じ、クラップからの縦ノリと、アイドリング状態から一気に回転数が上がっていく、そんなライヴの幕開けとなっていった。

"このフロアを全力で揺らしに来ました"と語り、9DayzGlitchClubTokyoのライヴがスタート。激しくもドラマチックに転調してゆくエレクトロ×インダストリアル・ロックな楽曲の上で、メンバーらは強い意志を示したメッセージをラップのような歌に乗せて次々と撃ち放つ。楽曲を重ねるごとにライヴは激しさを増し、メンバーたちも感情を剥き出しにして荒ぶる声に乗せ、フロア中の人たちへ強い意志を持った言葉の数々を突きつける。とてもアグレッシヴでスリリングなライヴのパフォーマンスだ。でも、ピリリとした緊張感が気持ちを嬉しく奮わせる。

どの曲も感情を熱くかき立てるなか、オーディエンスがメンバーと一緒に大きく手を振り、クラップをし、一体化してゆく場面も折り込みながら9DayzGlitchClubTokyoのライヴは進んでゆく。
ほど良い緊張感と感情を高ぶらせる激熱高揚曲を次々と繰り出し、彼女たちは観ている人たちを熱狂の中へ導き入れる。気がついたらフロアにいる人たちが、9DayzGlitchClubTokyoが作り上げる黒い夢の中へ心地よく落ちていた。痛みを心に覚えながらも、彼女たちの強い意志を突きつける言葉の数々に刺激を受け、暗い闇の中で一筋の光を胸に覚える感覚で、3人と共に生きる意味を分かち合っているよう。"俺たちはまだ終わらない"の言葉が胸に熱かった!

シンダーエラのライヴは、強烈な熱を孕んだ楽曲の中からメンバーたちが少しずつ熱を引き出し、祈りにも似た声へ変えて歌う姿から始まった。彼女たちは、楽曲が感情の色を変えるごとにその曲の主人公へ憑依し、いろんな狂気を帯びた姿を見せてゆく。楽曲の持つ荒々しさや激情ぶりとは裏腹に、メンバーたちは理性とその崩壊、ふたつの感情がせめぎ合う境界線の上を綱渡りするように歌っていた。危うくも力強いその姿に気持ちが強く惹かれる。

曲が進むたびに、メンバーたちの歌声にも、赤く染まった感情の色が明瞭に描き出されてゆく。舞台の上で踊る彼女たちは、まるで天啓を受けた巫女たちのよう。1曲ごとに4人は曲が描く世界へ身を落とし、それぞれの物語を、自分たちの身体を通して増幅しながら観客たちの心に映し出してゆく。
とても鋭利でデコボコとした、いや、ザクザクと険しく切り立った崖のようにスリリングな重く激しい楽曲の上で、華麗に歌い踊る彼女たちの姿はとても美しい。そして、強い刺激を与えたら壊れそうでもある。だが、そんな脆さを備えているからこそ、触れてはいけない美しき狂騒ぶりに我々は強く引き込まれ、シンダーエラの描き出す世界へ溺れていった。

mzsrzのライヴは、まだ音源化しておらず、ライヴでのみ披露し続けている新曲の「ストレイシープ後進曲」から始まった。ここ2ヶ月ほどは、活動を休止していたよせいを除く4人で歌っていたが、彼女の復帰に伴い今回よりフル・メンバー5人で歌唱。主催イベントでこの曲のあるべき姿を最初に味わえたのが嬉しい。

メンバーひとりひとりが想いを込めて歌い、その深めた想いをひとつの物語として紬ぎながら、「ストレイシープ後進曲」は形を成してゆく。その様にも心が惹かれた。みんなの声がひとつに重なり合ったとき、儚くも美しい響きを覚えたのだ。彼女たちは、胸の奥に秘めた想いを引き出すように、身体を大きく折り曲げ歌っていた。音が勢いを増すにつれ、メンバーたちの歌声にも熱が帯びる。彼女たちは、強い意志を示すように言葉を解き放った。いろんな感情の粒を詰め込んだ弾丸を撃つように、沸き立つ気持ちをぶつけてゆく。サウンドが華やかさを増すのに合わせ物語にも深みが増す、とてもドラマチックなナンバーだ(コンパクトで、曲尺の短い楽曲も多い昨今のミュージック・シーンにおいて、6分を超える長尺が故に味わうことのできる物語とスケール感と言ってもいいだろう)。この楽曲を通して伝えてきた5人の言葉を、揺れ動く気持ちを、もっともっと探りたい。