Japanese
ザ・コインロッカーズ
Skream! マガジン 2020年02月号掲載
2019.12.23 @Zepp Tokyo
Writer 宮﨑 大樹 Photo by megumi suzuki
このライヴが持つ意味を語るには、ちょうど1年前の2018年12月23日、同じZepp Tokyoで行われたザ・コインロッカーズ結成の記者会見について記すところからやはり始めるべきだろう。秋元 康プロデュースによる総勢38人のガールズ・バンド、ザ・コインロッカーズは、各パートに複数のメンバーが在籍、楽曲ごとにメンバーを選抜するという、まったく新しいガールズ・バンド・プロジェクトとして結成が発表された。観客0(ゼロ)のZepp Tokyoからスタートしたザ・コインロッカーズは、1年後の今日、つまり2019年12月23日に同じZepp Tokyoでワンマン・ライヴを開催し、ソールド・アウトさせることを目指していく。彼女たちにとって初めての曲「憂鬱な空が好きなんだ」がドラマ"俺のスカート、どこ行った?"の主題歌に決定し、約150公演にも及ぶライヴ・ツアー"ザ・コインロッカーズ SHOWCASE LIVE"を開催と、駆け出しのバンドにはありえないスケールで活動を続けた彼女たちだが、いよいよZepp Tokyoワンマンが目前という2019年12月17日に、衝撃的なニュースが流れる。それは、目標としてきたZepp Tokyo公演のチケットがソールド・アウトまでの半数に達さず、この公演をもって現メンバーでの活動を終了し、プロジェクトを大幅にリニューアルするという内容だった。
そして迎えた2019年12月23日。寂しい気持ちを抱きつつもZepp Tokyoの扉を開いて眼前に広がったのは、事前発表が嘘だったのではないかと思うほどの多くのオーディエンスの数だった。"あぁ、令和の12月23日は平日だから、もしかしたらZeppに行くことを諦めていたファンがいたのかもしれない。そして、発表を受けたそのファンたちが強行してZeppに集まったのかもしれない"そんなことを思う。とにかく、その光景は満員と言ってもいいのではないかというほどで、"やはり彼女たちのやってきたことは決して無駄じゃなかった、彼女たちは確かにファンに愛されていた"、そう確信した。
大きな声援と手拍子で迎えられながらステージに登場したのは"憂鬱チーム"。"Zeppがついにきましたぁー! 私たちが、ザ・コインロッカーズです!"とキャプテンの松本璃奈が声を上げ、「憂鬱な空が好きなんだ」で現体制ラスト・ライヴが始まった。この日を迎えるまでにおそらく様々な悩みや葛藤、不安を抱えていたであろう彼女たちだが、その表情はキラキラと明るい。憂鬱チームに限らずだが、ザ・コインロッカーズは楽器経験者だけでなく、初心者も少なくないメンバー構成でスタートしている。そのため、ライヴ・ツアー初期の彼女たちのパフォーマンスは、初々しさを感じさせる部分が当然ながら少なからずあった。しかし、約150公演の武者修行を経てZeppに帰ってきた彼女たちは、そんな印象を微塵も感じさせない。堂々と、そして1年間分の想いをすべて出し切るかのように音楽を届けていく。この1年で、彼女たちはZeppに立つに値するガールズ・バンドへと成長を遂げていたのだ。
シームレスにチームの転換を行いながら、シーン的にも珍しいツイン・ドラムでパワフルなサウンドを観客にぶつけたり、トランペットを含んだ編成で彩りを加えたりと、同じ曲でもそれぞれのチームが施した個性的な色付けで魅せていく。チームによって、同じ曲でもこんなに違う魅力を引き出すことができるのかと感嘆させられた。これこそ、ザ・コインロッカーズの醍醐味だ。終始感傷的なライヴになるかと思われていたが、カバー・メドレーや、ライヴ会場での観客による投票結果が反映された選抜メンバーが演奏する新曲「コインロッカーの中身」と「僕はしあわせなのか?」の披露、さらには曲間の日本舞踊など、この場所に来た観客を楽しませようといった意志がビシビシと伝わってくる。本編最後には憂鬱チームが再度登場。イタリア出身のEmilyがイタリア語でエモーショナルに弾き語る「月はどこに行った?」から「歌いたくて歌いたくて」、「最後の蝉」へ繋ぎ、「憂鬱な空が好きなんだ」で締めくくるメドレーを披露すると、大きく、そして温かい拍手のなか深々と礼をして本編は幕を閉じた。
これで終わるわけにはいかないとばかりに、集まったファンはすぐさま"アンコール!"の声でZeppを満たしていく。大歓声に応えるべく、アンコール1発目に、演奏曲と担当楽器ごとのメンバーをくじ引きで決める、お馴染みのシャッフル・バンドで「最後の蝉」を披露すると、いよいよ現体制最後のパフォーマンスへ。ザ・コインロッカーズ全員がステージに上がり、松本璃奈が涙ながらに以下のように語った。"ザ・コインロッカーズは、去年の12月23日、ここZepp Tokyoで結成されました。そのときの無観客の状態から、1年後の今日12月23日、Zepp Tokyoをソールド・アウトさせるというのを目標にしてやってきました。1周年を迎えられたこと、こんなにもファンのみなさんがいてくださっているおかげなので、本当にいつもありがとうございます。今日がこの38人での最後のライヴになります。正直、本当めちゃめちゃ悔しいけど、今よりもみんなが、今に負けないように、これから先それぞれの道に進んでいきます。寂しいけど「前を向かないとな」って私はすごく思います。本当に次で最後の曲になるので、みなさんこの38人のザ・コインロッカーズを目に焼きつけて帰ってください"。そうして、ザ・コインロッカーズ全員での「憂鬱な空が好きなんだ ~Zepp SP ver.~」を披露すると、曲の後半では終わりを惜しむように、大きく、そして長い"ラララ"のシンガロングが沸き起こった。
松本が言った"寂しいけど「前を向かないとな」"の言葉通り、ザ・コインロッカーズは歩みを止めずに進んでいく。13名の新体制として活動していくザ・コインロッカーズの第2章も見守っていきたい。

[Setlist]
1. 憂鬱な空が好きなんだ(憂鬱チーム)
2. 最後の蝉(緑チーム)
3. 桜なんか嫌いだ ~メンバー紹介Ver.~
(蝉チーム)
4. 最後の蝉(蝉チーム)
5. 憂鬱な空が好きなんだ ~トランペット ver.~
(赤チーム)
6. 歌いたくて歌いたくて(桜チーム)
7. 桜なんか嫌いだ(桜チーム)
8. 憂鬱な空が好きなんだ(青チーム)
9. オリジナルソングメドレー(紫チーム)
10. 桜なんか嫌いだ(月チーム)
11. 月はどこに行った?(月チーム)12. 歌いたくて歌いたくて ~ヘビロテ ver.~
(黄色チーム)
13. 最後の蝉 ~ロック MASH UP ver.~
(オレンジチーム)
14. カバーメドレー ~メンバー紹介~(歌歌チーム)
15. 歌いたくて歌いたくて(歌歌チーム)
16. コインロッカーの中身(投票チームA)
17. 僕はしあわせなのか?(投票チームB)
18. / 19. 憂鬱チームメドレー(憂鬱チーム)
En1. 最後の蝉(シャッフルバンド)
En2. 憂鬱な空が好きなんだ ~Zepp SP ver.~
(ザ・コインロッカーズ)
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