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LIVE REPORT

Japanese

魔法少女になり隊

Skream! マガジン 2017年03月号掲載

2017.01.29 @渋谷TSUTAYA O-WEST

Writer 秦 理絵

"魔女の呪いで喋ることができない火寺バジル(Vo)の呪いを解くためには、みんなのハピネスが必要なんだ"という、バンド紹介のオープニング映像でスタートしたRPG系ロック・バンド、魔法少女になり隊のTSUTAYA O-WESTワンマン。この日は1月18日にリリースされたシングル『革命のマスク』を引っ提げて開催された東名阪ツアー"ワンマンツアー2017~メロディア王国にさよならバイバイ ワタシはみんなと旅に出る~"の東京ファイナルだ。チケットは見事にソールド・アウト。メンバー全員がステージに一列で並び、1曲目の「KI-RA-RI」で大音量のハードコア・ナンバーを浴びせると、その瞬間を待ちわびた満員のフロアから、いきなり熱狂的な歓声が上がった。
"はしゃいでいこうぜー!"というgari(VJ/Vo)の甲高い煽りから「火遁の術」へ。激しい高速ドラムとシンセサイザーを同期で流し、その上にウイ・ビトン(Gt)と明治(Gt)のツイン・ギター、サポート・ベースのアグレッシヴなプレイが加わるのが、魔法少女になり隊のライヴ・スタイル。「☆☆☆☆クエスト」では、デス・ヴォイスを操るgariがサイリウムを両手に全力でヲタ芸を打ち、その真ん中でバジルがキュートなアニメ声で歌う。ジャンルを自由に横断しながら、そのエッセンスを過剰に盛り込む魔法少女になり隊の音楽が、あくまでポップに届くのはそんなバジルの歌の力が大きい。

アニメ"ONE PIECE"のオープニング・ソングとして有名なFolder5の「Believe」のカバーからは、メンバーが敬愛するアニメ・ソングを連発するカバー曲ゾーン。普通のロック・バンドが選ぶようなミュージシャンのカバーではなく、誰もが知っているアニメ・ソングを"好きだから"のひと言だけで自分たちの音楽にしてしまう純粋な好奇心が、魔法少女になり隊のアイデンティティであり、武器でもある。昨年の"KNOTFEST JAPAN 2016"で披露してメタル・ファンの間でも絶賛された「おジャ魔女カーニバル!!」は、もはや自分たちの持ち歌のようにメンバーの身体にも馴染んでいたし、合いの手やハンドクラップを入れるお客さんも抜群の一体感だった。

MCではバジルがポンポンとgariの背中を叩くと、"今日、私、MCやるね"と書かれたスケッチブックをフロアへと見せた。会場には、ほのぼのとしたBGM「バジルのテーマ」が流れ出す。"私は喋れないけど、いつもありがとうの気持ちを込めて歌ってるよ。今日は届くように歌うね"。そんなとき、gariが喋れないバジルの代わりに言葉を読んであげるあたり、ふたりは良いコンビだ。最新シングル曲「革命のマスク」では、痛快なパンク・ナンバーに乗せて、"一緒に闘おう"という未来に放つ決意の歌を、ひと際感情を込めて歌うバジルの姿が印象的だった。そして、フロアから起こる大きな歓声が静まるのを待ってから届けたのは多幸感いっぱいのポップ・ソング「first star」。まだ音源化はされていないが、メンバーがとても大切しているナンバーで、お客さんは左右に腕を振り、会場はあたたかな光で満たされていた。

"こっから後半戦盛り上がっていきましょー!"というgariの煽りから、和太鼓のリズムに乗せて、バジルが扇子を片手に歌う「ヒメサマスピリッツ」へ突入。轟音メタル「テッペン伝説」ではセンターに立ったウイが華々しくソロを弾き倒すと、その後ろでバジルとgariがふたりで「Choo Choo TRAIN」風のダンスを決めていたり、クールな明治も曲のキメでステージ際まで歩み出たり、そのアグレッシヴなパフォーマンスがフロアの興奮をいっそう煽る。そして、gariが"大きな声を出してひとつになろうぜー!"と叫んだラスト・ソング「BA・BA・BA ばけ~しょん」では、その天井知らずの熱狂がマックスへ。最後にバジルが"ありがとう"と書いたスケッチブックの1枚をフロアに投げ入れて、本編は幕を閉じた。

フロアがむせ返るような熱気に包まれるなか、スクリーン映像で3rdシングルのリリースという嬉しい発表とともに突入したアンコール。バジルが"いけますかー!"、"もっと"と書かれたスケッチブックを見せてフロアを煽ると、ファミコン時代のドラクエ経験者の多くが恐怖した絶望的な効果音から「冒険の書1」が披露された。バンド始まりの歌で、"魔法少女になりたい"のフレーズを大合唱。スクリーンでは"ドラクエ"のバトル・シーンを模して、遭遇する悪いモンスターを、バジルの歌で良いモンスターに変えていく映像が流れていた。それは音楽でみんなを笑顔にするという魔法少女からのシンプルな願いも込められた映像であり、演奏だった。"みなさん、またどこかで一緒に遊びましょう! バイバイ!"。演奏を終えたメンバーが一列に並び、gariが最後までハイテンションに別れを告げると、バジルは×印のマスクを着けて静かにステージをあとにした。

[Setlist]
1. KI-RA-RI
2. 火遁の術
3. ☆☆☆☆クエスト
4. 狂騒曲ザラキ
5. Believe
6. ハレ晴れユカイ
7. おジャ魔女カーニバル!!
8. RE-BI-TE-TO
9. 革命のマスク
10. first star
11. 新曲
12. テッペン伝説
13. MEGA DASH
14. BA・BA・BA ばけ~しょん

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