Japanese
Dinosaur Pile-Up
Skream! マガジン 2016年01月号掲載
2015.12.10 @渋谷CLUB QUATTRO
Writer 山口 智男
直前の取材が押したため、到着が若干遅れてしまった。スタンディングのフロアはすでにかなりの盛り上がりだ。え、え、どういうこと? そんなに遅れた!? バンドが演奏している曲は10月にリリースした3rdアルバム『ELEVEN ELEVEN(Japan Edition)』からの「Grim Valentine」。慌ててセットリストを確認する。なんだ、まだ2曲目じゃないか。だろ? そんなに遅れたわけじゃないもの。焦らせるなよ。ほっと胸を撫でおろしながら、1曲目から盛り上がっていたに違いないライヴに乗り遅れたことが悔しくなってきた。クソ。ここからはとことん楽しむぞ。そう心に決めると、セットリストとメモをカバンにしまい、前に突き進んでいった。
2014年7月、TOWER RECORDS限定の『Peninsula EP』で日本デビューを飾ったイギリスの3人組、Dinosaur Pile-Up(以下:DPU)はそれから同年8月の"SUMMER SONIC"を皮切りにBLUE ENCOUNTとともに東京と大阪でゲストを迎え、開催した10月の"VS JAPAN TOUR"、そして2015年8月の"SUMMER SONIC"と何度も日本に足を運びながら精力的に自分たちが奏でる大音量のロック・サウンドの魅力をアピールしてきた。そして今回の"JAPAN LIVE 2015"。4度目の来日にして初の単独公演となる一夜限りの東京公演は、結論から言ってしまえば、日本デビューから1年、彼らが精力的に続けてきた活動がひとつの大きな成果に実ったことを印象づけるものになった。
大きな成果と言っても会場の規模の話ではない。規模について言うなら、午前中から大観衆を沸かせた今年の"SUMMER SONIC"や海外で彼らが立っている大舞台を考えれば、目標はさらに大きなところなのだと思うが、逆に今回はファンとの距離をぐっと縮めることで、これまでの活動がバンドとファンの濃密な関係を作り出していたことをアピールした。
「Grim Valentine」からなだれこんだ「Peninsula」では客席から手拍子が起こり、「White T-Shirt and Jeans」ではステージ前のモッシュの上を、興奮したファンがクラウドサーフィンした。
"You're fuckin' amazing!!!! We're fuckin' Dinosaur Pile-Up!!!!"
ファンの歓声に負けないようにMatt Bigland(Vo/Gt)が上げた金切り声からは、これまで感じたことがない興奮が伝わってきた。ファンもエキサイトしているけど、バンドも負けないぐらいエキサイトしている。ファンの気持ちをガシッと掴んだことを確信したバンドは中盤、『ELEVEN ELEVEN(Japan Edition)』から若干、演奏のテンポを落として、DPUが持っているメランコリーやポップな持ち味を印象づける「Crystalline」、「Friend Of Mine」、「Might As Well」を披露。ひょっとしたら、バンドには終盤、ラストスパートをかける前にここでちょっとひと息ついてもらおうという思惑もあったのかもしれない。しかし、ファンの盛り上がりは止まらない。「White T-Shirt and Jeans」といったDPUのライヴの定番と言える曲と同じぐらいの熱度で反応しているんだから面白い。みんな、『ELEVEN ELEVEN(Japan Edition)』をしっかり聴きこんできたようだ。曲の浸透度の高さに驚かされながら、改めてバンドとファンの濃密な関係を実感させられた。
Matt、Mike Sheils(Dr)、Jim Cratchley(Ba)の演奏にも力が入る。DPUなりにMOTÖRHEADにオマージュを捧げたというスピード・ナンバー「Bad Penny」でさらに熱を帯びた3人の熱演がファンの興奮にまた火をつける。熱気と興奮の中、ファンの気持ちをじらすようにMattが「Derail」を弾き語りで披露。ファンの手拍子が止まなかった「Arizona Waiting」からの爆発的な盛り上がりを考えれば、弾き語りした「Derail」の効果はてきめんだった。シンガロングがお馴染みの光景になりつつある「Nature Nurture」、とことんヘヴィな「Anxiety Trip」......バンドもファンももう止まらない。
そして、本編の最後を飾ったのは「11:11」。タイトルをリフレインするサビでは"Last singalong!!!!"というMikeの呼びかけに応え、「Nature Nurture」に負けないぐらい大きなシンガロングが起き、自分たちの足を使って、日本のファンに自分たちの音楽を届けるというロック・バンドらしい活動を続けてきたDPUの勝利を宣言した。今回、バンドとファンが印象づけた濃密な関係は今後、濃度を濃いものにしながらさらに大きなものになっていくに違いない。アンコールでファンにプレゼントしたこの日、2度目の「Peninsula」を聴きながらそれを確信した。
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