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LIVE REPORT

Japanese

マスダミズキ(miida)/ 原田珠々華 / Kaco

Skream! マガジン 2022年11月号掲載

2022.09.22 @下北沢LIVEHOLIC

Writer : 山田 いつき Photographer:堺柊人

下北沢LIVEHOLICのオープン7周年を記念して現在開催中の"LIVEHOLIC 7th Anniversary series"。9月22日の公演は、残念ながら当初出演を予定していた門脇更紗が体調不良のため出演キャンセルとなり、急遽マスダミズキ(miida)、原田珠々華、Kacoの3名による3マン・ライヴとして行われた。

トップバッターは、愛媛県出身のシンガー・ソングライター Kaco。ステージに置かれたキーボードの前に腰掛け、1曲目の「あお」を静かに歌い始めると、透明感溢れる歌声で場内の空気を一瞬にしてエモーショナルに染め上げていく。続けて演奏されたのは、スタッカートの効いた伴奏が印象的な「レシピ」。どこか矢野顕子を彷彿とさせる透き通ったファルセットと跳ねる鍵盤の音色に思わず身体が揺れてしまう。MCでは"よろしくお願いします。Kacoです! なんて最高なぎゅうぎゅう詰めなの(笑)"と満員のフロアを嬉しそうに眺め、集まった観客に感謝を述べた(この日のチケットはソールド・アウト!)。そして、昨今の混沌とした世界情勢について触れると「少年アルファ」、「二十一世紀」といったシリアスなムードを纏ったナンバーを立て続けにプレイ。鋭い眼差しをフロアに向けながら、美しいメロディと直情的な言葉の数々で聴き手の感情を揺さぶっていく。ラストは優しい世界を希求する「人々」をしっとりと歌い上げ、ステージをあとにした。まだ音源化がされていない楽曲を中心に構成されたこの日のセットリスト。シンガー・ソングライターとして彼女が今伝えたい想いが音楽を通してひしひしと伝わってくるような30分だった。

チャイナドレス風の衣装を身に纏って登場したのは、現在、虹のコンキスタドール予科生として活動する原田珠々華。実は昨年に開催された下北沢LIVEHOLICの6周年記念イベントにシンガー・ソングライターとして出演していた彼女。この日はアイドルとしてLIVEHOLICのステージに帰ってきてくれた。虹コン(虹のコンキスタドール)の最新サマー・チューン「キミは夏のレインボー!」で華々しくライヴをスタートさせると、"キラッ!"の決めポーズがチャーミングな中島 愛の「星間飛行」、電話の寸劇を交えたBerryz工房の「マジ グッドチャンス サマー」など盛り上がり必須のアイドル・ソングを次々に披露。彼女がかつて在籍していたアイドル・グループ"アイドルネッサンス"でカバーしていた真心ブラザーズの「Dear, Summer Friend」では、変わらないキュートな歌声でオーディエンスを魅了した。最後は、スペシャル・ゲストとして虹のコンキスタドール予科生の石浜芽衣をステージに呼び込み、原田が作詞/作曲を手掛けたシンガー・ソングライター時代のオリジナル楽曲「サイダー」をふたりで歌唱。出会ってまだ数ヶ月というふたりだが、抜群のコンビネーションを見せた。パフォーマンス後、原田は"自分の曲がなかなか好きになれない時期があったんですけど、こうしてめめ(石浜)が楽しそうに歌ってくれるから、今になってあのとき作って良かったなと......あのときの自分を肯定できた気がしていい夜になりました"と語った。これまでの紆余曲折を経て、再びアイドルとしての道を歩み始めた彼女。とどまることなく風の中を走り続けた原田珠々華の足跡を辿るような感動的なステージであった。

そして、この日のトリを務めるマスダミズキがアコースティック・ギターを片手に登場。ハイチェアに腰掛けて、"こんばんは。「miida」というプロジェクトをやっているマスダミズキと申します。普段はバンド・スタイルでライヴをやっているんですけど、今日は弾き語りでお届けしようと思います!"と挨拶し、1曲目に歌われたのは「good morning」だ。途中で"ちょっと待って、すごく緊張しちゃっているよ"と演奏を止めてしまうほど緊張していたが、呼吸を整えると丁寧にアルペジオを奏でていく。WEEZERが昨年に発表した「All My Favorite Songs」のカバーを歌唱した頃には、少し緊張も和らいできたのか、伸びやかな歌声がフロアに響き渡った。中盤のMCでは、彼女が昨年12月から今年の1月にかけてサポート・ギタリストとして同行していたRADWIMPSの全国ツアーの話に。ツアーを通して、音楽にこれほどまでに言葉と想いを乗せるバンドの姿に強い感銘を受けたという。そんな話から演奏された「LUCKY」では、"君"に向けた"僕"の心情がドラマチックな筆致で綴られており、ツアーの経験が、ミュージシャンとして活動する彼女の血肉になっていることが窺える。そして本編最後は、出会う音楽に胸をときめかせていた青春時代を思い返して制作したという「utopia」で会場をノスタルジックな空気感に染めた。アンコールでは、miidaとしての初のレコーディング楽曲である「grapefruit moon」を披露。約2時間半に及んだこの日のイベントを穏やかなムードで締めくくった。


[Setlist]
■Kaco
1. あお
2. レシピ
3. 少年アルファ
4. 二十一世紀
5. ありさま
6. 人々

■原田珠々華
1. キミは夏のレインボー!
2. 星間飛行
3. マジ グッドチャンス サマー
4. Dear, Summer Friend
5. in (door) the Summer
6. サイダー

■マスダミズキ(miida)
1. good morning
2. YOU
3. All My Favorite Songs
4. be true?
5. LUCKY
6. utopia
En. grapefruit moon

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