
Japanese
HINTO

2016.09.23 @渋谷La.mama
Writer 石角 友香
2日前の9月21日にリリースされたばかりの3rdフル・アルバム『WC』レコ発ツアー初日が渋谷La.mamaで開催されたのだが、満員御礼のフロアはもちろん、今のHINTOが作り出す無駄のないアンサンブルをこのキャパシティで観ることができるのは、非常に贅沢だと序盤から、もっと言えば1曲目から思ってしまった。そこには2年ぶりの新譜を携えたワンマン・ツアーへのファンの半端ない(でも肩の力が抜けた)待望感や飢餓感がいい方向に作用していたことも大きいとは思う。しかしその待望されている予想の範囲を、音楽的に軽々と超えていく今の4人ありきの充実した2時間だったのだ。
ツアーは進行中なので曲順などの詳述は避けるが、ライヴの印象を決める場所にニュー・アルバムの1曲目である「なつかしい人」を配置したのは英断だった。派手な入りではないけれど、安部コウセイ(Vo/Gt)がこれまで以上に自意識を排除したある種、素直なヴォーカルを聞かせ、そこに伊東真一の機械的なサウンドと幾何学的なフレージングのギターが、音源以上にいびつな像を結ぶ。でも、歌とギターが喧嘩しないどころか、双方で「なつかしい人」を表現できているのは、リズム隊の贅肉のなさに尽きる。安部光広のファンクとポスト・パンク両方のセンスが混在するベース・プレイ、菱谷"ビッツ"昌弘のドラミングも手数が減り、間がツボを押すように心地よい。
思えばHINTOは人よりやることが早かった。80s的なファンクネスと音色を、すでに前作『NERVOUS PARTY』で聴かせており、それもポスト・ロック的な抜き挿しというより、いわばHINTO流のシティ・ポップをすでに形成していたわけだ。そういう意味では、前作からの「テーブル」や「はんぶんゾンビ」が持っている太いファンクネスが今回のライヴでもしっくりきた印象がある。演奏も歌も存分に体感しながら自由に踊る人もいれば、プレイを凝視する人もいる。さらに言えば、ファンの年齢層もバンドと共に上がってきたのだが、そこをコウセイが"みんなの飛び方に気遣いを感じるわ"とすかさずツッコミを入れ、ファンも苦笑い。そんな演奏時とは真逆のゆるいモードもHINTOのライヴならではだ。頻繁に彼らのライヴを体験していなくても、すこぶる居心地が良い。
男女の間にあるいかんともしがたい溝というか、理解できない謎や違いがテーマになっているアルバム『WC』だが、中でも"お1人様で何が悪い"、"他人と同じように生きるには長く生きすぎた"と、あらゆる人にとって共感度が高すぎるであろう「かるま」も、コウセイのヴォーカルが非常によく出ていて、演奏のキメも気持ちいいようにハマり、堂々と手を上げてノるのはどうか? なんて遠慮してる人は男性にも女性にもほぼいなかった。曲として完成度が高いせいもあるだろう。しかしこの曲のあとにも"「かるま」を聴いて、これ私のことだわ、とか思った人はヤバいですよ"と、意地悪なMCをする構成なのだった。
ちょっとイタい女子像といえば「ガラスのハート」もアイドル・ポップ的な曲調を凄まじくタイトなリズム隊と、空間系のエフェクターというだけでは説明がつかない摩訶不思議な伊東のギター・サウンドがポップな曲調に強烈なフックをつけていく。素直になってきたコウセイの歌が際立つ隙間の多い演奏、基本的に踊れるBPM、でもそこにシンセやプリセット音源にはない突拍子もないギター・サウンドが絡みついたり、浮遊していたりすることがもはや奇妙なことに思えなかった。ただ、"いったいどうやってこの音を出しているんだ?"という興味だけは尽きないもので、演奏に集中してロング・ヘアーを振り乱し、髪型そのものもカオティックになっていく伊東から目が離せないのは相変わらずなのだが......。
一方、男気溢れる真剣白刃取りめいた抜き挿しがスリリングな「悪魔の実」では、間奏の脱臼しそうな展開や可笑しみも含めて、物語という乗り物にグルーヴと一緒に乗っかるようなダイナミズムも発生。潔くバッサリ切って落とすようなエンディングにも息を呑む。これまでのライヴで演奏してきた曲もあるとはいえ、ニュー・アルバムのリリース初日でこの一貫したグルーヴがもたらす完成度の高さはいったい何なのだ? これが取材時にコウセイが、"今、HINTOの演奏は相当いい"と自信を持っていたことか、と腹落ちしたのだけれど、まだ目下、完成度が高まっている最中かと思うと、ツアー終盤はどうなるのだろう。
そういえば、新作からMVを制作した「なつかしい人」のYouTubeの再生回数がある日突然伸びて一瞬喜んだものの、コメント欄が日本語以外で埋め尽くされているという。実はアメリカに熱狂的なファンがいるらしく、その未知のファンが鋭意拡散しているらしい。"要は俺らには一銭にもならないって話なんですけど"と言いながら、まんざらでもなさそうに見えたのは気のせいか。(ちなみにこのMV、今のHINTOのアンサンブルの肝が可視化されているので観た方がいいです)
『WC』からの曲を軸にしながら、踊れる曲やギター・サウンドがさらに特徴を増す曲など、1st、2ndからもバランス良く配置したセットリストは今からHINTOを見始めようとするオーディエンスにも最適なのではないかと思う。そして、いびつだったりフィクショナルな世界観だけでなく、珍しくストレートに"バンドってやっぱ無敵だな"と思わせてくれる「ザ・ばんど」という新境地を聴くことができるのも今回の肝だ。この曲を演奏するに際してコウセイは、"バンドの曲っていいなと思って。そしたらもうセカイイチに「バンドマン」って曲があったんだけど、真君の王道のリフを聴いたらできました"と話した。もうそれだけでかなりグッときてしまったのだが、エフェクティヴじゃないHINTOのギター・サウンドが、ちょっとだけ照れも感じさせながらまっすぐ演奏される様を見ればきっとかなり励まされるはずだ。もちろん、具体的に鳴らされている音楽が誰にも似ていないからであり、各楽器が最高に良い音だったことも大きい。HINTOは今、HINTOなりの王道を歩んでいる。
おしゃれな連中がやってるイメージがあって開催することにしたという発言の真偽はともかく、10月30日の渋谷WWWでのファイナルが楽しみだ。
- 1
LIVE INFO
- 2025.06.25
-
オレンジスパイニクラブ
ザ・シスターズハイ
SHE'S
星野源
TenTwenty
Czecho No Republic
PEDRO×詩羽
People In The Box
斉藤和義
岡崎体育
- 2025.06.26
-
Creepy Nuts
ザ・シスターズハイ
ヤングスキニー
怒髪天
ドミコ
TENDOUJI
the dadadadys
斉藤和義
WANIMA
岡崎体育
にしな
プルスタンス / Navy HERETIC / cherie / ライティライト
- 2025.06.27
-
四星球
Creepy Nuts
GOOD ON THE REEL
Subway Daydream
東京スカパラダイスオーケストラ
ビッケブランカ
the shes gone
The Slumbers
GLIM SPANKY
オレンジスパイニクラブ
女王蜂
ポルカドットスティングレイ
ドミコ
フリージアン
サイダーガール
TENDOUJI
Nothing's Carved In Stone
荒谷翔大
yama × 群馬交響楽団
chilldspot
WHISPER OUT LOUD / Good Grief / CrowsAlive / UNMASK aLIVE
Amber's × シズクノメ
空白ごっこ
WANIMA
岡崎体育
"LIVEHOLIC 10th Anniversary series~ナニカシラ presents sunriseeee!!!!〜"
- 2025.06.28
-
眉村ちあき
女王蜂
鶴
LOCAL CONNECT
竹内アンナ
GRAPEVINE
怒髪天
[Alexandros]
Lucky Kilimanjaro
Organic Call
浅井健一
"CRAFTLAND"
チリヌルヲワカ
the shes gone
CYNHN × タイトル未定 × fishbowl
OKAMOTO'S / w.o.d. / MONO NO AWARE / Laura day romance ほか
いゔどっと
いきものがかり
ASP
コレサワ
ドレスコーズ
神はサイコロを振らない
Laughing Hick
荒谷翔大
福永浩平(雨のパレード)
FINLANDS
the dadadadys
私立恵比寿中学
スカート
ゴキゲン帝国
礼賛
ORCALAND
"World DJ Festival Japan 2025"
ネクライトーキー
FIVE NEW OLD
斉藤和義
sumika
"TAKASAKI CITY ROCK FES.2025"
忘れらんねえよ / BLUE ENCOUNT / ヒトリエ / 打首獄門同好会 ほか
Halo at 四畳半
TGMX(FRONTIER BACKYARD etc.)
岡崎体育
Novelbright
- 2025.06.29
-
眉村ちあき
アルコサイト
ヤングスキニー
ブランデー戦記
鶴
竹内アンナ
GRAPEVINE
[Alexandros]
HEP BURN
GLIM SPANKY
怒髪天
FINLANDS
Lucky Kilimanjaro
ネクライトーキー
東京スカパラダイスオーケストラ
浅井健一
Chimothy→
SVEN(fox capture plan)
いゔどっと
大原櫻子
荒谷翔大
reGretGirl
ドレスコーズ
VOI SQUARE CAT
終活クラブ
サイダーガール
ポルカドットスティングレイ
いきものがかり
ASP
コレサワ
清 竜人25
私立恵比寿中学
"World DJ Festival Japan 2025"
おいしくるメロンパン
斉藤和義
sumika
"TAKASAKI CITY ROCK FES.2025"
yutori
岡崎体育
Nothing's Carved In Stone
Novelbright
- 2025.06.30
-
Dear Chambers
清 竜人TOWN
浜崎容子(アーバンギャルド)
Hump Back
岡崎体育
- 2025.07.01
-
ビレッジマンズストア
Mirror,Mirror
岡崎体育
- 2025.07.02
-
ヤングスキニー
キュウソネコカミ
SHE'S
Saucy Dog
Hump Back
Laura day romance × Billyrrom
Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)/ 寺中友将(KEYTALK)/ 谷口 鮪(KANA-BOON)/ アユニ・D(PEDRO)
ドミコ
岡崎体育
- 2025.07.03
-
ヤングスキニー
キュウソネコカミ
斉藤和義
go!go!vanillas
蒼山幸子
kobore × プッシュプルポット × Brown Basket
PK shampoo
TenTwenty
Saucy Dog
ビレッジマンズストア
クジラ夜の街
KALMA
the dadadadys
神聖かまってちゃん
サカナクション
フィロソフィーのダンス×清 竜人25
岡崎体育
- 2025.07.04
-
Nothing's Carved In Stone
MAN WITH A MISSION
斉藤和義
ExWHYZ
GRAPEVINE
SAKANAMON
LOCAL CONNECT
the shes gone
ビレッジマンズストア
蒼山幸子
kobore × プッシュプルポット × Brown Basket
女王蜂
ザ・シスターズハイ
DOLL PARTS
カナタタケヒロ(LEGO BIG MORL)
GANG PARADE
佐々木亮介(a flood of circle)
大原櫻子
緑黄色社会
ポルカドットスティングレイ
リーガルリリー
浅井健一
サカナクション
Mom
- 2025.07.05
-
Nothing's Carved In Stone
SAKANAMON
鶴
THE ORAL CIGARETTES / ヤングスキニー / 水曜日のカンパネラ ほか
reGretGirl
GLIM SPANKY
チリヌルヲワカ
キュウソネコカミ
ART-SCHOOL
コレサワ
[Alexandros]
フラワーカンパニーズ
shallm
go!go!vanillas
アーバンギャルド
ExWHYZ
FINLANDS
"見放題大阪2025"
GRAPEVINE
片平里菜
HY
SCOOBIE DO
the shes gone
怒髪天
荒谷翔大
the dadadadys
envy
サイダーガール
緑黄色社会
め組
Helsinki Lambda Club
androp
WtB
ASP
Conton Candy
The Slumbers
有村竜太朗
- 2025.07.06
-
PEDRO
Creepy Nuts
UVERworld
鶴
ビッケブランカ
sumika / Novelbright / Omoinotake ほか
荒谷翔大
reGretGirl
[Alexandros]
竹内アンナ
go!go!vanillas
ネクライトーキー
FIVE NEW OLD
DYGL × Newspeak × ANORAK!
片平里菜
PK shampoo
GLIM SPANKY
"見放題名古屋2025"
女王蜂
SCOOBIE DO
怒髪天
チリヌルヲワカ
ART-SCHOOL
Bimi
jizue
クレナズム
halca
HY
SIX LOUNGE
ドレスコーズ
LEGO BIG MORL
有村竜太朗
フラワーカンパニーズ
- 2025.07.07
-
ビレッジマンズストア
NakamuraEmi
浅井健一
- 2025.07.08
-
TENDOUJI
Hump Back
go!go!vanillas
ビレッジマンズストア
the dadadadys
kobore × プッシュプルポット × Brown Basket
銀杏BOYZ
- 2025.07.09
-
SHE'S
いきものがかり
Maki
山内総一郎(フジファブリック)
RELEASE INFO
- 2025.06.25
- 2025.06.27
- 2025.06.28
- 2025.07.02
- 2025.07.03
- 2025.07.04
- 2025.07.05
- 2025.07.06
- 2025.07.07
- 2025.07.08
- 2025.07.09
- 2025.07.11
- 2025.07.13
- 2025.07.15
- 2025.07.16
- 2025.07.20
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
音ノ乃のの
Skream! 2025年06月号