Overseas
PEACE
2013.09.10 @渋谷duo MUSIC EXCHANGE
Writer 山口 智男
初来日となったSUMMER SONICから1ヶ月、早くも実現したバーミンガムの4人組、PEACEの単独来日公演。東京公演1回だけの多分にショーケース的な色合いの濃いライヴではあったものの、UKロックの大型新人と注目されているPEACEがそのポテンシャルを印象づけるには十二分と言えるパフォーマンスだった。
今年4月にデビュー・アルバム『In Love』をリリースしたばかりの新人だけに、さすがにソールドアウトとまでは行かなかったが、開演前の会場はすでにいい感じで埋まっていた。多くの観客が期待とともにステージを見守る中、ライヴはおよそ10分押しでスタート。1曲目はサイケデリックなギターが作り出す混沌の中からやがて心地いいグルーヴと甘美なメロディが流れ出すデビューEPからの「1998」。その「1998」をイントロに往年のマンチェスター・ブームを彷彿させるキラー・チューン「Follow Baby」、トロピカルなギター・フレーズがファンカ・ラティーナなんて言葉も思い出させる「Bloodshake」とつなげ、観客の腰を揺らせると、そこから一転、ぐっとテンポを落としてバラード調の「Float Forever」を演奏したかと思えば、さらにそこからまた一転、パンキッシュな「Lovesick」とアップダウンを繰り返すジェットコースターのように多彩なレパートリーを次々に披露。観客を翻弄しながら、気持ちを鷲掴みにしていった。
観客の視線はどうしてもギターをかき鳴らしながら歌うHarry Koisser(Vo/Gt)に集中しがちだが、サイケデリックかつカラフルなフレーズを奏でるDouglas Castle(Gt)、タイトなプレイに時折、印象的なフレーズを差し込み、ハッとさせるHarryの兄、Samuel Koisser(Ba)、演奏の屋台骨を支えながら美しいハーモニーも重ねるDominic Boyce(Dr)とメンバーそれぞれに手堅いプレイとともにその存在をアピールしていた。
そんな4人の演奏は息切れするどころか、アンセミックな「Toxic」、ファンキーかつディスコティックな「Waste Of Paint」をたたみかけると、さらに熱を帯びていった。
彼らの武器の1つである踊れるビートはライヴでこそ、その威力を発揮するが、逆に「Scumbag」のギターの轟音は、やや迫力不足だったか。もちろん、彼らは轟音で勝負するバンドではないが、ここは思いっきり轟かせてもよかった。ドラマチックな「California Daze」でDominicが重ねたハーモニーからは、いかにもイギリスのバンドらしい繊細さが感じられた。
ライヴはオリエンタルなギター・フレーズとディスコ・ビートが印象的な「Wraith」で幕を閉じた。アンコールなしの全11曲。正味40分ほどの演奏は、現在のバンドの姿を端的に伝えるという意味でちょうどいいサイズだっただろう。自分たちが受けてきた影響を隠さず、90年代のギター・ロック・サウンドを現代に蘇えらせながら、多彩な曲調を甘美なメロディを持った歌に落とし込むというPEACEサウンドの魅力は十二分に伝わったと思う。ただ、もう1曲ぐらい増やして、アンコールに応えていたら観客もより満足できたはず。個人的にはレゲエのビートを取り入れた「Step A Lil Closer」をライヴで聴いてみたかった。
今回の来日公演の後、オーストラリアを回ったその足でPEACEは本格的なアメリカ・ツアーに挑む。できることならば、アメリカ・ツアーの後、もう一度日本に戻ってきて、ツアーを通して成長した姿を見せつけてほしい。その時にはきっとライヴで演奏するレパートリーも増えているにちがいないし、バンドの表現力もよりダイナミックなものになっていることだろう。期待している。
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