Overseas
CLAP YOUR HANDS SAY YEAH
Skream! マガジン 2012年02月号掲載
2012.01.06 @渋谷O-EAST
Writer 伊藤 洋輔
新年初ライヴ、というオーディエンスも多かっただろう。そして“マジカル・ポップの洗礼”なんて表現しても大袈裟ではない至福の時を体感したならば、今年はちょっぴり幸運なことが起きそう……なんて気持ちにリセットが掛けられたかもしれない。CLAP YOUR HANDS SAY YEAHのパフォーマンスには、そんなパワーを感じた。
昨年は春先の来日キャンセルがあり、秋には4年振りの新作である3rdアルバム『Hysterical』のリリースがあった。そうなるといやが上にも期待は膨らむもの。定刻19時をやや過ぎたころ、メンバーはふらっとステージに登場した。MCもなく所定の位置につき、わずかにチューニングを行なってから自然に1曲目「Same Mistake」へ突入していった。飾り気のないバンドのイメージそのままな出だしにちょっと苦笑してしまったが、シンプルながらも、リラックスした印象でサウンドひとつひとつを優しく紡げば、ジワジワと沁み込むような包容力を感じさせ、オーディエンスの温度を徐々に上げていくようだ。このナンバーは80’sエレ・ポップなシンセが気持ち良く走るが、ヴォーカルAlec Ounsworth独自のヨレヨレ&ヘロヘロな声が相性良く絡まり、まるで爽快な風の如く心を刺激する。もうホント簡素な言葉で申し訳ないが、とても心地良いし、とても気持ちいい。タテノリ&モッシュなんてノリではないが、オーディエンスはどこかたゆたうように笑顔で揺れている。新作のオープニング・ナンバーからスタートというのも、4年の不在からカム・バックした新生CLAPの印象も受け、1曲目からちょっと目頭が熱くなったファンもいたかな?続く2曲目は1stアルバムから「Let The Cool Goddess Rust Away」。これまでの来日公演と比較すると、初期の楽曲がまるで別物のように輝いている。こなれているというか、コーラス・ワークの妙味や不協和音スレスレでメロディを活かすギター・ワークなどのバンド・アンサンブルの一体感が飛躍的に伸びているのだ。ライヴ前のインタビューでAlecが語っていたが、“絆が深まった”というのは初期の楽曲で如実に表れている。
3曲目には2ndアルバムから「Satan Said Dance」が。ここではお決まり“Said Dance!”のコール&レスポンスも決まり空間がひとつになる。新作から「Hysterical」~「Ketamine And Ecstasy」の疾走感あるナンバーでほどよく空間を暖めたらお次は、バンドの代表曲と呼べる「In This House On Ice」!キャッチーで繊細なメロディが走ると“氷の家”なんてタイトルはジョークと思えるほど熱く盛り上がり、このナンバーの普遍性の高さをまざまざと証明したのは前半のハイライトだった。メンバー全員、肩肘張らずリラックスした雰囲気でパフォーマンスは続く。まさにそのスタイルあるがままの世界観は、こちらも自ずと吸い込まれてしまう。「Misspent Youth」では優しく繊細なメロディが響き、Alecが儚い声で抱きしめるように歌い上げ涙腺をくすぐり、「Is This Love?」ではカラフルなシンセが躍る軽快なイントロからダイナミックなアンサンブルを繰り広げる。「The Skin Of My Yellow Country Teeth」も同様、壮大なスケール感となるポップ・アンセムとして屹立させ、圧倒的な祝祭感を持って本編は終わった。
アンコールでは新作のラストでもある「Adam's Plane」を披露。終盤につれてアンサンブル・カオスと化すこのナンバーも、パフォーマンスではパワフルでどこまでもエモーショナルで、アルバムとは桁違いの味わい深い叙情感を醸し出した。そして本当のラストは「Heavy Metal」で!ハーモニカにギターに最後まで大活躍のAlecも最後の力を振り絞るように(というか彼の声いつでもそんな感じだが)言葉を吐き出す。バックは鉄壁のアンサンブルで支える。最後の最後まで絆=バンド・アンサンブルの素晴らしさから繰り広げるマジカルなポップを披露し、ライヴは終了した。
アンコール終了後、客電が点いても拍手が鳴り止まない。まだまだ楽しみたい!踊りたい!という気持ちからそうさせているようだが、もしかしたら純粋に“幸せなら手を叩こう~”ってノリかもしれない。本当に至福の時間を体感したからこその、拍手。いやはや、バンド名に偽りなし! 4年の不在からこうして帰ってきたCLAPを想うと、確かな成長、新たな絆、復活、再生……いろんな言葉が頭を過ぎるが、結局意味不明だけど“Say Yeah!”って言葉が浮かびました(笑)。
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