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LIVE REPORT

Overseas

KLAXONS

2011.01.11 @ZEPP TOKYO

Writer 島根 希実

KLAXONSとthe telephonesとPOLYSICS。よくもまぁこれだけハイ・テンションなバンドばかりが揃ったものだと思っていたが、三者三様のテンションと主張が光る異種格闘技戦のような夜だった。

先陣を切ったのはthe telephones。しょっぱなの「A.B.C.DISCO」の、淡い色のミラー・ボールでフロア中を照らし出すようなイントロがダンス・オンリーの夜のはじまりを予感させるも、石毛の「ディスコー!!」の声で目が覚めたようにフロアは一変し、ダンスを飛び越えモッシュ・ピットと化していく。そしてディスコ攻撃は続き「urban disco」。2曲連続のキラー・チューンに沸くフロアの熱さは、なんだか血沸き肉躍っているようにも見えるほどで、この日は“Love&DISCO”ではなく、このままへヴィな方向へシフトしていく全体的に男臭いステージだった。
特にラスト3曲「HABANERO」「Monkey Discooooooo」「I Hate DISCOOOOOOO!!!」の盛り上がりとパフォーマンスは圧巻で、ヘヴィ一色の激太・激アツなものだった。その破壊力は、狂喜乱舞して暴れ狂う、踊り狂うものではなく、フラストレーションをさらに上から踏みつけるような、 単に頭に血が上って興奮しているのとは違う骨太な説得力があった。それは、のっけから彼らの合言葉“ディスコ”を連発していたパフォーマンスや、最後に石毛が言っていた「今日俺らとPOLYSICSを観にきた人はKLAXONSをみてってね。 KLAXONSを観に来た人は、日本には俺たち以外にもかっこいいバンドがいるんで…」という真摯な一言にも、彼らのシリアスは部分が現れていた気がする。そして、真面目に話している石毛の後ろをステージ用の台車をスケート・ボードにして颯爽と走り去っていく岡本…という去り際の画も彼ららしくてよかったです(笑)

続いては、the telephonesのさらに上をいくハイテンションな奴らの出番。ハイテンションのプロ、音でもパフォーマンスでも楽観を極めたバンドPOLYSICSだ。ハヤシが「新年一発目!いくぞZepp TOKYO!!」の挨拶を済ませると「Heavy POLYSICK」で今年のライヴ初め。続く「How are you?」では、メンバー3人、3つのパーツがカチッと組み合わさったような分かりやすさがそのコミカルな曲を際立たせていた。「Young OH! OH!」なんて、“ON”のスイッチしかないいかれたおもちゃのようだったし。そして、そのスイッチはいくらでも押せるのが彼ら、“もっと上げて!”“もっと明るく!”と連打しまくっていく。 「あけましておめでトイス!」とトイスの正月バージョンの挨拶を済ませると、披露されたのはPOLYSICSからのお年玉、新曲の「Let'sダバダバ」。文字通りダバダバを連呼しながらその楽しいメロディでフロアも弾け、そしてとうとう「Digital Coffee」ではハヤシはギターを置き、フロアを縦横無尽に駆け回り出す始末。(いつも通り姿ですけどね。)客席を煽るハヤシのマスコットのようなその動きは、まるで子供番組でも見ているようで、その屈託のなさ故の真っ直ぐなパワーに賛同するように拳が上がっていく画は痛快だった。そうやって煽りながら、楽観の電子音とたたみかえるバンド・サウンドのバランスが絶妙なエネルギーの塊のようなステージはますますヒート・アップし「Coelakanth is Android」で絶頂へ。そこをさらにたたみかけようとでもいうのか、ラストは「BUGGIE TECHINICA」でハヤシとフミがこれでもかというほどにひたすらヘッドバンキングをかまし、ダイバーも大量放出するなかで気持ち良くすかっと終了した。最高の盛り上がりの中でラストKLAXONSへのバトン・タッチとなった。あ、ちなみにトイスはKLAXONSのメンバーにも伝授したそうです。

どこか高貴な響きのSEと細いスポットライトのような照明数本がステージをドラマチックに演出する中、遂にラストを飾るKLAXONSが登場。そして、一斉に歓声が上がるフロアへ、なんといきなりの「Atlantis To Interzone」である。最高のカウンター・パンチをくらったとでもいうように歓喜の声が上がると、早くもフロアはダンス空間へ。そうして1stアルバムから最高のスタート切ると、次は2ndアルバムから。「Flashover」と「The Same Space」はメロディアスなメロディと、JamieとJamesの 声が絡み合う様が美しく、出来上がった空間に更に色が重なったように、またステージに厚みが加わっていく。前作は、“レイヴ”という言葉を用いて形容されたように、フロアを奇襲するように音とメロディを一斉放射していた彼らが、こんな風にどっしりとメロディに腰を据えてライヴしているのが新鮮だった。

そう、セットリストを見ていてもそうだったのだが、全体を通して1stと2ndとで区別をしてプレイしているように思えた。前述した、メロディと声とがしっかりと腰を据え、ディープに描くということもそうであるし、声の響きまで違って聴こえた。フロアの姿勢までもまったく別もので、中盤にプレイされた「Gravity's Rainbow」や「Golden Skans」なんて、初めのワン・フレーズだけで一気に歓声が上がり一斉にフロアが波うっていた。しかし、その直後にプレイされた「Twin Flames」はその流れをくむことはせず、一瞬にして空間を丸ごとリセットして、新しい濃密な世界を構成しなおしていたし。

つまり、彼らはバンドとして大きな変貌を遂げていたというわけなのだが、こういった成長を遂げたKLAXONSというのは、なんだか大人向けのお菓子みたいでした。ウイスキーボンボンみたいな。前作の、無数の色が乱反射するような音とテンションとが振り切れた部分もありながら、より官能的なグルーヴや重厚な激しいバンド・アンサンブルに、紅一点ヒロインのような音を鳴らすキーボードが映える画なんて最高にドラマチックであったし。そんな音の上にさらにヴォーカルが重なるあたりなんては鼻血もんだった。
一歩後ろに下がって全体像をきちんと見て描いているような美しいステージは、彼らの着実な成長を証明していた。

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