Japanese
長瀬有花
Skream! マガジン 2025年07月号掲載
2025.05.30 @渋谷WWW
Writer : サイトウ マサヒロ Photographer:稲垣謙一
5月30日、[長瀬有花 LIVE TOUR 2025 "もふもふツアー"]の初日公演が渋谷WWWにて開催された。
5月23日にリリースされたニュー・アルバム『Mofu Mohu』を引っ提げて、全国4都市を巡るツアー。それは言わば、コンセプト・アルバムと銘打たれながらも明確なストーリーを描かない同作の、答え合わせとなる場所である。リスナーたちは、それぞれの『Mofu Mohu』像を持ち寄ってフロアに詰め掛けた。
会場内が暗転すると、白い衣装に身を包みサンバイザーで目元を隠したバンド・メンバーと長瀬が登場。長瀬がカセットデッキの再生ボタンを押すと、『Mofu Mohu』のオープニング・トラックである「Today's Music」が流れる。どこか遠くでこだまするピアノと雨音が、ライヴハウスを『Mofu Mohu』が生み出された合宿場の空間へと変化させた。
ライヴの前半は、『Mofu Mohu』が曲順通りに再現された。ポップなメロディと幽玄としたアンビエンスを行き来する「スケルトン」では、長瀬が骸骨の模型を手に取り踊らせる。続く「われらスプートニク」では骸骨をランタンに持ち替え、音の霧の中を案内。バンド・サウンドのフィジカルな説得力だけではなく、アイコンとなるアイテムによって視覚的にも楽曲のイメージを具体化し、一人一人の想像を膨らませた。
長瀬が初めて作詞作曲を手掛けたポップな「ワンダフル・VHS」と、センチメンタルな「ノートには鍵」は、それぞれ異なるムードに会場を染め上げ、作家としての高いポテンシャルを改めて実感させる。取り分け、「ワンダフル・VHS」では客席から"VHS"のレスポンスが起こり"V"、"H"、"S"の人文字ポーズを取るオーディエンスも散見される等、早くもライヴ・アンセム的な盛り上がりを見せていた。
『Mofu Mohu』の持つ、"境界の曖昧性(リミナリティ)や超現実主義(シュルレアリスム)といった概念の形象化"というテーマ。長瀬はそのトライアルを、ドリーム・ポップのボヤけた音像、多義性(あるいはナンセンスさ)のある日本語表現、そして棘のない歌声によって軽々と乗り越えていく。曖昧さを表現することで、かえってアーティスト性を明確にしていった。
そんな『Mofu Mohu』セクションもあっという間にクライマックス。清水正太郎(kurayamisaka/Gt)提供のシューゲイズ・ナンバー「hikari」は、WWWの高い天井をも遥か彼方に押し広げ、長瀬の歌声は深く掛かったリバーブを貫通して感情が滲む。雄大なサウンドスケープと"前髪がうっとおしい"というリリックのパーソナルさ、その歪なギャップが不思議と心地よい。複雑な変拍子の「遠くはなれる思考の聞きとり」では、その奔放なアンサンブルを指揮するように指先をはじいた。ヘヴィなリフが繰り出される楽曲中盤、赤い照明を背負い拡声器越しに叫び、内的葛藤を露わに。長い旅路を超えるように展開する楽曲が終わり、大きな拍手が送られた。
ここで初めてのMC。小雨が降っていたライヴ当日の天気について、"『Mofu Mohu』を収録した山中湖の天気と似ていて、そのときのことを思い出していました"と語る。まだまだライヴは序盤を終えたばかり。ここからは、ディスコグラフィを横断した多彩なセットが展開された。
まずはミディアム・テンポのチルな楽曲が続く。TikTok累計1億回再生を誇るヴァイラル・ヒット曲「とろける哲学」では、ここまでほぼ定位置から動かなかった長瀬が、ハルキゲニアのぬいぐるみを持ってステージを左右に行き来し、会場をリラックスさせた。続いて、艶やかなネオ・ソウルから疾走感あるロックへと大胆に切り替わる「アフターユ」。スリリングな演奏を、徐々に力を抜いていくような長瀬のロング・トーンが弛緩させる。
ライヴ中盤はややテンポアップし、「むじゃきなきもち」、「アーティフィシャル・アイデンティティ」、「やがてクラシック」等ダンサブルなナンバーをシームレスに連発。四つ打ちのビートをDJプレイ的にクロスフェードさせ、楽曲が切り替わるとフロアから大きな歓声が起こる。エレクトロ・サウンドやミニマムなアレンジも目立つ長瀬の楽曲が、ここではオーガニックなサウンドに変換されているが、それは『Mofu Mohu』セクションのシューゲイズ〜ドリーム・ポップな音像とは違う味わいを湛えていて、決して飽きが来ない。
「今日とまだバイバイしたくないの」はハイライトの1つだったのではないだろうか。その歌い出しで、誰もがこの特別な時間の終わりが近付いていることを直感する。別れの惜しさはハンドウェーブの力強さへと昇華され、会場を一体感に包んでいく。そのまま拳を上げさせたパワフルなピアノ・ロック「さみしい惑星」の"あしたもどうか会えますように"のフレーズが、優しい余韻を残した。
バンド・メンバーの紹介を挟み"皆さん、最後までついてきてください"と投げ掛けると、いよいよラスト・スパート。目まぐるしくスピードアップする「ほんの感想」でバンド・メンバーは何かから解き放たれたように身を捩るが、ラストにはピアノと長瀬の歌だけが響き、その自在な距離感のコントロールにハッとさせられる。ほぼノンストップで駆け抜けたセットリストのラストは「プラネタリネア」。この日最も歪んだギターがカタルシスを導き、軽やかに飛び跳ねる長瀬と共にフロアもバウンスする。演奏を終え"ありがとうございました、長瀬有花でした!"と締めくくると、フロアからも"ありがとう!"の声が返された。
2次元(デジタル)と3次元(フィジカル)を自在に往来する、"マルチアーティスト"......そんなどこか掴みどころのない存在である長瀬が、むしろその輪郭の心許なさ(すなわち自由さ)によって唯一無二の存在となっていく。そんな過程を目の当たりにした約2時間だった。ツアーを経て彼女の音楽がどのように変化していくのか、楽しみで仕方ない。
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