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LIVE REPORT

Japanese

Amber's

Skream! マガジン 2024年08月号掲載

2024.06.22 @渋谷WWW

Writer : 山口 哲生 Photographer:yohe

暗転した場内に鳴り響いたのは、朝を告げる鳥の囀りと、スマートフォンのアラーム音。それと連動するように、照明が瞬いた。スムースなピアノを基調としたSEには、線路を走る電車の音が混じっていて、女性の声がこの日のライヴ会場のある渋谷に到着したことをアナウンスする。そして、メンバーがステージに登場。彼らに送られる拍手がそのままビートと重なり、徐々に熱気が高まっていくと、豊島こうき(Vo/Gt)がパワフル且つクリアなハイトーン・ヴォイスを轟かせた。6月22日、[Amber's ONEMAN LIVE 2024 "25 hours"]。1曲目は、ライヴ・タイトルにも掲げられている「25時間」だ。

こうきがステージを歩き回りながら伸びやかに歌声を届ければ、福島拓人(Gt/Prog)はギターのネックに巻きつけたスカーフをなびかせながら、サポート・メンバーと共にグルーヴィなプレイを繰り広げる。この日に向けて3ヶ月連続でツーマン・ライヴを行ってきたAmber'sだが、その道中でふたりは"いい時間、いい瞬間、いい景色は俺たちだけじゃ作れない"、"当たり前のような時間や景色をもっと共有していきたい"という思いが、改めてより強くなった、とこの日のMCで話していた。"当たり前のことが当たり前にあることが嬉しい"と、"君"と過ごす日常の尊さを歌った「25時間」は、今この瞬間を共に分かち合おうという思いと、そこから生まれる喜びに満ち溢れていた。

80'sテイストの軽快なサウンドでフロアを揺らした「ジェロニモ」や、こうきの求心力抜群のアカペラから始まった「buddy」、拓人がずっしりとしたリフを轟かせた「FORTE」に、オーディエンスが手を挙げてシンガロングを巻き起こした「1!2!3!」など、どの曲も聴感的にはとてつもなくポップ。それでいて、音は骨太且つ凄まじい躍動感を放っていて、心も身体も激しく高揚させられる。さらにこの日は、7月31日にリリースされるシングル「Unchain×Unchain」も、発売に先駆けて披露された。TVアニメ"黄昏アウトフォーカス"のエンディング・テーマである同曲は、ソリッドで怪しげな響きを持ったリフにダンサブルなビート、途中ではオリエンタルなパートが挟み込まれるなか、そのど真ん中をキャッチーなメロディが貫いていくアッパーチューン。"鎖を全部外して、人間らしく愛し合おう"と、こうきがこの曲について話していたのだが、まさに解放を促すような強烈な熱が漲っていて、Amber'sのライヴにとって欠かせない楽曲に育っていきそうだ。

そんなアッパーな場面だけでなく、こうきがアコースティック・ギターを手に取ったミディアム・ナンバー「例えばの話」も素晴らしかった。こうきと拓人が向かい合い、音を柔らかく重ね合わせたあと、普段は胸の奥底に閉じ込めている、決してきれいなだけではない感情を交えながら、こうきは時に呟き、時に声を強く張り上げて歌う。そんな彼の歌に呼応するように、拓人は身体を大きく揺らしながら、感情剥き出しでギター・ソロを奏でていた。この日のMCで"音楽は怒りとか悲しみとか、楽しいとか、そういう思いが乗ってこそのもの"、"俺らにしかできない音楽をやっていく"と話していたこうきと拓人。そんな彼らの音楽観がひと際強く表れていたエモーショナルな場面だった。

Amber'sは、9月、10月、11月にツーマン・ライヴを、メジャー・デビュー記念日である12月3日にはワンマン・ライヴを、それぞれShibuya eggmanにて開催することを発表。彼らが初ライヴを行った思い出の地であり、メジャー・デビュー・ライヴを行った会場でも、ふたりは今この瞬間を存分に楽しみながら、オーディエンスと音楽を共有していくだろう。本編最後に披露された「エンドロール」は、これからもそんな尊い瞬間を積み上げていく誓いのように響き、眩くて色鮮やかな景色を描き出していた。

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