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LIVE REPORT

Japanese

Rain Drops

Skream! マガジン 2022年05月号掲載

2022.04.16 @KT Zepp Yokohama

Writer 蜂須賀 ちなみ Photo by 石塚 雅人

童田明治の卒業ライヴとなった、Rain Drops 2度目の単独公演。

Rain Dropsは色とりどりの個性を持つ6名のバーチャル・ライバー――そして6名のヴォーカリストによるユニットだ。えるは、温かみと艶を兼ね備えた特別な歌声の持ち主で、ジョー・力一とのユニット曲「ヴィラン」(てにをはカバー)では抜け感のあるバンド・アレンジが彼女のヴォーカルをさらに魅力的にさせた。気さくなキャラクターで知られるが、ライヴでは、彼女を中心として6人がまとまっている印象。Rain Dropsの絶対的支柱といったところか。鈴木勝は無垢な歌声の持ち主で、ソロ曲「ルマ」(かいりきベアカバー)では獣耳&しっぽが生える演出(VTuberならではの演出だ)で観客を楽しませた。しかし、容姿&ダンスのキュートさにどうしても目がいくが、あれだけ全身で踊っているのに歌がブレないのはすごい。緑仙は声を巧みにコントロールできる人で、その持ち味をソロ曲「ラブカ?」(柊キライカバー)で存分に発揮。手首を動かすくらいの自然さで、地声と裏声をひらひらと使い分けていた。五線譜上を自由に行き来する技術があるだけでなく、繊細な感情表現を伴うその歌に胸を打たれた人も多かったことだろう。低音域を担うジョー・力一はダークな雰囲気の「ヴィラン」や「ブギーマン」が抜群に似合っていたのはもちろん、安定した歌唱でグループを支えた。「エンターテイナー」冒頭の英語での前口上などスマートな振る舞いも映える。童田明治の声はとにかくかわいいが、時に驚くほど大人っぽい歌声を聴かせてくれるから油断ならない。そんななか、ソロ曲「きこえ」では、他者にやさしさを向けることのできる彼女の心そのもののような歌を響かせた。VTuber活動における彼女の歩みを連想させる歌詞も相まって、ファンひとりひとりの記憶に刻まれる名場面となった。三枝明那は自身の心の動きに誠実な歌を歌う人物で、特に終盤は、彼のパフォーマンスに触発されて、他メンバーも感情を解放できた側面もあったのではないだろうか。また、夕焼けをバックに歌う「シャロウ」で切ない表情を覗かせた直後、"まだまだぶち上がっていくぞー!"と観客を熱く煽るギャップにも惹きつけられた。

Rain Dropsは多様な個性を持つ6人がのびのび活動できる場所となりつつあるが、全員の声が重なったときに生まれる熱量は凄まじく、そこにユニットである意味を感じる。生バンドと合わさるとその熱量はいっそう増し、いわゆる"ライヴ映え"的な現象が起きている曲も多かった。「ラブカ?」からそのまま緑仙が"他人の不幸は蜜ノ味"と歌い始める(「蜜ノ味」)など、セットリストの妙を感じさせる場面もありつつ、「きこえ」の次に歌われた「Under The Moon」以降――つまり童田との別れが近づくにつれて、歌の中で感情を剥き出しにしていく6人。本編終了後、"終わりたくない! (アンコールの手拍子を)頼むぞお前ら!"(三枝)と観客に伝える斬新さには笑ったが、"終わりたくない"というのが6人の本音だったのだろう。この6人で最後に歌った曲は「エンターテイナー」。Rain Dropsのテーマというべき曲を楽しく歌い上げ、泣き笑いの温度感でフィナーレを迎えたのだった。

ジョー・力一が言っていたように、"童田明治という偉大な存在をどう見送って進んでいくか"という課題は残るが、雨上がりの空に虹を架けるようなドラマをRain Dropsならば巻き起こせるはずだ。"6人のRain Dropsは最高だった"という記憶とともに、これからの活動にも期待したい。別々の道を歩むことになっても、その手には同じ傘が握られているはずだから。


[Setlist]
1. 明日は日曜日
2. Butterflies
3. TAKE OFF
4. トンデモワンダーズ
5. 僕らの月は多角形
6. シャロウ
7. シグナル
8. ラブヘイト
9. ルマ
10. ブギーマン
11. ラブカ?
12. 蜜ノ味
13. 魅惑の華
14. きこえ
15. Under The Moon
16. formula
17. オントロジー
En1. VOLTAGE
En2. ヴィラン
En3. セルフィーDimension
En4. エンターテイナー

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