Japanese
YENMA
Skream! マガジン 2021年05月号掲載
2021.04.18 @渋谷WWW
Writer 稲垣 遥 Photo by SABURO YONEYAMA, NANAMI
昨夏にCharlesからYENMAへとバンド名を改名。男女混声4人組となり、秋には1stアルバム『Piñata』をリリースした彼らが、2021年4月18日、初のワンマン・ライヴを渋谷WWWで開催した。
白く"YENMA"と光るボードが上手のキーボードの足もとに立てかけてあるステージに、山本武尊(Dr/Cho)、深澤希実(Key/Vo)、渡邉麻美子(Ba/Cho)、池田 光(Vo/Gt)がひとりずつ登場。Charles時代の楽曲「ジェームズ」を一歩一歩踏みしめるように大事に鳴らし、ショーの幕を開けた。"YENMAです。1stワンマン、よろしくお願いします"と池田がひと言挟み、男女ツイン・ヴォーカルの醍醐味をありありと味わえるムーディな1曲「Blue Monday」へ。意外にもおしゃまなスタートにやや驚きはあったが、CharlesからYENMAへと進むその道のりが地続きであること、そして、4人になり進化した様を示したいという想いを感じさせた。「Blue Monday」では池田、深澤の男女の想いを乗せた歌声だけではなく、さらに渡邉のコーラスが重なったパートや、ミドル・テンポで歯切れの良い山本のドラムも相まって、4人で大人な世界観を一気に醸成する。
"WWWってみんなの顔めっちゃ見えるんです"と嬉しそうにフロアを見わたす深澤。昨年12月にSAKANAMONを招きアルバムのレコ発ライヴを行ったのもWWWだったが、今回はワンマンなぶん、また特別な想いを感じていたのかもしれない。一方池田は、このコロナ禍で、"エンタメの火を絶対に絶やしちゃいけないって思った"と今まで以上に音楽への熱意を燃やしていることを明らかにする。そんな逆境をプラスに変えてやれ、どんなにデカい壁もよじ登って羽ばたいてやろう、という気持ちで書いたライヴ初披露の1曲「TENKI」からは、ポップでキャッチーなYENMAを表出。続く「平成ラストサマー」では手拍子も沸いた。跳ねるリズムから、ぐっとテンポを落とすパートがあったり、「茜色のワンピース」では歌謡曲のテイストが軸にありながら、ボサノヴァのテイストをところどころで取り入れたり、異次元に連れていくようなエレピ・ソロを急に挟んだりといった展開の妙も、4人になり自由になったこのバンドの面白さだ。
MCでは、5人目のメンバーだという、アルバムのアートワークと同じカラーリングのキャラクター"ピニャータくん"がゆるっと登場し、メンバーの会話に参加するひと幕もありつつ(ちなみにこの日は"ピニャータくん"を名乗る存在からのお祝いのお花が届いており、メンバーも驚いていた)、話題は時々行っている路上ライヴの話に。そこではカバーをするのが定番とのことで、Twitterでの事前投票の結果、一番リクエストが多かったスピッツの「チェリー」を演奏。これまでライヴハウスでカバー曲を披露したことはないそうだが、どっしりとしたリズム隊のアプローチが印象的で、貪欲に自分たちの色を入れていこうとする気概を見せた。
"想像を超えてやれ"、"未来予想図を/壊して作り変える"というバンドの前のめりな決意が滲む「Cavalry」では、四つ打ちの疾走感で盛り上げつつ、ベース・リフからなだれ込むインタールード、カオティックなキーボードでさらに観る者を惹き込む。それが決まった手応えもあったのか、4人がいい笑顔で見つめ合う姿も見られた。
中学生の池田が音楽を始めた頃の、憧れのギターへの想いを歌った「リッケンバッカー・マーマニー」からは、バンド初の夏ソングである新曲「炎天下のサイダー」へ。強気になったり弱気になったり勢い任せの甘酸っぱい恋心が、1曲の中で変化するサウンドと絡み展開されるナンバーで、彼らの新たな代表曲になりそうだった。そして、ジャーンと鳴らしたギターのストロークのペースを上げていく形で「シャンデリア」に突入。一斉に観客の手が上がり、"ぐるぐるぐるぐるぐるぐる/ぐるぐるグルーヴ"のところではタオルを回してハッピーなムードに満ち溢れる。そんなオーディエンスに池田は"YENMAはまだまだ発展途上のバンドだけど、これから大きくなっていく、エンタメの一角を担うバンドになりますので、よろしくお願いします!"と宣言。本編最後は「あなたに花束を」で締めくくった。
アンコールの拍手に応えて再びステージに出てきたのは山本。ひとりでセンター前方に立ち、ギターを持つ姿に少しざわつきが起こると他のメンバーも順に表れ、渡邉がキーボードの位置に、深澤がベースの前に、池田がドラム・スローンに腰掛けてパート・チェンジで「シャンデリア」を届けるサプライズ! メンバー自身のドキドキも伝わるようなスタートだったが、始まってしまえば"楽しい!"という気持ちが前面に出たパフォーマンスに、観ているこちらまで笑顔にさせられてしまった。
ここで、先ほどお披露目した「炎天下のサイダー」の今夏リリースを発表し、さらにもう1曲、新曲を投下。最新曲で2021年のYENMAへの期待感を高めた池田は、"これから先のYENMAを見ていてほしい"と言い、彼が初めて作ったオリジナル曲「さよなら」でこの夜を終えた。好奇心を音や演出に詰め込み、今この瞬間を堪能しながら、自分たちが進む道を見据え、自身の鳴らす音楽への使命感のようなものをも滲ませた彼ら。この初めてのワンマンで得た感触もしっかり糧にして突き進んでいくのだろうと、4人を頼もしく感じたステージだった。
[Setlist]
1. ジェームズ
2. Blue Monday
3. TENKI
4. 平成ラストサマー
5. 茜色のワンピース
6. チェリー/スピッツ
7. Cavalry
8. 西へ行こうよ9. リッケンバッカー・マーマニー
10. 炎天下のサイダー
11. シャンデリア
12. あなたに花束を
En1. シャンデリア(パート・チェンジ)
En2. 新曲
En3. さよなら
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