Japanese
Maki
Skream! マガジン 2020年11月号掲載
2020.10.17 @渋谷TSUTAYA O-WEST
Writer 三木 あゆみ Photo by Akira"TERU"Sugihara
2020年10月17日、Makiが1stフル・アルバム『RINNE』を引っ提げた全国ツアーをスタートさせた。来年2月まで、全45公演が予定されているこのツアー。山本 響(Ba/Vo)はMCで"感慨深いな。ツアーが始まるよ。いつもとは少し違うけど"と話していた。お客さんがフロアにぎゅっと詰まったり、ステージに向かって大きな歓声を上げたり、熱気も湿度も高めなあの空間は、もうしばらくの間はおあずけかもしれない。だけど、彼らの音楽の本質は変わらずに、ライヴハウスという場所で確かに鳴っていた。
この日のゲストはMr.ふぉるて。有観客のライヴは半年以上ぶりだという彼らは、キラーチューン「口癖」でライヴをスタートさせ、開幕から人々を一気に惹きつけていく。ソーシャル・ディスタンスが取られた、以前とは違う景色に手探りでぶつかっていきながらも、観客の前で歌えることに対して"めっちゃ嬉しいです"と稲生 司(Vo/Gt)が喜びの表情を見せ、改めてツアーに呼んでくれたMakiとライヴハウスに感謝を伝えた。しっとりと包み込むようなギターからどこか懐かしさも感じられる「さみしいよるのうた」、"全てのクズな大人たちに/愛を込めて中指を"と皮肉を込める「さよならPeace」など、青少年の等身大の心を映し出す曲たちで、彼らにしか鳴らせない音を鳴らす。ステージ全体がパッと明るい光に包まれた「あの頃のラヴソングは捨てて」、今の状況下で言葉がより心に刺さる「救いようのない世界で」にグッと感情を乗せ、しっかりと歌を届けてMakiにバトンを繋いだ。
SEの「Around The World」(MONKEY MAJIK)が鳴るなか、この日の主役 Makiが登場。円陣を組んだあと、それぞれの位置につき、1曲目に披露されたのは最新作の表題曲「RINNE」だ。力いっぱいに鳴らされたバンド・サウンドがフロア全体に響き渡る。久しぶりに体感したライヴハウスでの爆音を全身で受けて、身体の底から熱が湧き上がってくるのがわかった。そして、"ここはライヴハウスだ!"という山本の叫びを皮切りに「フタリ」へ。アルバムの中でも繋がりがあるこの2曲が続くところにも胸が熱くなる。メンバー全員のシンガロングに自然と手が挙がった「虎」、"もう終わりさ 朝は来る"という一節に希望の光が見えた「エバーグリーン」などが演奏された前半戦。爽快でエモーショナルな佳大のギター、骨太でパンチが効いたまっちのドラム、聴き手の感情に訴え掛けるような山本の歌声が合わさったバンドの音は、大きなエネルギーとなって客席にまっすぐ飛んでくる。
ゆるいMCを挟みつつ、"でも音楽はガチガチなんで、よろしくお願いします"と山本が言った途端、間髪入れずに「五月雨」に突入。嬉しい不意打ちを食らった観客は、思わず前のめりになり手を挙げる。そこから、ショート・チューン「ユース」、「斜陽」と息をつかせる間も与えずに畳み掛け、さらに"もう1回行きます"と2回目の「斜陽」を投下。そして、迷いや葛藤を抱えながらも"生きる"と力強く歌い上げる「銀河鉄道」まで一気に駆け抜けていく、この怒濤のパートには痺れた。そこにスッと差し込まれたバラード「三角公園」。言葉のひとつひとつをゆっくりと丁寧に届けるような山本の歌の表情も印象的だった。
山本は"今もライヴができないバンドがたくさんいるなかで、僕らは幸せなことに現状たくさんライヴをやらせてもらっていて。別にバンド界のすべてを背負ってステージに立つとかじゃなくて、僕らは今できることを今やってます"と話し、今、ライヴをすることへのリスクも背負ってここに立っているということ、そして来てくれた観客へ感謝を述べる。その言葉のあとに演奏された「ストレンジ」、「憧憬へ」を聴いて、彼らも"今"と戦っていること、確固たる意志を持って音を鳴らしていることを改めて感じさせられた。"正直、ここに立つまで今からやることは正しいことなのかとか考えた。でも、お前らの顔を見て思い出すことがあった。もう考えるのはやめるよ"、"今まで俺たちの光になってくれてありがとう。たしかにこれから見るライヴハウスは今までとは違うかもしれないけど、ここに立っている俺たちが光になれるようにやってやるよ!"と山本が強く叫び、「平凡の愛し方」へ。続けざまに鳴らされた「シモツキ」では"取り返すんじゃない。もっといいものを見に行こうぜ"(山本)と先へと向かう決意を表明し、ラストは「こころ」ですべてを出し切り、"また必ず、ライヴハウスで会いましょう"と再会を誓って、ツアー初日を締めくくった。
この日何度も"ライヴハウス"という言葉を耳にした。バンドはライヴハウスで生きているということ、これまでこの場所で多くの感動が生まれてきたこと、忘れかけていた感覚や記憶が頭の中に一気に押し寄せてくるような、そんなライヴだった。
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