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LIVE REPORT

Japanese

Maki

Skream! マガジン 2021年09月号掲載

2021.08.10 @Zepp DiverCity(TOKYO)

Writer 三木 あゆみ Photo by takeshi yao

7月にバンドの"第2章"幕開けを謳う1st EP『creep』をリリースしたMakiが、同作を引っ提げて約40公演に及ぶツアー"Maki 1st E.P「creep」Release Tour「人和」"を開催。その初日公演がZepp DiverCity(TOKYO)で行われた。彼らがこの場所に立つのはこの日が初めてだ。ツアー初日、気合は十分。でも気負わず、どこであろうとやることは変わらない。どんな状況であろうと、音楽やライヴハウスを信じる気持ちは変わらない。そんなライヴ・バンド、Makiの真価を見せつけた一夜だった。

この日は、岐阜発3ピース・バンド KUZIRAがゲストとして出演。小さなライヴハウスで出会い、ジャンルは違えど共にライヴ・バンドとして走り続けてきた両者が、Zepp DiverCity(TOKYO)という多くのバンドの目標のひとつになるような規模の会場で対バンを行ったことは、メンバーたちにとっても感慨深いものがあっただろう。

開演時刻となり、まずKUZIRAが登場。末武竜之介(Vo/Gt)がゆっくりと息を吸い「The Weak」を歌い出すと、たちまちフロアから拳が上がる。爽快感のあるグッド・メロディを聴かせ、続く「In The Deep」からはスピードを上げて色とりどりな楽曲で畳み掛けていく。そして末武が昨年、コロナ禍でも止まらずに多数のライヴを行ってきたMakiへのリスペクトを伝え、"Makiと出会ったころにたくさんやってた曲"と紹介し「Detour」へ。観客はジャンプし、躍り、手を上げ、感染対策のため大きな声は出せずとも自由に音楽を楽しんでいたのが印象的だった。内からエネルギーを放出させるようなヘヴィなサウンドから、スカ・ダンス必至のナンバー、痛快なコーラスがたまらない楽曲まで、様々に聴かせていく3人。末武は、制限やジャンル関係なく音楽を楽しむことが大事だと話し、"もっとメロディック・パンクを日本で流行らせたい"と自身の目標を語る。その本音に自然と拍手が送られた。ラストはグッと感情の乗った「Spin」を経て、ショート・チューン「Muggy」で駆け抜けていき、リスナーの心をがっしり掴んでステージを去っていった。

いよいよMakiのライヴが始まる。山本 響(Ba/Vo)が"俺たちが音を鳴らせばそこはライヴハウス。from Party'z Maki始めます!"と放ち、最新EPの1曲目でもある「Soon」で幕を開けた。続く「シモツキ」では、サビでほぼ全員の手が上がり、すでにクライマックスかと思うほどの高揚感が会場に溢れる。なお、"いつか"という言葉を何度も踏みしめるように紡ぐ「Soon」から、「シモツキ」の曲中で山本が"誰かが言う。ライヴハウスはいつかもとに戻るって。そのいつかっていつだよ!"と叫び、"そのいつかを手元に手繰り寄せて、俺らツアーまわるんで、よろしくお願いします"と宣言したシーンには痺れた。

「秋、香る」や「ユース」など4曲を怒濤の勢いで畳み掛けたあとMCへ。山本は"やべぇ、テンション上がってるわ"と漏らし、ツアーがまた始まることをすごく楽しみにしていたと話す。そして"今、活動してないバンドやいなくなっちまったバンドとかもいるかもしれないけど、そいつらが後悔するくらいの活動を残していきたい。そういうツアーにしようと思います"とツアーについての意志を語った。コロナ禍の中でスタートした前回のツアー"Maki 1st Full Album RINNE Release Tour「大四喜」"を経て感じたことが、多く反映されているEP『creep』。そのEPを引っ提げ、様々な想いを持って新たなツアーを、初めて立つZepp DiverCityからスタートさせる。その気概がこの日のライヴには表れていたような気がする。そのためか、この日のセットリストや曲の繋ぎ方、山本、佳大(Gt)、まっち(Dr)の3人の信頼関係が窺える演奏、そして山本が伝える言葉のひとつひとつ、すべてがドラマチックに感じられた。それは、Zepp規模の会場でツアー初日ができるようになったからすごいとか、そういうドラマではなく(もちろんそれも素晴らしいことだけれど)、バンドの変わらない芯をしっかりと提示したからこそ、生み出されたものだと思う。

ノスタルジックな景色を描く「fall」からスタートした後半戦。沈んだ心の内を綴った「落日」から、"そしてまた朝日は昇る"(山本)と言い力強く歌われた「朝焼け」へ続く流れも良かった。繊細且つ鮮やかに情景を描く佳大によるギター、テクニックとパワーを兼ね揃えたまっちによる絶対的なドラム、聴き手の感情を揺さぶる山本の歌。ライヴが終盤に近づくにつれて、さらにエモーショナルさを増していく展開に目が離せない。"このツアーは保証のない未来を確証のある未来に変えるためのツアー"。そう山本が伝えると「平凡の愛し方」が始まり、その想いを受け取った観客が一斉に拳を上げる。その熱量を受けて胸がいっぱいになるなか、ラストに届けられたのは「from」。3人が力いっぱいに歌った"変わらないこの日々を僕はずっと望んでた/飾らないこの場所が僕はずっと好きだった"という最後の一節は、今後続いていくツアーでも変わらない想いで歌われていくのだろう。アンコールはなし、全15曲を届けたMaki。山本は"from Party'z Maki、これからツアー行ってきます。またライヴハウスで会いましょう"と告げ、ツアー初日 Zepp DiverCity公演の幕を閉じた。

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