
Japanese
Sunrise In My Attache Case
Skream! マガジン 2018年04月号掲載

2018.03.23 @渋谷TSUTAYA O-Crest
Writer 石角 友香
オーガニックなグルーヴのサーフ・ロックも、USインディー・ポップに近い感性も、スケールの大きなルーツ・ロックも自然と消化し、地元奈良を拠点にマイペースな活動を展開してきたSunrise In My Attache Case(以下:Sunrise)。長く聴ける音楽を作ることが信条という彼ららしいスタンスを続けてきたが、昨年11月にフル・アルバム『Sunrise to Sunset』をリリースして以降は、精力的にイベントやフェスにも出演。その音楽性に注目が集まるなか、アルバム・ツアー18本目にしてファイナルとなる東京公演を観た。
各地でSPiCYSOLやThe Winking Owlなど、ベクトルの違う音楽性のゲストを迎えてきたが、東京公演にはステージ巧者のI Don't Like Mondays.が登場。Bruno Marsなど、現行の世界的なトレンドに紐づくファンキーで洒脱な演奏を渋谷TSUTAYA O-Crestのキャパシティで楽しめるとあって、フロアは横ノリとハンドクラップ、シンガロングの渦が一気に巻き起こり、華やかなムードに包まれた。"あなたたちには楽しむ権利がある、今日も明日もその先も!"と、悠(Vo)がキザに決め台詞を発することで、ムードはさらに最高潮へ。同時にSunriseへいい意味のプレッシャーをかけている感じも、ゲストの愛情だ。
すっかりフロアがオープン・マインドになったところへ、サウンド・チェックの延長の形で登場したSunriseのスタイルは、すごくナチュラルだった。ただ、オレンジのバック・ライトがフロアに向けて灯るスタートは、アルバム・ツアーのストーリー性を気持ち良く演出してくれる。Kazuya(Vo/Gt)が歌い始めたのは、アルバム同様オープニング・チューンの「Life」。チアフルなメロディに乗り、自然に身体が動く。cubs(Ba)と和希(Gt)のコーラスも効いている。生で聴くKazuyaの声の伸びやかさは、時代やジャンルを超えて気持ちを掴むある種の誠実さを持っていて、そのことがバンドの心臓なのだと実感した。桜が開花し始めたこの季節にしっくりくるイントロでメンバーもフロアも笑顔になる「Higher」の開放感もたまらない。また、メンバーの背景の違いは岡P(Dr)のやけに高いシンバルの位置やら、シンプルなドラミングでありつつ、案外ハード・ヒッターだったりする部分に面白みを見たりもする。日本語詞の平歌部分に共感が広がる「When I Was Young」、2015年のアルバム『The Winding Road』収録で、踏みしめるようなBPMでプリミティヴなニュアンスのある「No Script of Life」では、ヴォーカルとキック&スネアだけでハンドクラップをフロアに求める部分もあり、それを成立させるKazuyaの声の力と、バンドの前向きで誰にでもオープンなアティテュードが証明されるような場面も。明らかに様子見だった男性や後方のオーディエンスもクラップしたり、身体を揺らしたりしている。演奏で場のムードが刻々と変わっていくこの感覚。この開放感はもちろん、彼らの音楽性によるところがもっとも大きいけれど、メンバー全員の笑顔の力も大きい。きっと彼らもフロアを見て自然と笑顔になっているんだろう。そのヴァイブス交換が素晴らしい。終盤は波の音のSEに乗せて、Kazuyaが"自分たちは気負わず、思わず海に行きたくなるような音楽が好きで作っている"とバンドの本質を話し、アルバム・インタビューよりよほど真意が伝わるなぁなどとちょっと苦笑しながらも、それはこのツアーを経てきたことにより説得力が増したからなのだろうと思った。コーラス・ワークに日本人離れしたフックのある「Cloud and Bird」、ラストには普遍的でスケールの大きな「The Wall」をセット。清々しく広がりのあるKazuyaの声に素直にフロアが共振。それはとても美しい光景であり、彼らの可能性そのものだった。
[Setlist]
1. Life
2. Higher
3. The Winding Road
4. I Won't Let It Go
5. When I Was Young
6. No Script of Life
7. Broken Highway
8. Turn Up the Radio
9. Cloud and Bird
10. Heart Beat
11. The Wall
en. Holiday
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