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LIVE REPORT

Japanese

amenoto

Skream! マガジン 2014年07月号掲載

2014.06.15 @新宿Motion

Writer 齋藤 日穂


4月23日にミニ・アルバム『すべて、憂鬱な夜のために』をリリースしたamenotoのリリース・パーティーが新宿Motionにて行われた。

トップバッターは3ピース・ガールズ・バンド"硝子越しの暴走"。3人で鳴らしているとは思えないエネルギッシュなパフォーマンスで幕を開けた。今年の1月にリリースした1stフル・アルバム『musiQua』より「musiQua」、「もしもボックス」と、立て続けに演奏していく。抱えきれない想いを音に託すようにダイナミックで、強かにステージに立つ彼女たちは、これからの時代を闘っていくのに申し分のない戦闘力を備えている。思わず前のめりになってしまうようなスピード感とパワーを兼ね備えた、彼女たちの今が最大限に発揮された圧巻のステージだった。

続いて登場したのは、こちらも3ピース・ガールズ・バンドの魅起法則。名は体を表すという言葉の通り、キュートな彼女たちから鳴らされる音は強烈な個性を放つ。ただのオルタナという枠にはまらず、情念渦巻く自分たちの世界観を自由に表現しているパフォーマンスに飲み込まれていく。今年2月に浅井健一が主宰するSEXY STONES RECORDSの新レーベル、FICK FILLYからリリースした1stアルバム『is escape』に収録されている「SOKUBAKU」が始まるとオーディエンスは拳を突き上げ応戦。エッジの効いた演奏で会場に熱を蔓延させた。

一方、ドビュッシーの「月の光」をSEに厳かな雰囲気で始まった、本日唯一の男性バンドabout tess。ツイン・ドラム、ツイン・ベース、ツイン・ギターという特異な6人編成のインスト・バンドから生み出されるグルーヴは、無駄ひとつない轟音の賜物だ。オフィシャル・サイトに自分たちのライヴのことを"<観る><聴く>というよりは<体感する>するもの"と紹介していたが、まさにその通り。体の芯まで音が響いて、彼らの演奏と共に気持ちが高揚してしまう。圧倒的なテクニックを情熱的に魅せ付けられて、まるで音でガツンと殴られたみたいにくらくらしてしまった。

そして本日のリリース・パーティーの主役、amenotoが登場。4月にリリースしたデビュー・ミニ・アルバム『すべて、憂鬱な夜のために』よりリード曲「ハロー」で高らかにスタートした。歌うことでしか消化されない寂しさ、悲しみ、降り積もる不安を音に託すように彼女は凛とステージに立っていた。その姿はまるで雪原の中で歌うかのように冷たく、美しい。UKロックやシューゲイザーを感じさせるディストーションの効いたサウンドと、ガラス細工でできたかのような彼女の儚く切ない歌声が絶妙に重なり合い、ライヴハウスを越えてどこまでも高く遠くまで響いていくようだ。ライヴ中盤では1st EPより「ゲシュタルト崩壊」も披露。彼女はインタビューで"悲しかったことを忘れたくない。なかったことにしたくない"と話していた。社会から取り残されてしまった孤独な痛みや悲しみを彼女が丁寧に拾ってくれることで、不器用にしか生きることのできない人がどれだけ救われることだろう。生きていることを証明するように必死に音を刻み込む姿は、つかめばどろりと溶けてしまいそうな危うさすら感じさせる。ミニ・アルバム収録曲「凡庸に回す」、「ぼくは、ぼくら。」と続き、激しいイントロが印象的な「ハーモニー」が鳴り響く。そこから一転して歌われるメロディは美しく、白黒の世界に色をつけていくような鮮やかな曲だ。ネガティヴな感情を音に乗せることによって、孤独だった感情にまるで少しだけ光が差し込むよう。それは安心感のような温もりだ。彼女にしか歌えない歌で、不安定な毎日をどこまでも照らしてほしいと切に思った。慟哭のような「仲間はずれ」を感情をぶつけるように演奏し、本編は終了した。MCは少ないが、感情を込めた音を全力で鳴らす彼女の想いは、会場にいたオーディエンスに隅々まで鮮烈な印象を与えたことだろう。そしてアンコールの「雨を待つ」を聴いて、"雨が降る夜はすぐに眠れる"という話をふと思い出した。雨の音にはヒーリング効果があって、安眠効果があるのだ。安らぎを求めたくなる夜、真っ先に思い出すのは彼女の曲だろうな、と考えながら余韻を噛み締めて梅雨晴れの下を歩き出した。

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