Overseas
THE STRYPES
2013.10.08 @LIQUIDROOM ebisu
Writer 山口 智男
正直、デビューしてきた時は割と冷ややかに見ていたのだけれど、9月11日にリリースしたデビュー・アルバム『Snapshot』を聴き、すっかりヤラれてしまった。素直にかっこいいと思った。次々と繰り出す直球一本槍とも言えるエネルギッシュなロックンロールの数々を聴きながらニヤニヤと笑いが止まらなかった。誰それが惚れこんでいるとか、ライヴに足を運んだとか、有名人のお墨付きなんてどうでもいい。久々にハイプやギミックとは無縁の骨のあるロックンロール・バンドに出会えたことが何よりもうれしかった。
音楽的には60年代前半のブリティッシュ・ビートの熱気を現代に蘇らせると言うべきなんだろうけど、個人的には新しいパンク・ロック――メロコア以降のパンクに対するという意味で――なんだと思っている。イギリスの音楽紙、NMEに載っていたという発言が振るっている。
"僕たちはX Factorや作られたポップ・ミュージックの撲滅運動に参加するよ。だってあんなのクソの積み重ねじゃないか。本物じゃないよ。ただ有名になりたい人たちがやってるだけ。音楽への渇望感なんてないんだ。ただお金のためってだけ"
THE STRYPES。ワーキング・クラスの人たちが多く住むというアイルランド北部の町、キャラヴァンから世界に飛び出してきた4人組。メンバーの年齢は15歳~17歳! もっとも、早熟な連中はどこにでもいるからそれほど驚くようなことではないかもしれない。ともあれ、今年4月の初来日公演は見逃したので、今回は絶対、見逃せないと思い、ジャパン・ツアー初日のLIQUIDROOM公演に出かけた。因みに、東京2公演を含む、全国5公演はすべてソールド・アウト。急遽、東京公演がもう1公演追加された。
関係者席を取っ払って、目一杯入れた観客の年齢層はメンバーよりもちょっと年上の若者たちばかりかと思いきや、思っていた以上に幅広い。僕が言うのもなんだが、おじちゃん、おばちゃんの姿も少なくなかった。それは大型新人に寄せる期待の大きさの表れなのか、それとも日本におけるブリティッシュ・ビートの根強い人気の表れなのか。
ライヴはデビュー・アルバム同様に「Mystery Man」でスタート。オリジナルと60年代のビート・バンドが好んで取り上げたブルース/R&Bのカヴァーを織り交ぜ、演奏する姿からはガキっぽさはこれっぽっちも感じられない。スロー・ブルースの「Angel Eyes」なんかは正直、もうちょっと深い味わいが欲しかったが、ドサ回りで鍛えたという演奏はタイトの一言。だからって、お行儀がいいわけではない。Johnny Thundersがメタルを齧ったようなフレーズを閃かせるギターと、図太い音色でうねるベースからはブリティッシュ・ビートの枠に収まりきらない向こう意気がビンビンと感じられた。
メンバーたちはカヴァーを演奏することにも意義を感じているようだが、「What A Shame」「Blue Collar Jane」といった新しいパンク・サウンドを印象づけるオリジナル・ナンバーのほうが、カヴァーよりも断然かっこいい。デビュー・アルバムだってオリジナルだけでよかったんじゃないか?! そんなことを思いながら、ラストスパートをかけるように「You Can't Judge A Book」「C.C. Rider」といったビート・ロック・ファンならで誰でも知っている有名曲のカヴァーをたたみかけ、最高のクライマックスを作り上げた終盤の流れにはすっかり気持ちを持っていかれてしまった。
楽器を持ち替え、ベーシストのPete O'Hanlonが見事なブルース・ハープを披露した「Going Up The Country」「Got Love If You Want It」もなかなかの見ものだった。そして、アンコールでは「Little Queenie」「Route 66」(セットリストでは「Route 666」と表記! ワオ!)というちょっと、いや、かなりズルい選曲のカヴァーをお見舞いして、満員の観客をダメ押しで狂喜させた。イマドキなのか、ふてぶてしいのか。いずれにせよ、自分たちのルーツに対する誇りと愛情、そしてそれをストレートに表現して何がいけない?!という気概が感じられる熱演が痛快かつ爽快だったのだ。
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