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Japanese

イトヲカシ

Skream! マガジン 2017年09月号掲載

イトヲカシ

Official Site

2017.07.16 @Zepp Tokyo

山口 智男

"リリースを待ってなんていられない。1日でも早くこの曲たちを届けたい"――そんな想いが強すぎたのか、1stフル・アルバム『中央突破』のタイトルを冠しながら、『中央突破』リリースの約2ヶ月前にはもうスタートさせていた"second one-man tour 2017 「中央突破」"がこの日、彼らのホームである東京でツアー・ファイナルを迎えた。前述した理由から、全16公演中、ツアー・ファイナルを含む終盤の3公演以外はリリース前の新曲も何曲か初披露することになってしまった今回のツアー。しかし、"全年齢を対象に曲を作っている。10歳の子が聴いても、そして、その子が70歳になっても良いと思える曲を作っていきたい"と、この日、伊東歌詞太郎(Vo)が語っていたように何よりも歌を大事にしてきたイトヲカシだから、たとえ、その日初めて披露した新曲だろうと、歌の力で観客の気持ちをしっかりと掴んできたに違いない。

この日のライヴを観ながら、筆者はそんなことを確信することができた。なぜ、そんなふうに思えたかというと、昨年9月にメジャー・デビューしてからの曲しか聴いたことがない筆者自身が、この日、初めて聴いたメジャー・デビュー以前の曲の数々に気持ちを鷲掴みにされたからだ。その意味では、伊東と宮田"レフティ"リョウ(Ba/Gt/Key)のふたりに4人のサポート・メンバー(ドラム、ギター&キーボード、ギター、キーボード)を加えたバンド編成によるダイナミックなライヴではあったけれど、イトヲカシがこの日、改めてアピールしたのは、ふたりで作る歌の力だった。

伸びやかなヴォーカルの魅力をたっぷりと味わわせながら、ここまで歌声が前に出ていると気持ちいいと1曲目から思わせた「スタートライン」から2時間にわたって、彼らは『中央突破』の曲と路上ライヴ時代から大事にしてきた曲を半々ずつ披露した。『中央突破』を引っ提げてのライヴだからって、それだけに偏らないところに自分たちが作ってきた曲に対する愛着や、それを自分たち以上に大事に思っているファンに対するふたりの気持ちが窺えた。さらに彼らは、ファイナルに相応しいサプライズ――と言ったら、"ファイナルだけが特別なわけじゃない。全16公演全部が特別だった"と語った伊東の思うところとは違ってきてしまうから、こんなふうに言い直そう。アルバムのリリース後でも新しい曲を聴かせて、みんなをびっくりさせたかったんだろう。"本邦初公開"と言って、「アイスクリーム」と「アイオライト」という新曲を、それぞれ序盤とアンコールで初披露。テレビ東京 木ドラ25"さぼリーマン甘太朗"のエンディング・テーマである前者は、四つ打ちのキックとファンキーなギターのカッティングが印象的な、どこか80sっぽいダンス・ポップ・ナンバー。宮田が重ねるファルセットのコーラスも聴きどころだった。一方、映画"氷菓"の主題歌である後者は、ガツンと来るギター・リフに負けない力強い歌を、伊東が聴かせるロック・ナンバー。ダメ押しで客席を盛り上げた。

もちろん、見どころはそれだけに止まらない。歌の力と言えば、やはり切ない気持ちを切々と歌い上げたピアノ・バラードの「あなたが好き」と伊東によるアコースティック・ギターの弾き語りにバンドが寄り添うように演奏を重ねた「ヒトリノセカイ」というじっくり聴かせた2曲に尽きるか。特に言葉にできない気持ちを、あまりにもエモーショナルな"あぁ"のリフレインで表現した後者のサビは圧倒的のひと言。その2曲を、手拍子することも忘れ、観客が身じろぎもせず、じっと聴き入っている光景も印象的だった。

それとは逆に、"みんなで拳を挙げろ!"と呼び掛けたアップテンポのポップ・ナンバー「ドンマイ!!」では、曲間に伊東と宮田が自分に"ドンマイ!!"と声を掛けたくなった経験を、小話風に語ったドンマイ・トークやコール&レスポンスを交えたり、"タオルを回せ。タオルを持っていない人は拳でも何でもいいから回せ!"と煽ったシンガロング必至のダンス・アンセム「SUMMER LOVER」では、観客がライヴに参加する楽しみも演出した。 そんな2時間はあっという間に過ぎていった。そして、前述したように「アイオライト」で盛り上げたあとは、"前を向いたとき、目の前にあなたがいるからライヴができる"と、その感謝の気持ちを込め、伊東が宮田のピアノだけをバックに「パズル」を熱唱。演奏するふたりの姿はこの日、観客からもらったものを、歌に変え、全力で返そうとしているようにも見えた。そして、それをしっかり受け止めようと観客は、ふたりの熱演にじっと聴き入ったのだった。




[Setlist]
1. スタートライン
2. 東方見聞ROCK
3. カナデアイ
4. ハートビート
5. アイスクリーム
6. あなたが好き
7. ヒトリノセカイ
8. さいごまで
9. トワイライト
10. ドンマイ!!
11. Never say Never
12. SUMMER LOVER
13. スターダスト
14. Thank you so much!!
en1. アイオライト
en2. パズル