0.8 秒と衝撃。塔山忠臣の「アホボケカスは俺か？」【第17回】

FEATURE

2013年06月号掲載

僕が東京へ来たばかりの時、近所のよく行ってた美容院の女の子と知り合いになり、たまにお茶したりメシ食ったりしていた。変なコトはしていない♪
埼玉の志木市に住んでるコで、公園行ったり、神社に行ったりしていた。（塔山は神社仏閣フェチ★）
その子との話で、特に印象に残ってるモノがある。。。
ある日、彼女が自分のお祖父ちゃんが運転する車に一緒に乗っていた時に、若いカップルに車であおられ、インネンをつけられたと言うのだ。お年寄りのコトだから運転もゆっくりだったのだろう、相手が気が優しい老人だというのをイイことに、男はまくし立てまくった。最後には『ジジイ、くたばれ！』とまで言われたらしい。彼女は恐くて車から降りれなかった。
ただ、彼女は恐さはもちろん、悔しくて悔しくて仕方なかったと言った。
お祖父ちゃんは元々身体が弱く、その日も病院へ行こうと車を運転していた。彼女も彼女のご両親も忙しくて、迷惑をかけまいと自分で運転して病院へ向かっていたのだ。そんな中、災難に巻き込まれ、挙句の果てには、酷く侮辱された。普通のキチンとした女性なら自分の彼氏がそんなコトをしていたなら止めようなモンだけど、悲しいコトに、世の中にはどうしようもないぐらいアホな女性もいる。その女も、逆に男をヤレヤレ！と助長していたらしい。
彼女は『あそこに塔山くんがいてくれたら、せめてお祖父ちゃんにあんな酷い思いをさせなくて済んだのに。。。』
と本当に、本当に、涙ながらに悔しがっていた。
何故なら、その翌日に、お祖父ちゃんが亡くなったからだ。言わばそのカップルは、今から亡くなる人に対して、『くたばれ』と、自分の虚勢をひけらかし、あたかも勝ち誇ったかのような態度をとって満足するという、クソみたいな虚しい行動をとったのだ。
あとからその話を聞いた僕は怒りを通り越して、情けなくなった。最後にお祖父ちゃんが見た風景は、どんなモノだったのだろう。。。
僕は彼女の話を大切に大切に、ゆっくりと聞いてあげ、すべてを吐き出させてあげた。彼女の心も少し癒されたようで、最後には笑顔も戻っていた。
この件に共通する、『塔山忠臣』の話がある。知ってるヒトは知ってるが、まだ知らないコのために。
塔山忠臣とは僕の小さい頃から仲良しの幼なじみの名前で、高校生の時に交通事故で亡くなった親友のコトである。
アルバイトの日、塔山と僕で母親の運転する車で、三人で食事した帰りに（毎月給料日にお疲れさんの意味を込めて、三人でゴハン食べたりしてニコニコしていた。）暴走族と思わしき連中に車に乗り込もうと駐車場を歩いていた塔山が、因縁をつけられ絡まれたのだ。
僕と母親はなんのコトだかさっぱり分からないまま、塔山をとにかく車に押し込みその場を去ろうとしたが、車は数台のバイクに囲まれ身動きが取れなくなった。僕は今からでは考えられないが当時、身体も細く、お世辞にも腕力があるほうではなかった。なのでとにかく怯える塔山と母親を守るために一生懸命、『勘弁して欲しい』と謝ってみた。
その姿に少し熱が冷めて飽きたのか、男らは最後に『ケッ！』てな感じであきらめた。
僕はホッとしたが、ヤツラのひとりが最後まで強がりたかったのか母親の車に一発、ケリをいれた。僕はその時の光景を、一生忘れない。
その時の塔山の表情や、母親の寂しそうな姿も。ケリを入れられた車は小さな軽自動車だが、僕がバイトでコツコツ払って母親に買ってあげた、大切な、大切な、車だった。
前述のお祖父ちゃん同様、ナニも別に悪いコトはしてないのに。
それからだ。僕がボクシングに夢中になったのは。
街のそういうヤツラともよく喧嘩もしたし、必要以上に敵視し、学校でも群れてるボケどもをシバき倒したりもした。
後に母親が友人にこうもらしてたという。『あのコが変わったのは、あの日、以来。よっぽど悔しかったんやろうね。自分の大切なヒトを守れなかった。そんなチカラさえ、自分にはなかったんかって。。。』
くだらない腕力なんてどうでもイイ。んなモンは本当の強さやナイ。極論、人間なんて拳銃で撃ったら終わりや。
世の中に最強なんてのはナイ。ただ唯一あるとしたら、自分の本当に大切なヒトはしっかりと、キミ自身のチカラで守って欲しい。
それが本当の意味での、『最強』である。
僕はそんな音を、鳴らしてゆきたい。。。★