Japanese
鎌野 愛
Skream! マガジン 2025年02月号掲載
2024.12.10 @晴れたら空に豆まいて
Writer : 石角 友香 Photographer:菅原一樹
声という楽器の可能性を突き詰めた1stフル・アルバム『muonk』、言葉の意味がメロディに乗る歌へのアプローチを強めた2ndフル・アルバム『HUMAN』でいわば両極の表現を実現した、その先に2024年リリースのEP『cocoon』は存在している。本作リリース後のライヴはより自由度を増した今の鎌野 愛のパフォーマンスが堪能できる内容を想像できてはいたが、何よりほぼ年に1度、アルバムに参加した盟友たちが同じ場所に居合し、音で交歓できる奇跡のような夜に感銘を受けた。
着席のフロアは仕事帰りの人も学生もミュージシャンと思しき人もいて和やかさと緊張感がないまぜになっているのが心地よい。その空気感のなかメンバーが登場し、1曲目は鎌野がルーパーでた行の短音を声で重ね、佐藤 航(Gecko&Tokage Parade)のピアノや馬場庫太郎(Gt/NENGU)のオブリガート、GOTO(礼賛/DALLJUB STEP CLUB/あらかじめ決められた恋人たちへ etc.)のパッドがそれぞれのリズムで展開する「浮遊する都市」からスタート。これが生で楽しめるのか! と興奮してしまう。続く「霧と砂」は深いところで三島想平(Ba/cinema staff)のビートが躍動し、高速ピアノ・リフが駆ける。自然の躍動の表現とマス・ロックの相性の良さを実感する。そして鎌野のヴォーカルは風のように抜けていく。さらに信号のような電子的なマリンバとスキャットが追いかけっこする「祈りの果て」と、序盤は声を器楽的に使うナンバーで彼女の無二の個性が明快に伝わった。
MCではこの日のライヴを年に一度のお祭りのようだと言い、またオーディエンスには平日に仕事を終わらせて足を運んでくれたことへ謝辞を述べた。そこからギターで参加している、鎌野とはösterreichでも活動を共にしている高橋國光が作詞にも参加した『cocoon』のオープニング・ナンバー「蛹」へ。意味のある歌詞が聴こえてくると、それまでとは違う感情が自分の中に立ち上がるのがはっきり分かる。流れるような声のSEに乗せて歌われるメロディ、"あしたきみはつまづいて/吹き出したあとに少しだけ悲しくなる"という高橋作の歌詞が体温を伴って響いた。高橋と馬場庫太郎の2本のギターのオルタナティヴな音像と須原 杏(Vn)のエモーショナルな弦の響きが心象をさらに大きく浮揚させる「ライナー・マリア」ではハンド・マイクで歌う鎌野。このセクションは最もポップスとしての歌唱だったように思う。
続くセクションはダークな深淵を覗きつつ、いわゆるホラーやサスペンスフルなアニメの音楽にも通じるテンションを持った楽曲が続く。「ゴーストスキャン」ではGOTOの少しオフビートで鳴らされるパッドが足を引きずりながら歩く音のような印象で、暗闇を歩くような体感の中で鎌野の飛翔する高音が際立った。透明で素直な歌唱からバックボーンであるクラシックの唱法までシームレスに飛び回れることが曲を1つのジャンルに縛らない。
"ゴーストシリーズ"第2弾と言える『cocoon』からの「ゴーストグレイス」はよりフィジカルに訴える要素も増え、四つ打ちのキックが心音のようだった。そして「カルテ」の複雑なバンド・アンサンブルは生での拮抗するアンサンブルの迫力で音源の何倍もスリリングに展開していく。さすがポストロック、オルタナティヴの強者揃いのバンドである。しかも怒濤の音像の中でも鎌野と高橋の朗読が埋没せず届いたのも嬉しい。
再び鎌野の音としての声もフィーチャーされる「解憶」。全ての音が躍動し、曲というイメージを超えて細胞分裂や草木の芽が伸びていくような感覚にとらわれた。そして最もエクストリームなロックと近似するニュアンスのノリが生まれたのは『cocoon』からの「皆既」だった。サスペンスフルなアニメや映画に似合いそうな楽曲の世界観は歌モノにアプローチし始めてからの1つの強みだと思うが、この曲の演奏も思わずサビで手が挙がりそうなロックのライヴ感があった。そういう意味ではバンド界隈のオムニバス・ライヴでも鎌野のライヴを観てみたいと強く思う。バンドのダイナミズムは続く「螺旋の塔」でさらに強まり、高橋のフィードバックが空間をドライヴさせる。三島が頻繁にベースのチューニングをしていたのも納得の、強いだけでなく凄まじく動くフレーズはライヴでさらに強烈な体感を生み出していた。エネルギーが拮抗し、飽和してエンディングを迎えると、この日一番の大きな拍手と歓声が自然と起こる。実に様々な世界を通過してきた感覚だ。
メンバー紹介になると途端に愉快な仲間たちに変身するのも彼等の信頼関係を窺わせる。そして鎌野は観客全員が友人や知人に"鎌野さん、すごくいいライヴをしてるよと伝えてくれたら、またこのメンバーでライヴができますので"と、本音100パーセントの言葉にこちらも頷いてしまう。シンプルにもっと広まってほしい。
再び声のコラージュ的な世界に戻る「流動する絵画」へ。鎌野の高音域と須原のヴァイオリンの音色が交差する部分も面白く、声のインスタレーションのような曲なのだが、アイディアが楽しくポップに届く。そしてラストはシンセの空間を拡張する音がどこかクリスマス・ムードにもリンクするホーリーな「光」が演奏される。徐々に加わっていく楽器のフレーズも穏やか。それでいてピンと張った寒い国の空気を感じさせる音像が東京の街中に現出したのだった。演奏に対するストイックな姿勢を分かち合えるミュージシャン同士の音の会話に触れた90分だった。
鳴り止まない拍手に応えて、アンコールは鎌野1人でのステージ。今回のEPを作ったことでさらに曲作りの意欲が加速しているという発言に拍手が起こる。そこで彼女の制作の原点を見るような1人で構築していくスタイルを見るのは覚悟と楽しさの両方を見る思い。「贄の賛歌」の通奏音として流れている5つのメロディをその場で重ね、メロディを歌う。抑えた歌唱から一気に突き抜けるソプラノ・ヴォイスまで縦横に発する凄み。安堵と畏怖が同居する声。命の循環を綴る内容も相まって、鎌野 愛という表現者の軸を強く印象付けた最終曲となった。
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