虎の子ラミー

Japanese

虎の子ラミー

Skream! マガジン 2023年12月号掲載

虎の子ラミー

2023.11.11 ＠Spotify O-WEST

Writer : 杉江由紀　Photographer：齋藤タカヒロ

その類稀なるケダモノぶり、ここに極まれり。"立体型サファリロックバンド"のふたつ名を持つ虎の子ラミーが、自身初のフル・アルバム『DRIP OF RAMMY』を発表したのちに行っていた"ドリップ・オブ・ツアー"が、このたび渋谷 Spotify O-WESTにていよいよツアー・ファイナルを迎えるに至った。しかも、このライヴについてはバンドの10周年記念の意味も持たせてあり、冠せられていたのは"お前も虎になれ！GO!GO!WESTワンマン～おかげさまで10周年！～"というタイトル。そして、今宵のライヴが始まる前には以下のようなアナウンスが場内に流れたこともここに付記しておこう。

"お客様へご案内いたします。本日の公演では、マザー・ヤナギ（Vo）が吼えたり暴れたりする可能性がございます。ただし、お客様方への危害を加えることは決してございませんので、どうぞご安心のうえご観覧くださいませ"。

そして、ほどなく客電が落とされフロアから湧き上がったのは、完全に自然発生した"Go！ Go！タイガー！"の大コール。メンバーが登場しないうちからすでにエキサイティングな空気感が生み出されるなか、火に油を注ぐ存在としてこの場に立った虎の子ラミーの面々は、まず「ハリケーンパンチ」で最初の一撃を繰り出すことになったのだ。なお、この１曲目ではマザー・ヤナギに先んじて、まさかのギタリストミズキがギター・ソロの際に思い切りフロア・ダイブをかましていたのには唖然とすることしきり。

スラップをふんだんに使ったプレイをRisako（Ba）が見せた「めっちゃ元気」や、マザー・ヤナギの指示によりウォール・オブ・デスが決行された「THE END」、サビの"バイバイポムニィ～"という呪文を観衆が揃って唱えてみせた「バイバイポムニィ～デブよ大志を抱け～」、ドラマーケイコの叩き出すファンキーなビートが効いていた「ゲゲゲのパクチー」など、このライヴでは前半戦からダイナミック且つプリミティヴなパフォーマンスが炸裂していたことになるのだが、それと同時に虎人（とらんちゅ）と呼ばれるファンのリアクションもバンド側に迫るような熱の入りぶりで、虎の子ラミーと観客側が相乗効果を生み出していたと言える。

曲によってサークル・モッシュに、肩組みヘドバンに、シンガロングに、肉弾戦モッシュと、様々なパターンで虎の子ラミーの放つサウンドを体感して楽しんでいる虎人の様子は微笑ましかったが、それ以上に虎人のみなさんが素晴らしかったのはマザー・ヤナギに対する温かいケア精神だ。ライヴが進行すればするほどマザー・ヤナギがオーディエンスの上を渡り歩いたり、フロア・ダイブで転がり回る頻度が上がっていったにもかかわらず、虎人は彼女のマイク・シールドの世話までしながら、毎回きちんと無事にステージまで送り返すということをやってのけてくれており、その光景からはマザー・ヤナギの虎人に対する信頼と、虎人のマザー・ヤナギに対する愛を感じることができた次第である。

なお、この曲のためだけの特別衣装や映像を使った茶番劇という名の演出が最高だった「異世界転生バンドマン」や、ここまでの10年を描いたアコギを使ってのバラード「歩み」、10周年を超えた先への想いを託した「パレードはつづく」など、このライヴでは全23曲をこれでもか！と堪能させてくれた虎の子ラミー。その類稀なるケダモノぶりには、きっとこれからもますますの拍車がかかっていくに違いない。