Japanese
Kuzuha & Kanae & ROF-MAO Three-Man LIVE「Aim Higher」
Skream! マガジン 2022年09月号掲載
2022.07.27 @ぴあアリーナMM
Writer 稲垣 遥 ©ANYCOLOR, Inc.
VTuber/バーチャル・ライバー・グループ"にじさんじ"所属の葛葉、叶、ROF-MAOによる3マン・ライヴが、1万2,000人のキャパシティを誇るぴあアリーナMMにて開催された。配信チケットも発売されていたが、会場チケットはソールド・アウト。4階席までぎっしりと入っているのが煌々と光るペンライトで一目瞭然だ。
開演に先だって、モニターにこの日のアクトが出演しているCMが流れると、それに続いて会場には生声が。叶、ROF-MAOの不破 湊、甲斐田 晴が注意事項を仲睦まじくアナウンスするサプライズに会場も沸き、温かな空気が広がっていた。
期待感が高まるなか、上下黒のスタイリッシュな衣装に身を包んだROF-MAOが登場。個々でもライバー活動をしている加賀美ハヤト、剣持刀也、不破 湊、甲斐田 晴の4人が昨年10月に結成したユニットだ。1曲目は、イベントの幕開けに相応しい、パッとその場を照らすように走り出す、ハイテンポな「New street, New world」をパフォーマンスしたのだが、まずはその映像に感銘を受けた。4人がその場にいるかのような立体感と動きのなめらかさはもちろん、会場の照明と連動した4人への光の当たり方や、モニターにも正面からだけでなくステージ横や後ろからのアングルが映し出されるなど、AR技術がさすがのクオリティだ。
と感心していると、前山田健一作曲のEDM調のパーティー・チューン「Let's Get The Party Started!」を投下。途中で寸劇も交えて盛り上げたが、ツッコミとして突如岩を投げるなどはバーチャルでしかできない所業だ(ちなみにROF-MAOは結成前に無人島サヴァイヴァル企画を行っており、岩はそこから持ってきた設定なのかも)。そして、ORANGE RANGEのカバー「キリキリマイ」へ。"ありそうでなかった選曲"と本人も言っていたが、観ると納得、自由自在に動けるメンバーが複数いるROF-MAOに打ってつけのカバー。ハードな曲調で新境地を見せた。
ここでオーディエンスのペンライトをメンバー・カラーに順番に変えるよう促してはしゃぐメンバー。ニコニコ生放送視聴者へはコメントの色をメンバー・カラーにするよう話し、オンラインの参加者まで楽しませる。
そこから加賀美が"我々的にも勇気のいる曲"と何やら匂わせて始めたのは「I wanna! You wanna!」。首藤義勝(KEYTALK/Vo/Ba)提供なだけある、お得意の和テイスト漂うアゲ曲の途中だが、曲の途中で突如"あれいくぞー!"、"急に不安になってきた(笑)!"と4人がざわつき始めたと思えば、曲に合わせてなんと全員でバク転! 驚き冷めやらぬまま、この数日前にROF-MAOがカバー動画を公開してTwitterでトレンド入りしていた、ザ・リーサルウェポンズ「きみはマザーファッカー」のカバーも披露。そのカバー動画は初めて"歌ってみた"に年齢制限がかかるなど、動画の内容以外でもネタになっているが、ライヴでするとは思っていなかった人も多かったようで大盛り上がり。加賀美が本家(サイボーグジョー)風にカタコトで歌ったり、Fワードを超ポップに人文字で表現してみせたりと、このヴィジュアルでやるからこその面白さで魅せた。
そんな乱痴気騒ぎのあと、初期ボカロ曲っぽい高速エレピとエッジの効いたギター・サウンドでガラリとクールなムードに変えた「ラックハック」。そして爽やかなポップ・チューン「知っている手紙」を連投。4人それぞれのソロ歌唱から始まるこの曲では太く安定感のある加賀美、人懐っこい剣持、やんちゃな不破、ビブラートが色っぽい甲斐田とヴォーカルの個性が楽しい。"こんなに観ていただいて、がむしゃらにやってきたけどもしかして頑張ってたんじゃないかなと思った"と不破が確かな感触を吐露。加賀美も"ROF-MAOとしてひとつのステージができたのが何より嬉しかったです。たまにこういうのもやっていくので、懲りずにご愛顧いただければと思います"と挨拶をするとラストは「前進宣言」。タイトル通り、周りの目や既存の価値観にとらわれずにアグレッシヴに進んでいく決意を込めたロック・チューンで、全員の拳を上げさせて終了した。
ステージ転換がないぶん余韻に浸る間もなく2番手、叶のステージが始まる。跳ねるリズムとピアノがとびっきりポップな「ブロードキャストパレード」で幕を開けた。バックダンサーふたりを両脇に引き連れて登場した叶は、先ほどのROF-MAOと対照的な真っ白な衣装に身を包み、編み込みハーフアップにした髪を揺らす。時折会場の観客にふんわりとした優しい笑顔で手を振りながら歌う様は天使のよう。そんなキラキラした世界観に浸っているとそこから一転、小悪魔的に"私天才だからあなたのすべてがわかっちゃう"と歌う「天才ロック」(烏屋茶房)へ繋ぎ、ギャップで惹きこむ。ダンサーと振付を合わせ、ステージを左右へ動き回りながらも安定した歌を聴かせる様に驚いた。というのも、叶はライバーとしてのキャリアはあるものの、この日ミニ・アルバム『flores』を発売してアーティスト・デビューをしたばかり。"今日はアーティストとしての叶を知ってもらえたらと思うのでお願いしまーす!"息を切らしながらそう挨拶したが、言われなければデビュー当日の姿とは思えないステージングだ。
ムーディな「エンヴィーベイビー」(Kanaria)でセクシーな一面も垣間見え、続いてゲーム・サウンドを取り入れた、テンポ・チェンジの多い危うげな展開の1曲「ダウナーウィッチ」(廉)と、彼が"歌ってみた"で公開した2曲を連投。しなやかな表現で魅了すると、次はアリーナに映える壮大なナンバー「ANEMONE」で巻き舌交じりの歌唱やがなり、低音も聴かせる。なんとも引き出しの多いアーティストだ。さらに、フルでの歌唱は初だという、"にじさんじ"に所属するライバーが俳優として参加するメディア・ミックス作品"Lie:verse Liars"主題歌「ハルを追いかけて」では、詞とマッチした儚げで美しい映像演出でも会場を包み込みうっとりとさせた。甘い歌声がその柔らかな出で立ちにもぴったりのバルーン「パメラ」をカバー、さらにライバーとして4年間活動してきた叶自身の活動と重なったというYOASOBI「群青」と続けた。
"歌ってみた"の曲からアーティスト・デビュー作の新曲まで、叶を叶たらしめたと思う曲を選んだというこの日のセットリスト。"最後の曲は最も大切な曲になります"と届けたのは「花束の行方」。叶がライバーとして活動を始めた4年前というのは、VTuberというものがやっと日本で認知され始めた時期と言える。それゆえにシーン自体が市民権を得るまで、叶がここまで来るまで、楽しいことばかりではなかったかもしれない。そんな彼自身のストーリーとも重なる1曲だ。"前ならえの鎖を/無理やり振り解いてきたんだ/その先に広がっていた/世界で出会ったの。"――ここまでの出会いに感謝するように空に向かって投げキッスしながら、エモーショナルなピアノ・ポップをこの日一番優しい歌声で届け"みなさん、今日はありがとうございました! これからもずっとよろしくお願いします!"と放つ。アリーナを水色に染めたペンライトがきれいに揺れ、それを見た叶も笑顔で手を振って去った。
正面ヴィジョンに"葛葉"と名前が映ると一斉に赤のペンライトで染まる会場。"お前らー! 待たせたなー! 最後まで盛り上がっていくぞー!"という声と同時に葛葉が登場し、ラウドなロック・チューン「Wonder Wanderers」で幕開け。リズム感抜群、曲と一体となったメリハリのある歌唱で一瞬にして空気をモノにする。続いてジャジーなサウンドに身体を揺らしながら、余裕を感じさせる堂々としたパフォーマンスを繰り広げた「Bad Bitter」。バッチリ決まったオープニングだったが、歌い終えると"いやニートにトリはキツいよ~! 踊りもバク転もできないし"、"あと今日は新衣装どふぇしゃ......大事なところで嚙んじゃったよ~"といつも通りのくだけた姿を現したのだった。
一瞬暗くなると、今度はステージ上に階段、そしてそのテッペンに置かれたアンティークな赤い椅子に腰かけた姿で浮かび上がった葛葉。そこでドロップしたのは挑発的なナンバー「神っぽいな」(ピノキオピー)だ。まさに"神っぽい"演出に沸く観客。後半では立ち上がり椅子に片足を掛け激しく叫ぶように歌う場面もあり迫力満点。"ローレンとかいう子の? あれがかっこいいなと思って。......神々しかったですか?"と同じくにじさんじ所属のローレン・イロアスがカバーしていたのを見て同曲を選曲したと葛葉はニヤリと笑うと、"椅子、意外と様になるでしょ? ついでに休憩もできんのよ"とまた天邪鬼に話す。この巧みで存在感のあるステージといたずらなMCの往復が癖になってきていた。
シンフォニックで荘厳なイントロから始まった「甘噛み」からはスタンドマイクで披露。ファルセット交じりで緩急をつけた艶めかしい歌声と、迫力の声量、マイクを握る指先まで行き届いた表現力と、圧倒的なステージングに惚れ惚れしたのは筆者だけではあるまい。「エンドゲーム」では雄々しくキレのあるラップを聴かせたと思えば、サビではニコニコの笑顔で親指を立てたモンキーダンスをするなど、無邪気な一面も(ヴァンパイアなのに!)覗かせ、「Owl Night」へ。強気でアップテンポな曲が多いなか、"どうか夢でも覚めないで"とフラジャイルな愛を歌うバラードで、こんな曲もやるのかという意外性のあるパートだった。
"こういう場所に来るとダンスもやろう、ボイトレとか作曲ももっと頑張ろうと思うんだけど、家帰ると8割くらい減るんすよね。でも残り2割でどんどん微々たる成長を実は見せてます! さっきの2組がすごいモチベーションになるんですよ。ああいうの観るとこれからもいいもの見せたいなって思います"と、ここでは冗談だけでなく自身の音楽やライヴ・ステージ、対バンの2組への想いも素直に示した葛葉。「debauchery」で再び会場の温度を上げたあと、"次で最後の曲だ! ぶち上げろぉー!"と叫び、駆けるようなドコドコとしたドラムとカッティング・ギターからなだれ込んだのはL'Arc~en~Ciel「READY STEADY GO」のカバーだ。自身の音楽の原体験だと本誌インタビュー(※2022年3月号掲載)でも語ったこの曲を、単なるコピーではなく葛葉の持ち味のまま完璧に歌い上げ、ぴあアリーナMMは大きな拍手に包まれた。
鳴りやまない拍手を受け、出演者全員が揃ってステージに登場。加賀美が"お互いがお互いに絶対思ってるけど、「いつの間にそんなの仕込んでたの?」っていう"と話したが、ROF-MAOのバク転のパフォーマンスや、叶のバックダンサーを引き連れたキレッキレのダンス、葛葉の椅子を使った演出などは互いにまったく知らず、驚いたと興奮気味だ。そして"いつもは楽しかった! やりきった! で終わるけど、今回は名残惜しさがある"(叶)、"さっきも言ったけどモチベーションになるし、それをみんなに放出できるのがいいことだと思う"(葛葉)と各々に確かな感触を言い合ったあと、全員で「虹色のPuddle」をパフォーマンス。6人で歌うサビのハモリも美しく、落ちサビでは加賀美&叶、不破&甲斐田(通称"アニコブ")、葛葉&剣持とグループの垣根を超えたペアでのレアな歌唱もあり、客席もカラフルなペンライトでフィナーレ感満載だ。"本日は誠にありがとうございました!"と声を揃えると銀テープが舞い、三者三様のキャラを最大限生かして楽しませた2時間半のスペシャルなステージが、大盛況のなか締めくくられた。
[Setlist]
■ROF-MAO
1. New street, New world
2. Let's Get The Party Started!
3. キリキリマイ(ORANGE RANGE)
4. I wanna! You wanna!
5. きみはマザーファッカー(ザ・リーサルウェポンズ)
6. ラックハック
7. 知っている手紙
8. 前進宣言
■叶
1. ブロードキャストパレード
2. 天才ロック(烏屋茶房)
3. エンヴィーベイビー(Kanaria)
4. ダウナーウィッチ(廉)
5. ANEMONE
6. ハルを追いかけて
7. パメラ(バルーン)
8. 群青(YOASOBI)
9. 花束の行方
■葛葉
1. Wonder Wanderers
2. Bad Bitter
3. 神っぽいな(ピノキオピー)
4. 甘噛み
5. エンドゲーム
6. Owl Night
7. debauchery
8. READY STEADY GO(L'Arc~en~Ciel)
En. 虹色のPuddle
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