Japanese
南無阿部陀仏
Skream! マガジン 2022年05月号掲載
2022.03.26 @LIQUIDROOM ebisu
Writer 稲垣 遥 Photo by 石原汰一
"青春"を形にしたような、濁りのない爆発的なエネルギーと、何物にも代えられない無敵のきらめき。東京練馬発のアロハ系ロック・バンド、南無阿部陀仏による初めての東名阪ワンマン・ツアーのファイナルとなったLIQUIDROOM ebisuにはそれが充満していた。
SEなどはないまま、トレードマークの色違いのアロハシャツを身につけた阿部(Ba)、アントニー大輝(Dr)、そーや(Gt)が仄暗いなか位置につく。フィードバック・ノイズの音量を上げると、ステージ上手から真っ赤なアロハを着たまえす(Vo)がマイクめがけて猛ダッシュで登場! 驚く間もなく"会いに来たぜリキッド(LIQUIDROOM ebisu)ー!"というまえすの雄叫びと共に、「ソレイユ」でライヴが始まった。ストレートなグッド・メロディがナチュラルにオーディエンスの身体を揺らし、てらいのない少しかすれたヴォーカルが胸の中まで瞬時に飛び込んでくる。昨年秋に行った前回のワンマン(吉祥寺ROCK JOINT GB)から大きくキャパを上げた彼らだが、フロアの後ろまで手拍子や拳が上がる様にバンドの勢いが表れていた。そのまま活力漲るイントロを奏で「アドベンチャークルージングパーティー」へ突入。前方のアンプに腰掛けながらベースを弾く阿部、客席の様子を笑顔で見渡しながらギターを弾くそーや、時にスティックを回したりフロアを指したりしながらドラムを叩くアントニー大輝、そしてそんな3人に寄り添いに行ったり、ステージを走り回ってでんぐり返ししたりしながら歌うまえす。MCで、リハーサルでは広さに緊張して立ち位置から一歩も動けなかったと話していたが、始まってみれば萎縮のいの字も感じさせない、むしろ初めてのステージを端から端まで冒険して楽しんでやろうという高揚感に満ちたパフォーマンスだ。そしてそれは決して自己満足ではなく、押しつけがましいものでもなく、"僕の幸せをあなたの幸せにしたいんだ"と歌う通り、自分たちと同じように不器用ながら生きる聴き手の心を動かすことも意識したものであることが伝わる。若干二十歳の彼らながら、その純正な包容力に、胸を熱くさせられるのだ。
"暗い話はなしにしよう! 楽しいことだけを歌にするんだぜ!"、"人として腐ってたまるかよー!"曲中や曲間で自身を鼓舞するかのように張り上げるまえすの叫びが、彼らの振る舞いとガッチリ一貫していていちいち刺さる。また、キャッチーなメロディで問答無用で手が上がった「1,2,3!!!」、タオル回しをやるために作ったという跳ねるリズムの「GURU GURU」など、新曲も惜しみなく披露して観客を楽しませた。
"何曲か自分の好きな子に歌った曲を"(まえす)と始めた「ロマンチックな恋がしてぇ」では、まえすがエレキ・ギターを持ってスタンドマイクに向かい、素直で甘酸っぱい片想いの心情を、「君へのラブソング」では振られた"君"への想いを愚直に募らせる様を、等身大の情景描写も携えて歌う。先ほどまでのパンキッシュで威勢のいい南無阿部陀仏から色を変え、柔らかなギターの音色に精緻なベース・ライン、強弱をつけたドラムにナイーヴさも孕むヴォーカルで、焦燥感と切なさを押し出す新たな南無阿部陀仏を見せつけた。
そんな熱さと繊細さとが交じり合う「卒業の日」が白眉だった。この間まで高校生だった彼らならではの"先輩"感のある距離の近さを湛えた、新たな卒業のアンセムだ。"この先、どうなるかなんてわからないけれど/ガムシャラに......ガムシャラに走りたくても走れないこともある。修学旅行とか、やりたかったことを潰されることもある。でも、それを乗り越えてきた強さもある"――歌唱の途中で溢れ出した想いを語るまえす。"この曲では「明日から」って言ってるけど、「今日から」頑張ろうぜ。弱い自分に負けてたまるか"とつぶやいてから、"あなたを愛してる"と絶唱した。手拍子が自然発生的に湧く。"僕らは毎秒歳を取っていく"のパンチラインで、彼らと同世代の若者だけでなく、すべての世代に対し今を必死に生きることの意味を投げ掛ける。4人で歌うサビがとてつもないパワーをもってLIQUIDROOMに響き渡ったのだった。
まえすの弾き語りから、アントニー大輝の力強く大きいドラムが加わり、どっしりとしたバンド・サウンドへと。それぞれがピンスポットを浴びて歌った「信じた足跡」。エレファントカシマシを彷彿させるような、男臭くタフで哀愁をも帯びる骨太なロックンロールに、また新たなバンドの一面と可能性を感じさせると、再びテンポアップし、まえすの魂のハープも胸を揺さぶった「愛を知らない僕らへ」、"俺たちはいつでもあなたに歌を歌いに行くよー!"と叫んでフロアを包み込んだ温かな「5時のチャイム」と畳み掛けていく。ハッピーなムードが会場を満たし、いよいよラスト・チューンかと思ったところで、"baby僕は東京のLIQUIDROOMで君の歌を歌うよ~♪"とロマンチックに甘い歌声を響かせたのはなんと阿部。彼のメイン・ヴォーカルから始まる新曲「baby ベンチで夢を見よう」で、フロアに笑顔の花を咲かせ、幕を閉じたのだった。
アンコールではさらに「ハジケパワフル」という新曲も。暑苦しくギラギラした、裏打ちのリズムの夏ソングは"今年の夏こそは派手に楽しむぞ"という意気込みの表れで、フェスでこの曲が集まったオーディエンスを盛り上げる景色も想像したくなった。そして、デビュー曲にして音楽好きに南無阿部陀仏というバンドの存在感を知らしめた1曲「若者よ、耳を貸せ」、さらに「ミサンガ」で"物語は繋がっている"と歌い上げ、しっかり集まったオーディエンスに前進の意志を示して終演。"これからもよろしくー!"とニカッと笑ったまえすの笑顔が印象的だった。
洗練されたお洒落な空気感やグルーヴ感を持つポップス、チルなヒップホップなどが若者の流行の主軸になっている昨今をリアルタイムに生きながらにして、それらと真逆の汗臭く人間味に溢れたロックの力を信じ、大きな音でド直球に鳴らす南無阿部陀仏。そして、声は出せなくとも全身全霊の気持ちを込めて高く掲げられた無数の拳たち。彼らの描く未来、このバンドの可能性にかけてみたい。そう思わせるには充分すぎるライヴを目の当たりにした夜だった。
[Setlist]
1. ソレイユ
2. アドベンチャークルージングパーティー
3. 青春
4. ONE LIFE
5. 1,2,3!!!
6. GURU GURU
7. 烏兎怱怱
8. 宝道~たからのみち~
9. ロマンチックな恋がしてぇ
10. 君へのラブソング
11. 愛別離苦12. Precious
13. 卒業の日
14. 信じた足跡
15. 想いを乗せて
16. 愛を知らない僕らへ
17. 星の鍵
18. 5時のチャイム
19. baby ベンチで夢を見よう
En1. ハジケパワフル
En2. 若者よ耳を貸せ
En3. ミサンガ
- 1
LIVE INFO
- 2025.10.27
-
YOASOBI
錯乱前戦
Damiano David(MÅNESKIN)
- 2025.10.28
-
終活クラブ
SIX LOUNGE
アイナ・ジ・エンド
YOASOBI
吉澤嘉代子
藤巻亮太
超能力戦士ドリアン
サニーデイ・サービス × NOT WONK
リュックと添い寝ごはん
- 2025.10.29
-
吉澤嘉代子
Damiano David(MÅNESKIN)
amazarashi
キュウソネコカミ
moon drop
怒髪天
- 2025.10.30
-
超☆社会的サンダル
LONGMAN
YOASOBI
凛として時雨
夜の本気ダンス
キュウソネコカミ
SIX LOUNGE
打首獄門同好会
Nikoん × Apes
挫・人間
- 2025.10.31
-
すなお
ExWHYZ
吉澤嘉代子
東京スカパラダイスオーケストラ
LONGMAN
YOASOBI
ガガガSP
フリージアン
FINLANDS
Newspeak
夜の本気ダンス
go!go!vanillas
超能力戦士ドリアン
インナージャーニー
岸田教団&THE明星ロケッツ
ポップしなないで
RAY
アイナ・ジ・エンド
- 2025.11.01
-
東京スカパラダイスオーケストラ
怒髪天
PIGGS
超☆社会的サンダル
ポルカドットスティングレイ
MONOEYES
シド
LACCO TOWER
Mrs. GREEN APPLE
ズーカラデル
LiSA
Omoinotake
"ボロフェスタ2025"
ドミコ
TOKYOてふてふ
Dannie May
SIX LOUNGE
hockrockb
go!go!vanillas
osage
RADWIMPS
The Biscats
brainchild's
ぜんぶ君のせいだ。
INORAN
chilldspot
moon drop
インナージャーニー
KANA-BOON
AFTER SQUALL
松永天馬(アーバンギャルド)
NANIMONO
愛美
CYNHN
DeNeel
kobore
the cabs
離婚伝説
[Alexandros] / WANIMA / UNISON SQUARE GARDEN / くるり ほか
- 2025.11.02
-
osage
OKAMOTO'S
PIGGS
HEP BURN
秋山黄色
吉澤嘉代子
MONOEYES
セックスマシーン!!
ビレッジマンズストア
離婚伝説
Mrs. GREEN APPLE
ズーカラデル
"ボロフェスタ2025"
KING BROTHERS
wacci
Laura day romance
PIXIES
Devil ANTHEM.
TOKYOてふてふ
RADWIMPS
Dannie May
ぜんぶ君のせいだ。
INORAN
キタニタツヤ
moon drop
KANA-BOON
AIRFLIP
ハンブレッダーズ×秀吉×囲碁将棋
羊文学 / sumika / クリープハイプ / マルシィ ほか
私立恵比寿中学
The Biscats
WtB
:[Alexandros] / 10-FEET / go!go!vanillas / マカロニえんぴつ ほか
bokula.
- 2025.11.03
-
irienchy × no more
NANIMONO
秋山黄色
フレデリック
怒髪天
OKAMOTO'S
東京スカパラダイスオーケストラ
Devil ANTHEM.
ポルカドットスティングレイ
セックスマシーン!!
キタニタツヤ
シド
LiSA
"ボロフェスタ2025"
yama
キュウソネコカミ
愛美
brainchild's
藤巻亮太
AIRFLIP
私立恵比寿中学
Bye-Bye-Handの方程式
moon drop
SCOOBIE DO
the telephones
フラワーカンパニーズ
清 竜人25
THE BACK HORN
凛として時雨
Age Factory
hockrockb
LACCO TOWER
阿部真央
- 2025.11.06
-
RADWIMPS
古墳シスターズ
ねぐせ。
超能力戦士ドリアン
吉澤嘉代子
TENDOUJI
東京スカパラダイスオーケストラ
THE SPELLBOUND
LEGO BIG MORL
LONGMAN
キュウソネコカミ
フィロソフィーのダンス
夜の本気ダンス
GLIM SPANKY / 神はサイコロを振らない / レトロリロン
礼賛
ブランデー戦記
- 2025.11.07
-
YONA YONA WEEKENDERS
コレサワ
Rei
SIX LOUNGE
古墳シスターズ
あたらよ
Chimothy→
NANIMONO
超能力戦士ドリアン
崎山蒼志
ザ・シスターズハイ
MONOEYES
インナージャーニー
PompadollS
LEGO BIG MORL
androp
reGretGirl
終活クラブ
フレデリック
DOES
brainchild's
LUCKY TAPES
大橋ちっぽけ
BLUE ENCOUNT
- 2025.11.08
-
Mrs. GREEN APPLE
ズーカラデル
ねぐせ。
FINLANDS
フラワーカンパニーズ
NANIMONO
Rei
SCOOBIE DO
打首獄門同好会
離婚伝説
PIGGS
終活クラブ
東京スカパラダイスオーケストラ
moon drop
キュウソネコカミ
eastern youth
wacci
Cody・Lee(李)
フレデリック
osage
怒髪天
優里
ASH DA HERO
irienchy × no more
パスピエ
MONO NO AWARE / ウルフルズ / Jeremy Quartus(Nulbarich) / SIRUP ほか
向井秀徳 / the band apart / ラブリーサマーちゃん / サニーデイ・サービス / 石野卓球 ほか
ザ・シスターズハイ
藤巻亮太 / SHE'S / SOIL&"PIMP"SESSIONS / 寺中友将(KEYTALK) / CENT ほか
ビレッジマンズストア
- 2025.11.09
-
コレサワ
Mrs. GREEN APPLE
Laura day romance
ねぐせ。
NANIMONO
SUPER BEAVER
フラワーカンパニーズ
あたらよ
ズーカラデル
osage
FINLANDS
SCOOBIE DO
MONOEYES
Devil ANTHEM.
崎山蒼志
打首獄門同好会
キタニタツヤ
リュックと添い寝ごはん
LUCY
水平線
KANA-BOON
ラックライフ
暴動クラブ
東京スカパラダイスオーケストラ
chilldspot
インナージャーニー
ドミコ
森 翼
PompadollS
Appare!
キュウソネコカミ
eastern youth
Cody・Lee(李)
BLUE ENCOUNT
優里
岸田教団&THE明星ロケッツ
Rhythmic Toy World / BIGMAMA / LACCO TOWER / kobore ほか
ASIAN KUNG-FU GENERATION / SHISHAMO / 水曜日のカンパネラ / TENDRE ほか
シド
"四星球放送局FESTIVAL"
Dannie May
a flood of circle
センチミリメンタル
怒髪天
- 2025.11.11
-
PEDRO
Age Factory×ジ・エンプティ
BIGMAMA
Laughing Hick
SAKANAMON
僕には通じない
Ado
RELEASE INFO
- 2025.10.29
- 2025.10.30
- 2025.10.31
- 2025.11.05
- 2025.11.07
- 2025.11.09
- 2025.11.10
- 2025.11.11
- 2025.11.12
- 2025.11.14
- 2025.11.17
- 2025.11.18
- 2025.11.19
- 2025.11.21
- 2025.11.26
- 2025.12.03
FREE MAGAZINE

-
Cover Artists
暴動クラブ
Skream! 2025年10月号



















