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LIVE REPORT

Japanese

南無阿部陀仏 / セカンドバッカー / ちゃくら / Sundae May Club

Skream! マガジン 2023年08月号掲載

2023.06.22 @下北沢シャングリラ

Writer : 山口 哲生 Photographer:TAMA

6月22日に下北沢シャングリラで開催された"LIVEHOLIC 8th Anniversary series~NEXT HERO~"には、ライヴ・タイトルに掲げられた"NEXT HERO"というワードの通り、次の世代を担う勢いのある4組が集結した。

トップバッターを務めたのはSundae May Club。憂鬱をすっ飛ばしてくれるような、エモーショナルでパンチがあって、それでいてどっしりとした安定感のあるバンド・サウンドと、浦 小雪(Vo/Gt)が伸びやかな声で歌い上げていくメロディが、なんとも心地よい。切なさや焦りを抱えながら駆け抜けていく「春」、ハチロクのリズムで"君は歌だ"の一節を強く響かせた「夜を延ばして」など、どれも凄まじいポピュラリティを誇るものばかり。またMCでは、宮原隆樹(Gt)が"僕たちの音楽を聴いて「NEXT HERO」が生まれてくれたら嬉しい"と話せば、浦が"固いね(笑)"と返す。そんなやり取りも微笑ましく、初見のオーディエンスの心をしっかりと掴んでいた。

"あなたを私は今日も引きずるけど、今日という日が少しでも生きやすくなりますように"。そんなひと言を叫んでいたのは、ちゃくら。日常生活や恋愛の風景など、その状況と心情が苦しくなるほど伝わってくる言葉たちを、時に絶叫を交えたポエトリー・リーディングを挟みながら、感傷を爆発させるように鳴り響かせていく。中でも"私たち4人の元彼を歌った曲"という「もういいよ、おやすみ」の冒頭で叫んだ"この世の元彼、全員くたばれ!"のひと言が鮮烈。そんなやり切れなさや孤独に寄り添うメッセージを届けながらも、サクラ(Vo/Gt)が奏でる儚げなアルペジオに楽器隊が音を重ねたオープニングや、大胆に場面展開していく「タイトル未定」など、アレンジ面でもフロアを魅了していた。

続いて登場したセカンドバッカーは、「アダルトエイティーン」でライヴをスタートさせた。まさみが笑顔を見せながらパワフルに叩き上げるドラムの上で、いへう子がギターをがむしゃらにかき鳴らしながら、叫ぶように歌を放つ。"バンドやライヴをやっているときは、自分の感情が前に出るようにしたい"、"何かを受け取ってもらって、もっと深い場所でみんなと繋がっていたい"と、いへう子が話していたが、激情的に叫び上げながら雪崩込んだ「月と太陽」や、繊細でヒリついた空気を充満させながら突き進んでいく「どうせ枯れるなら」など、心の奥底に抱えている感情を剥き出しにしてフロアにぶつかっていく生々しい演奏を繰り広げていた。

客席の暗転と同時に強烈なフィードバック・ノイズを放ち、豪快なパフォーマンスを繰り広げたのは、この日のトリを務めた南無阿部陀仏。昨年メジャー進出した彼らは、シンプルながらも生きるために重要なメッセージを、瑞々しくてどこまでもまっすぐなバンド・サウンドに乗せてぶつけていく。まえす(Vo)が「応援歌」の途中でフロアに降りてきて歌い上げたり、4人で肩を組んで「若者よ、耳を貸せ」をシンガロングしたり、ショート・チューンの「ONE LIFE」をアンコール含めて計3回披露したりと、自由奔放にフロアを盛り上げる。そんな中でまえすが発した"どう思われてもいいです、あなたが楽しいと思ってくれたらそれでいい"という言葉に、この瞬間を最高のものにしたいという、彼らの意思や覚悟が強く宿っていた。

見事なまでに各人各様のステージでフロアを魅了していた4組。ここからそれぞれが自分たちの音楽を通してリスナーとどう繋がっていくのか、ただひたすらに楽しみになる一夜だった。

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