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LIVE REPORT

Japanese

NECOKICKS

Skream! マガジン 2017年03月号掲載

2017.02.04 @代官山UNIT

Writer 秦 理絵

ベースのYU-TAが左手を骨折、ギターのHARA-KUNは尿管結石になるという満身創痍で駆け抜けたNECOKICKSの"ゆとり爆発ツアー"。昨年11月から各地で対バンを迎えながら開催してきた全国ツアーのファイナルが代官山UNITで行われた。
SEはつじあやのの「風になる」。かつてジブリ映画"猫の恩返し"の主題歌だったほのぼのとした楽曲はネコキの登場にぴったりだ。勢いよくステージに姿を現すやいなや、"好きなように身体を揺らしていきましょう!"とTAKUMI(Gt/Vo)。カラフルな照明がステージを照らすなか、早口を乗せた爆音がフロアを揺らした「ワンダーワンダー」。HARA-KUNが繰り出すギターのフレーズがライヴの熱狂と興奮を一気に掻き立てる。KO-Ki(Dr)の高速ビートで突入した「ウタカタ」で早くもフロアの熱狂はピークに。直後のMCで"なんだろう、すごく緊張してる......"と苦笑いをしていたが、この日はNECOKICKS初の東京ワンマン。今後のバンドにとって大きな意味を持つであろう晴れ舞台に、あからさまに緊張してしまうところがネコキらしい。

KO-Kiの4カウントを合図にフロアのお客さんが一斉に拳を突き上げた「弾丸ライナー」、HARA-KUNのギターとYU-TAのベースのユニゾンが最高だった「どうでもいいや」。聴けば自然に身体を動かしたくなるようなアッパー・チューンを連打した、前半のハイライトは「世界を征服してやるんだ」だった。その歌で何度も繰り返す"世界を征服してやるんだ"というフレーズからは、あなたの灰色の世界に、少しでも色を感じられるようにと歌い続ける、ネコキの決意が感じられる。そこから、不器用で愛想笑いばかりがうまくなる自分を歌った「いっせいのせ」へ。"四つ打ちバンド"なんて揶揄されて、ノリ一発のお調子者にも見えるけれど、NECOKICKSは誰もが生活で抱くやるせなさを、センチメンタルなメロディに乗せて丁寧に拾い上げるバンドだ。普段は正直かっこつかないバンドだなとも思うけど、そんなとき、ネコキはめちゃくちゃかっこいい。

クソッタレのラヴ・ソングを代官山の愛すべきあなたたちに捧げます!"と繰り出したロックンロールな「シュガー」では、ミラーボールの光がフロアを照らすなか心地よいスウィングに揺れ、「Sunny day」では人差し指を左右交互に突き上げる"チュッチュルダンス"とコール&レスポンスでお客さんが一体になった。"俺たち、これを6年間やってます!"とTAKUMI。最新アルバム『パパはNewギニア』の楽曲を中心にしながらも、これまでのネコキのすべてをぶつけるセットリストだ。"oh oh"のシンガロングに沸いた「飽和日常へ」のあと、TAKUMIがギターを爪弾きながら語り掛けた。"音楽を始めたとき、誰かと一緒なのが嫌だったし、めちゃくちゃひとりよがりだった。でも、気づいたら大勢の人に支えられていた。今日の緊張も支えてくれる人に良いところを見せたかったからだと思う"。そんな飾らない言葉と共に「かぞくのうた」へと繋ぎ、集まった観客への感謝を伝えた。

ドラム・ソロから突入した終盤戦。"いまこそ見返してやる"という強い気持ちを込めた「カウンターパンチ」からは、メンバーのエモーションがますます加速していった。もはや序盤の緊張感はどこへやら。"どんな選択をしても、後悔しないことは難しい。でも、自分のやりたい方を選べば、後悔なんて怖くないと思う。あなたのなりたい自分になろう!"。まるで自分自身にも言い聞かせるように投げ掛けたTAKUMIの言葉から、唸るような熱気が立ち込める会場に向けて、最後に投下されたのは、「遠い空の向こう」だった。どれだけ未来に失望しても"相変わらず 懲りないな"と、前を向き続ける自問自答の歌は、そうして辿り着いた初の東京ワンマンの終わりにとても相応しかった。

アンコールでは今回のツアー中、名古屋、大阪公演でHARA-KUNの代わりとしてピンチ・ヒッターを務めたMELLOWSHiPToshikiを呼び込んで超絶ギター・バージョンの「1秒先の未来」を披露。そしてメンバーのみで「REMEMBER」を演奏して、約2時間のライヴは幕を閉じた。最後にTAKUMIは、"日々は過ぎていくものだと思ってたけど、最近は自分の中で積み重ねていくもののような気がしてます。これからもNECOKICKS、積み重ねていきたいです!"と、決意を口にした。たとえ不器用でも、不格好でも、うまくいかない毎日でも、いくつもの"それでも"を積み重ねて、音を鳴らし続けるNECOKICKSはこれからも新たな夢へと進み続ける。

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