Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

LIVE REPORT

Japanese

1000say

Skream! マガジン 2016年02月号掲載

2015.12.05 @代官山UNIT

Writer 蜂須賀 ちなみ

約4年ぶりのリリースとなった2ndフル・アルバム『BABYLON』のレコ発ツアーのファイナル公演にして、結成10周年を記念したワンマン・ライヴ。この文面だけでもバンドにとって大切な日であることは容易に想像できるし、実際本人たちもこの日に向けて様々な準備をしていたことだろう。しかし、ツアー中、MICHELLE(Syn)が突然の脱退。この日はMAN(Vo/Gt)、API(Vo/Ba)、NON(Dr)の3人体制でライヴは行われた。
 
SE「THE GATEWAY TO BABYLON」を背に3人が登場し、トライアングルを描くようにステージ上にスタンバイ。MANがギターを一発掻き鳴らすと、SEが止まり、MANとAPIのツイン・ヴォーカルによる歌い出しへ――という「DET-ROCK」の始まりだけで、もうバンドが前しか向いていないことは明らかになった。大切な日を目前に起きた、大きな事件とも言うべき出来事。この日集まったファンの中には複雑な感情を抱いていた人もいたかもしれない。もしかしたらバンド自身だって、前を向くのに時間がかかったのかもしれない。それでも、自らの虚しさや悔しささえ糧にしながら、1000sayは突き進むことを選択した。決意を胸に燃やすバンドのサウンドには、ファンの不安を晴らすには十分なほどの説得力が詰まっている。3曲目「SPECTRUM」まではアルバム『BABYLON』と同様の曲順。MCに入る前に"こんばんは、1000sayです"と普段通りに、しかし少しだけハッキリとAPIが挨拶したあとの拍手はなかなか鳴り止まなかった。ここでMANが"俺らを知って、例えば8年目の人もまだ半年の人も、誰ひとり置いてかないから!"と力強く宣言し、「DANCE IN THE SEVEN DAYS」(3rdミニ・アルバム『LIGHTNING AMPLIFIER』収録)、そして「PHANTOMAGIC」(1stフル・アルバム『APOLLON』収録)へと向かう。以降も、オール・タイム・ベストのような選曲がセットリストを彩っていた。オーディエンスはリズムに合わせて大きくジャンプし、3人が生み出すグルーヴの波に乗っかって思い思いに身体を揺らす。時折ステージの真ん中に飛び出してピョンピョン跳ねるAPIも、クールにビートを刻みながらもロング・ヘアの向こう側から笑顔を覗かせるNONも、APIやNONに対するフロアからの歓声を聞いて"今俺の名前誰も呼ばなかったけど、昨日、俺誕生日! 今日はお母さんも観に来てるんだから頼みますよ!"と笑うMANも、心底楽しそうだ。
 
"流星DESTINY/生まれ変わる/砕けたカケラあつめ/イメージを伝える/祈りを胸に抱きしめて叫ぶ"と歌う「流星DESTINY」が、奇しくもひとつピースの欠けてしまったこのバンドの凛とした決意として鳴らされたあと、16曲目は「サジタリウス」。ここまでは挨拶程度のMCのみだったが、"アイツも、もうちょっと我慢したらこんなに素晴らしい時間が共有できたのに......もったいないと思いませんか!?"とMANがフロアに問いかける。"今は3人の俺らを見て寂しさを感じる人がいてもしょうがないと思ってます。でも、アイツが残してくれたいい部分を......悪い部分ももちろんあるけど(笑)、いい方の部分を、俺らが引き継いで、背負って、頑張っていくので。未来の1000sayをどうかよろしくお願いいたします!"――相変わらず彼らしく少しのブラック・ジョークもありつつ、まっすぐに、集まったファンへ胸中を明かしていく。この日のライヴでは、MICHELLEがかつて演奏をしていたパートを代わりにAPIやMANが補っていたり、同期を駆使したリアレンジで、より重厚で奥行きのあるアンサンブルを奏でていた。例え3人になってしまったとしてもステージに立とうと決めた理由は、こんなときだからこそ、さらに進化しゆくバンド像をファンに直接伝えたかったからであろう。彼らが鳴らすサウンドは、ひたむきに未来を目指す光に満ちていた。
 
アンコールを求める拍手に応えてNONとMANが再登場するとオーディエンスからファンの寄せ書きと花束が贈られる。そのまま2人のみで演奏を始めたその曲は「MICHELLE AGAINST THE MACHINE」であり、なんと、銀髪のカツラ+サングラス姿のAPIが登場! ユーモアとともに、バンドのポジティヴな姿勢がダイレクトに伝わってきた最高のアンコールだった。

  • 1