Japanese
READ ALOUD
Skream! マガジン 2015年01月号掲載
2014.12.07 @渋谷CLUB QUATTRO
Writer 吉羽 さおり
3rdミニ・アルバム『アカンサス』をリリースしたREAD ALOUDが初のCLUB QUATTROワンマン・ライヴを行なった。開演前には、第64回ベルリン国際映画祭2014フォーラム部門など、国内外の映画祭で数々の賞に輝いた坂本あゆみ監督による、ミニ・アルバム『アカンサス』を題材とした役30分のショート・ムービーが上映された。収録曲を坂本監督ならではの独自の視点で脚本化した映像作品を堪能した静けさから一転して、ライヴはアグレッシヴで迫力のある内容になった。
『アカンサス』という作品は、ライヴ・バンドとして4人の音ありきで作り上げるそれまでの作品とは違って、曲が持つ、曲が呼ぶ世界観に忠実に音を作り上げた初めてのアルバム。より"作品"としての普遍性やあり方を意識して、歌心やメロディを色づけ縁取るサウンド、そこで鳴る音の意味をひとつひとつこだわったものだった。ここで納得のいく作品ができたからこそ、ステージでは思い切り振りきって、エモーショナルに、躍動的に"ライヴ"としての楽しみを追求できた一夜だったと思う。
前作『無花果』収録の「未だ黄昏が咆吼るなら」で始まったライヴは、続く「誰かの為に咲いてない」で力強いファンキーなビートで、そして"踊ろうぜ、クアトロ!"と叫ぶクワタユウキ(Vo/Gt)の一声で、「BGK」~「オートマチック」というダンス・チューンを連発し、熱気を急上昇させていく。MCでは、ライヴの前に業者のかたにスタッフと間違えられて一緒に花を運んだエピソードでフロアを和ませつつ、中盤はじっくりと聴かせる曲を中心に披露。遠藤タカヒロの渋みあるギターのフレージングを、秋澤正志(Ba)と貝吹"KONG"裕一郎(Dr)のどっしりとしたリズムが押し上げる「夜明けの針金」、そして『アカンサス』収録の「風が吹くから」と「月と太陽」へと続いていく。『アカンサス』はツアーをしながら曲作りをし、ライヴの出来によっては時に"いつまでバンドをやっているんだろう"という思いもよぎったことがあると語ったクワタ。やりたいことや夢を見失う現実にぶつかるのもライヴなら、そこから何度でも奮い立たせてくれるのもまたライヴであり、そこで出会うたくさんの人だったのだろう。「風が吹くから」や、後半に披露された「君の声を思い出す」には、ここに至るバンドのリアルな経験が織り込まれて、輝きに満ちた普遍的な青春の物語へと昇華された。冒頭で流れたショート・ムービーの内容とも相俟って、この日最も印象強く、そして歌に込められた思いが深く刺さるものとなった。
後半にかけては、エキゾティックなインストゥルメンタルのほか、新曲も披露された。まさにライヴ・チューン向きの、ファットなベースが利いたダンス・ナンバーで、続くアップ・ビートな「言花-コトヴァナ-」でさらに観客の体を揺さぶっていく。そして終盤は、ラスト・チューン「タイムトラベラー」まで、一気に加速していき、会場は、大きくコブシを掲げて、一体感と高揚感とで包まれた。
鳴りやまない手拍子が拍手に変わって迎えられたアンコールでは、2015年早々からツアーがスタートすることがアナウンスされた。そして、この日、ライヴ初披露となった『アカンサス』収録の「朝」をプレイ。アコースティック・ギターを軸にしたサウンドで、クワタユウキの温かい声が、やさしい光を湛えて響く。バンド名であるREAD ALOUDは、読み上げるという意味を持つ。心に浮かんだ感情を素直に音読する、という思いを込めて命名されたものだが、3作目となるミニ・アルバムを発表し、ライヴを重ねて、その素直な感情の発露は、より表現力を増していることを感じる。奇をてらった音や言葉でなく、幅広いサウンドを磨きあげながら、記憶に寄り添う風のようなメロディで、リスナーにとっての日々のBGMとなり、滋養にもなる曲へと、タフさと繊細さを身につけている。7月にこのワンマン・ライヴを行なうことを発表し、そして『アカンサス』がリリースされ、じっくりと時間をかけて準備をしてきたREAD ALOUD。2014年という年がバンドにとってどんな1年となったか、今、どんな場所に立っているのか、そしてこれから4人がどう進んで行こうとしているのか。そのドラマや流れを見せるステージになったと思う。
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