Japanese
女王蜂
Skream! マガジン 2012年04月号掲載
2012.03.23 @赤坂BLITZ
Writer 沖 さやこ
“やりすぎて 少し後悔 でもめげない”がドレス・コードの女王蜂六ヶ所単独公演“孔雀婦人”。降臨儀式編と称されたツアー・ファイナルである赤坂BLITZには仮面を装着した女子や、ショウさながらの煌びやかな衣装に身を包んだ女性、首にタオルを巻いたTシャツ姿の男子や着ぐるみグループなどなど……。思い思いの服を纏ったオーディエンスでフロアはひしめいている。
ザ・ピーナッツの「恋のロンド」をSEにやしちゃん(Ba)、ギギちゃん(Gt)、ルリちゃん(Dr)が登場。破壊的なドラムから1曲目「砂姫様」。攻撃的でおどろおどろしい空気が構築されたところでゴールドのドレスに身を包んだアヴちゃん(Vo&Key)が颯爽と登場。性急で暴力的な低音とファルセット、艶めかしいシルエット、俊敏で奇妙な手の動き――。呪術の儀式に迷い込んだのかと思うほど怪しく、研ぎ澄まされた空間に、ひたすら胸がざわつく。
間髪入れずに昭和歌謡テイストの「待つ女」へ。吐き捨てるように声を出しながら舞うアヴちゃん。背徳の美とでも言おうか。体の内側をむき出しにするように感情をさらけ出す、その生々しさに釘付けになる。アヴちゃんはシルバーのトップスにゴールドの超ミニ・スカートに様変わり。“みんなが欲しいモン、ワタシには分かるわ。何が欲しいか、ほんまに分かんねんで……これやろ”という彼女のMCから「デスコ」。うねるフロアに舞う色とりどりの羽根扇子、生きていることを刻みつけるように耳を劈く音像。何て刹那的な空間だろうか。雪崩のような焦燥感は美しく、恍惚とする悦楽チューンであるにも関わらず涙腺が緩む。
ステージの上には楽器と機材のみの非常にシンプルなステージ。なのに五感を支配するこの迫力は何か――独特のファッション、パフォーマンス、轟音も勿論そうだが、これら全ての源にあるのは彼女たちの気魄だ。ギギちゃんのギターは心臓を抉るように歪み、やしちゃんのベースは厭世感を醸す重圧。ルリちゃんのドラムは狼の遠吠えのように切なく、高らかに響く。そして、危うさを孕むアヴちゃんのヴォーカル。本能で突き動かされる精神力、そこには純という言葉しか存在しない。「コスモ」に“今にも崩れそうな砂の城を守るため”という一節があるが、これは彼女たち自身のことを形容している気がしてならない。崩れそうな自分たちが笑顔で生きるために命を削っているように思えた。
アンコールで「火の鳥」「人魚姫」を披露するとMCタイムに。流麗で柔らかい関西弁でテンポ良く繰り広げられるアヴちゃんのお喋りに思わず笑みが零れる。物販紹介やツアーの思い出話に触れた後、彼女はこう語った。“ワタシたちいろんなことが謎に包まれてるからいろいろな憶測があると思うけど。根底にはほんまに、みんなに好きなカッコしてほしいし、好きに生きてほしいっていうのがあるんですね”“したいカッコして指差されても、これが流行りやし! くらい言えるような女王蜂になるんで” そう語る彼女の目は真っ直ぐで、とても真摯だった。彼女たちの音楽やパフォーマンス、ファッションは、彼女たちの持つ“純”が具現化したものなのだと改めて痛感した。
その後新曲を2曲披露。チャーミングな面が覗けるゴキゲンなナンバーや、骨太ロックンロールだ。キラキラした四つ打ちと轟音が入り乱れる「八十年代」に続き、アヴちゃんが“心を込めて”と一言告げ演奏された「燃える海」で激しく、そして優しく90分のステージに幕を閉じた。
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