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LIVE REPORT

Overseas

HARD-FI

Skream! マガジン 2012年02月号掲載

2012.01.08 @恵比寿LIQUIDROOM

Writer 沖 さやこ

NANO-MUGEN FES.2009以来、約2年半振りとなるHARD-Fiの来日公演。それが昨年夏にリリースした3rdアルバム『Killer Sounds』を引っ提げてのジャパン・ツアーともなれば、そりゃあテンション上がるのが必然ってモンで、開演前からフロアの熱視線と歓声がステージに向けられる。暗転し、ムーディなSEが流れる中、待ち切れなかったと言わんばかりの勢いでフロントマンRichard Archerが先陣を切って我々の前に駆け抜けてきた。

1曲目は1stアルバム『Stars of CCTV』から鍵盤の音としっとりしたマイナー・ナンバーのバランスが心地良い「Tied Up Too Tight」。ハンズ・クラップとシンガロングで、思い思いにオーディエンスが揺れる。Richardは情熱的に力強く歌い上げ、Ross Phillipsのギターは瞬発的に作用する。そして、ブリブリのベースを鳴らすKai Stephensとのハーモニーも聴きどころの「Gotta Reason」へ。フロアのハートを鷲掴みするように音が押し寄せる。“戻って来れて嬉しいよ東京! それじゃあニュー・アルバムから……「Good For Nothing」!”とタイトル・コールから間髪入れずイントロが流れる。4人が生み出すリズムが、会場をエスコートするように広がってゆく。Richardの鍵盤ハーモニカの音色が紫の照明に溶ける「Cash Machine」。やはりHARD-Fiのライヴは“男臭い”(勿論良い意味で)。汗まみれになって全力で、ハートを燃やすように音を鳴らしていく。バンド・サウンドの中にプログラミングを入れるとスマートにまとまることが多いものだが、彼らの場合決してスタイリッシュに収まらない。この暑苦しいまでの男気が、どこまでも真っ直ぐでこれでもかとギラギラしているのだ。そんな熱さが最高にクール。だからこのバンドは“粋”なのだ!

曲が終わるごとに彼らは何度も“Thank you”や“アリガトウ”と口にし、パーティ・ムードのフロアに笑顔を向ける。MCの流れからそのままKaiが“Hey hey hey hey…”と歌い始め、フロアも歓声と共にシンガロングし「Suburban Knights」へ。Rossのギターが鋭く炸裂し、それに呼応してフロアのジャンプも止まらない。彼らが重ねる音は全てRichardの歌に集まってゆく。確かに彼のヴォーカルは綺麗にメロディが出ないこともままにある。だがそんなことなどまったく気にならないくらいの潔さと音を引っ張るパワー、確固たる自信が彼の声には詰まっている。「Move On Now」はRichardがひとりでステージに残り、テレキャスターを弾き語り。しっとりと情熱的に歌い上げる彼は、全てが研ぎ澄まされていた。会場中が釘付けだ。再び4人になり演奏された「Television」は極上にハッピーな空気に溢れていた。抱えている悩みを全部食べてくれちゃうような、不器用だけどあたたかい空気感。これが彼らの優しさの形なのだろう。

アンコールでは「Stay Alive」の後にメンバーが軽くミーティング。すると急遽THE CLASHの「I Fought The Law」を披露! 思いがけぬカヴァーに会場も驚喜する。ストレートに感情を表す、余計な小細工など一切存在しない名曲。様々なバンドがカヴァーしてきたが、今の時代にここまで自分たちのもののようにバッチリきめて歌えるバンドは彼らくらいなのではないだろうか。何度も感謝の言葉を述べた彼らは、日曜の夜に相応しいナンバー「Livin 4 The Weekend」で会場を後にした。約90分のステージ、彼らは最初から最後まで“情熱”を貫き通した。

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