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LIVE REPORT

Overseas

FLEET FOXES

Skream! マガジン 2012年02月号掲載

2012.01.20 @新木場STUDIO COAST

Writer 山口 智男

ライヴの当日、ネットを通じて、ドラマーのJosh Tillmanがバンドを脱退するというニュースが世界中に伝えられた。なんと! じゃあ、今夜のライヴは誰がドラムを叩くんだろうと思ったら、今回の東京公演を最後に、Joshはバンドを離れるということだった。
新世代フォークの旗手、いや、現代のロック・シーンに “フォーク”というトレンドを定着させ、一躍――もっとも本人達がそれを望んでいたとは思わないけれど――時代の寵児となったシアトルの6人組、FLEET FOXES。彼らは昨年5月、2作目のアルバム『Helplessness Blues』をリリースしてからこれまで世界各地をツアーしてきた。その間、このアルバムは全米アルバム・チャートの4位に食い込み、Steve Earle、Gillian Welch、Eddie Vedder(PERAL JAMの!)ら大物とともに第54回グラミー賞のベスト・フォーク・アルバムにノミネートされるという前作を上回る大成功を収めた。
少なくない人たちがこの日を待っていた。
ようやく実現したFLEET FOXES待望の初来日ツアー。その最終日となる東京公演は奇しくも『Helplessness Blues』発表後のツアーの終着点となった。彼らが続けてきた長い旅がひとまず終ろうとしている。旅の終わりを見届けようと多くの人が寒空の下、新木場STUDIO COASTに集まった。
照明が消え、 “ウー” “ウー”とヴォーカルのキーを合わせるハミングに導かれるように演奏は『Helplessness Blues』収録の「Plains / Bitter Dancer」で始まった。冒頭のサイケデリックなハーモニーに、いきなり気持ちを鷲掴みにされた。バック・スクリーンに映し出された舞い落ちる雪の映像に思わず、ため息がもれる。2曲目の「Mykonos」ではコーラスをまるで木霊のように響かせた。
音の桃源郷――そんな言葉が頭に浮かぶ。
Robin Pecknold(Vo&Gt)の力強い伸びやかな歌声とマンドリン、フルート、ピアノ、ペダル・スティール、ヴァイオリン、サックスといった楽器を曲ごとに持ちかえながら美しいハーモニーを重ねるメンバーの演奏が作り出す緊張と静寂(!)。曲が進んでいき、そこにライヴならではの躍動感が徐々に加えられはじめると、客席から歓声や手拍子が起こった。
“ウェルカム・トゥ・ジャパン!”
外国人らしき観客が叫び、 “サンキュー、アメリカン・ガイ!”とRobinが声援に応えた。
アルバムを聴き、抱いていたFLEET FOXESというバンドの印象がいつしか全然違うものに変わっていた。
ライヴを重ねてきた結果なのか、元々、ライヴにおいて、彼らはそういうバンドだったのか? アルバムと全然違うと言うよりは、アルバムの世界観を何倍にも膨らませ、イマジネイティヴに表現したと言ったほうが正しいだろう。曲が持つ美しさと力強い演奏に圧倒された。圧巻は「The Shrine / An Argument」。ドラマチックな演奏は激しさを伴いながらサイケデリックな空間の広がりとともに現代屈指のロック・バンドの姿を強烈に印象づけていた。
その後、「The Shrine / An Argument」の熱気を落ち着かせるように「Blue Spotted Tail」「Grown Ocean」と『Helplessness Blues』の曲順通りに本編を締めくくると、アンコールはまず、Robinが一人でステージに現れ、観客のリクエストに応え、弾き語りで1曲歌ったあと、今回のツアーで演奏している新曲「I Let You」を披露。その後、バンドが加わり、「Sun It Rises」「Blue Ridge Mountains」、そして「Helplessness Blues」を演奏した。
まるで名残を惜しむような後半の展開も含め、躍動感あふれる「Helplessness Blues」は、ライヴの最後を飾るにはぴったりの1曲だった。彼らの旅の終わりと、そして新たな旅立ちを祝福しているような演奏がダメ押しで感動を胸に焼きつけた。
FLEET FOXESの新たな旅が、僕達に何を体験させてくれるのだろうか。多いに期待している。

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