
Overseas
Stevie Wonder

2010.08.08 @千葉マリンスタジアム&幕張メッセ
Writer 島根 希実
いよいよこの時間がやってきた。本日のヘッドライナー、生きる伝説の一人Stevie Wonderである。野外でありながらマリンスタジアムに立ちこめる期待と興奮は既に飽和状態で、先走る客席からは、登場タイミングを勘違いしたのか何度も拍手と歓声が上がっていた。
ステージ前方、ど真ん中のピアノを中心に、それを囲むようにバンドがいるのだが、一見しただけでは何人いるのか分からないほどの人数(キーボード×2、ギター×2、トランペット、サックス、ベース 、ボンゴ×3、etc)、そしてステージ前方、向かって右側には3人の女性のコーラスもいた。彼らが一斉に演奏開始すると、まぁその華やかなこと!そして「My Eyes Don’t Cry」の演奏響く中、ハーモニカを吹きながら主役が登場だ。
第一声で「Hello!TOKIO!」と挨拶し、プレイされた「Master Blaster」で早くもコール&レスポンス。Stevieが「とっても あいしてる」なんて歌えばスタジアムからは観呼の声が湧き上がる。夏真っ盛りの熱くグルーヴィなステージかと思えば、そのハイトーンのヴォーカルの抜けるような爽やかさで涼ませてくれた「If You Really Love Me」。「Ribbon In The Sky」「Stay Gold」「Lately」という3曲のメドレーでは完全に夏の暑さなんてどこへやら、甘く心地よいヴォーカルに酔っていく。
「みんなに、僕に歌を歌ってほしい。」そう言ってプレイされたのは昨日のヘッドライナーであるJAY-Zの「Empire State Of Mind」。そのまま「Higher Ground」「Don’t You Worry ‘Bout A Thing」でごきげんに盛り上がると、スタンディング・エリアはみんな腰を振ってダンスフロアと化していた。日本人ってこんなに情熱的かつファンキーでしたっけ?
日本デビューを果たしたばかりの息子Mumtaz Wonderと共に歌ったのは「My Cherie Amour」。緊張し声がかすれるMumtazに、しっかりと寄り添いサポートするように見つめるStevieが印象的だった。そしてStevieの掛け声でスタジアムに響き渡るシンガロング。
一音一音、全ての楽器が生きている、音が一つ一つ花開いていくのが分かるような演奏のステージを見ていて思いだしたことがある。Stevie Wonderって目が見えないんでした!だからこの人は全ての音に特化しているという印象を受けたのかもしれない。目を閉じてみても、その色は失われず、まったく見劣りしない鮮やかな音。そして真っ直ぐにのびていく、希望に満ちたヴォーカル。この日のハイライトの一つ「I Just Called To Say I Love You」で“I Love You”というシンプルな言葉をStevieが歌う度、フロアのウェーヴと一緒に“愛してる”という言葉が言霊のように会場に浮かび上がっていた。Stevieの声と音には、音楽への無垢で、ためらいのない絶対的な信頼のようなものがあるのだ。
“携帯に録音して誕生日になる人に送ってもいいよ”なんて言って歌ってくれた「Happy Birthday」では会場から眩しいほどの喜びの声が上がり、ラスト「Another Star」でフロアは再びの灼熱のダンスタイムへ突入。Stevie は最後の言葉「とっても愛してます」を伝えると、ステージ上に呼んだファミリーと手を繋いで一礼し、大きく投げキスをしてステージをあとにした。
Stevieが歌った“愛”と“平和”が余韻のように残る中、SUMMER SONIC 2010の終わりを告げる花火が盛大にあがった。夜空に咲き誇るこの大輪の花すら、あの圧倒的なパワーのエンターテイメントと、純真無垢に音楽を鳴らせるミラクルの前では見劣りしてしまう気がした。
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