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LIVE REPORT

Japanese

The Gentle Flower.

2025.07.31 @Spotify O-Crest

Writer : 高梁 渚 Photographer:マチダナオ

7月2日、The Gentle Flower.が2nd EP『(Re)By my side』をリリース。本作を引っ提げた東名阪、そして地元群馬でのツアーの大千穐楽が7月31日東京、渋谷はSpotify O-Crestにて開催された。7月に4公演、合計10組のアーティストをゲスト・アクトに迎えたツアーもここが最終地点。KAKASHIとカラノアをゲスト・アクトに迎えた本公演をレポートする。

酷暑の2025年夏も折り返しが近づいてきた7月31日、The Gentle Flower.の地元群馬県の先輩にあたるバンド KAKASHI、ドラマ主題歌でも注目を集める気鋭のバンド カラノア、そして今回の主役であるThe Gentle Flower.の3組が渋谷に会した。夕方18時に開場するとこの大千穐楽を心待ちにしていたリスナーたちが続々と入ってくる。
それぞれのバンドのグッズのみならず、2nd EP『(Re)By my side』のジャケットが落とし込まれたTシャツを纏う観客、仕事帰りに駆けつけるリスナーも多く、彼等の音楽を日頃から楽しんでいることが窺えた。

定刻18時30分を回ると最初に出てきたのはカラノア。昨今の活躍が目覚ましいルーキーがクラップを煽りながら登場すると、フロアはこれから始まる夜への期待を孕んだ拍手に満ちた。
口火を切るのに相応しい爽やかなロック・チューン「ねむ」でカラノアの出番がスタート。サビになるとフロアの拳が一気に上がる。言葉の応酬で捲し立てていく2コーラス目でしっかりフロアを着火すると、サビで上がる拳がさらに増えていく。しっかり言葉を聴かせるラスラビと、緩急を付けながら2曲目「えいよー!」に向かってカラノアは走っていった。若手ながらフロアを煽りながらまざまざと魅せるパフォーマンスは目を見張るものがある。
"よろしくお願いします!"と曲頭に入れ込みながらライヴを続けていくカラノア。彼等にとってSpotify O-Crestは2年ぶりだという。主宰のThe Gentle Flower.に"呼んでくれてありがとう"と感謝を述べて出番の中盤に差し掛かると、これまでのテンションとは一変、"ダンサブルなロック"を聴かせて踊らせるパートに突入した。6曲目に披露した「Paradise」は、7月にリリースしたEP『ネオンテトラ』の中で、最もトリッキーとも言えるダンス・ナンバー。エレクトロな音も交ざりミクスチャーな雰囲気を纏っている、カラノアの幅をこちらに分からせる一曲だ。1番のサビに出てくるリズミカルな"よいよいよい"に合わせてバウンスするフロア。ギターの小刻みな音たちが我々をカラノアワールドへ誘っていく。
雄大(Vo/Gt)は"楽しんでいますか?"と笑顔で問い掛ける。本公演でトップバッターという役務を担ったカラノア。"2組がこのまま行けるように突っ走る"という気概を伝え、出番のラストに向かってさらに3人は我々を温めてくれた。
いよいよカラノアの出番もラスト・スパート。7曲目の「MIREMIRE」から、オルタナティヴな要素を纏わせてさらに雰囲気を一変させていく。きっと初めてカラノアに触れ合ったリスナーは、一人残らず"こんな音も出せるのか"と思ったはずだ。センチメンタルなギター、心に歌詞を押し込んでくるドラム、心ごと震わせるベース――きらめき、ときめき、そして少しの儚さを我々に染み込ませていく。
雄大の"みんなで楽しみたい"気持ちのまま出番を締めくくったのは、テレ東系ドラマNEXT"雨上がりの僕らについて"オープニング・テーマに大抜擢された「aquarium」。軽やかで爽やか、ポップなハッピーなラヴ・ソングだ。これまでの10曲ですっかりカラノアワールドに惹き込まれたフロアが、どんどん笑顔になっていくのが見え、会場全体で幸せのギヴ・アンド・テイクが起こっていることを体感した。ラスサビ前、こちらに突き刺してくる"あなたに出会ってしまったんだ"から、"幸せ"の尊さを存分に語った歌詞。音だけでなくそこに充満するハッピーに身を委ねているフロアは、曲が進んでいくに連れてさらに綻んでいく。ハートフルな空気に包まれてカラノアのパートは終演した。

続いて登場したのはキラーフレーズでグッと心を掴みにくるKAKASHI。"地元の先輩! 群馬のKAKASHIです!"と言って1曲目「本当の事」から出番がスタートした。疾走感溢れる超絶ストレートなJ-ROCKチューンに一気にボルテージが上がったフロアは、縦に小刻みに揺れる。サビに入ると一糸乱れぬ動きでキックに合わせて拳で天を打っていく。3曲目「friends」でバンドがクラップを煽るとみんなが頭上でリズムを刻む。"僕らは大人になってしまったんだ"から始まるサビを浴びるフロアはみんな、目がキラキラとしていて、この時間だけはピュアに無邪気に、希望に満ちたあの頃に戻れる気がした。
"The Gentle Flower.の東京での挑戦に呼んでもらった"と話す堀越颯太(Vo/Gt)。地元を愛する"同志"であるThe Gentle Flower.の"先輩として何ができるか考えた"そうだが、"思う存分やること"に尽きたと話す堀越。そして"先輩に認めてもらった日、後輩に先輩と呼んでもらった日、全てが特別"と話すと4曲目「I know you」を披露した。"同じ痛みを持って/違う心を持って"と歌うこの曲はまるで戦う同志を勇気付ける、共に戦う曲に感じる。ロック・バンドと言えばこの熱気! という熱量を早速ぶつけてくれるKAKASHIに、フロアは拳と共に己の声をぶつけていく。6曲目「fuse」では冒頭から左右に腕を振って踊るリスナーも見られ、サビはフロアが一気に拳を上に突き上げる。狂おしい程にアツい空間ができあがっていく。
"13年間で一番カッコいいライヴをしに来た!"と叫び"遊ぼうぜ!!"と煽ると追い込みに入っていく。フロアと歌って盛り上がり、東京でツアー・ファイナルを開催する後輩、The Gentle Flower.を"誇りに思う"として、"The Gentle Flower.は群馬を大事にしている"と褒めながら、"(KAKASHIも)確実に何かを残したくてここにいる"と伝え、10曲目「変わらないもの」を投下。フロアに目配せをしながら歌詞をしっかり心に届けていく。"失うために/手にするものなど1つもないだろう"――未来に向かって今をときめく後輩たちへの激励に聞こえたのは筆者だけではないだろう。落ちサビからラスサビの最後の一節でグッと心を掴まれ、このメッセージを聴き入るリスナーたちが印象的だった。
The Gentle Flower.と初めて対バンをしたときの話に少し触れると、当時から"KAKASHIを知ってくれていた"と話す堀越。The Gentle Flower.がKAKASHIのファンから後輩になり、友達や仲間同然になっていったここまでの道を省みると、"あいつらが頑張っているかぎり(KAKASHIは)側にいる"と話した。"どうかあなたも"と締めくくると、The Gentle Flower.の金子大伸(Vo/Gt)が聴きたいと言っていた曲である「ドラマチック」を、ラストに演奏。
ここまで熱量と力強い歌詞でフロアを沸かせてきたKAKASHIだが雰囲気を一変させ、The Gentle Flower.と彼等を愛する会場全体を"愛"で包んでいく。力強くありながらもエモーショナルでセンセーショナルなサビでは、その場にいた一人一人がそこに乗せられている全ての感情を両手の拳を上げて浴びた。フロアに幸せと勇気が満ちてKAKASHIのパートが終演した。

そして大トリは今回の主宰であるThe Gentle Flower.。本日の主役の登場を今か今かと待ち侘びていたフロアは万雷の拍手で4人を迎えた。
"今日は挑戦"――金子が"今日を選んだあなたの意志を正解にする"と話すと1曲目「YELLOW」を披露。フロアの隅々まで見渡し、リスナーと目と目を合わせにいく金子に呼応するように、一人一人が拳を突き上げていく。空間を相互に作るコミュニケーションを森下祥伍(Gt)、尾崎 匠(Ba)、マナム(Dr)が楽しそうに見守る姿が印象的だった。2番のサビに向けてクラップしていくリスナーに向けて、"君と出会ったんだ"と語り掛けていく。
"楽しんでますか? 本当に楽しんでますか?"と笑いを交えながら話し始めると、ここまでのフロアを温めたカラノアとKAKASHIに向けて拍手と感謝を述べた金子は、平日木曜日にもかかわらずここに集まったリスナー一人一人に向けても感謝を述べた。"あなたのその日を特別にしたい"と伝えると"「お手を拝借」って言ってみたい"と、2曲目「サイダー」に続く。小刻みに縦に揺れながらサビを浴びていくフロアは、全身でThe Gentle Flower.の音楽を楽しむ準備は万端だ。3曲目「スロウダウン」では4人のパフォーマンスがまるで踊っているようだった。リズムに合わせてサビ前は手拍子が自然に沸き起こり、キャッチーなサビでは上にパンチをしてリズムを刻んでいく。サビ終わりの"スロウダウン"と歌う箇所では金子に合わせて叫ぶ等、この曲で"遊ぶ"リスナーが多く散見された。4曲目「片足の少年」は他人と違う自分を誇りながら、周りと一歩ずつ進んでいくメッセージの詰まった楽曲。間奏のギターの奔流に乗せられて楽曲の世界にグッと引き込まれていく。森下、尾崎、マナムのコーラスも力強く安心感があり、この曲に気持ちを委ねて明日からもまた頑張ろうと思うことができた。
金子が上着を脱ぐと5曲目「Fate」がスタート。これまでの"魅せるロック"から"聴かせるロック"にフェーズが移行したように感じた。情熱は灯されながらも甘酸っぱさと煌めきが放たれていく。曲中に金子が"未来を生きていくために、今を生きていくために、過去を肯定したい"とこぼすと、吸い込まれるように聴き入るリスナーの眼差しは誰のものもキラキラとしていた。続く「Starlight」では金子がギターを置くと、ステージの端々まで使ってフロアと空間を楽しむ様子が見られる。クラップからサビで左右にスイングしながら拳を上に突き上げていくリスナーからは、笑顔が溢れていく。ステージ上のThe Gentle Flower.にもそれが伝播し、会場全体がハッピーオーラに包まれた。
"等身大で、ありのままで「ただいま」と言えるバンドになりたいと思っている"と話す金子。The Gentle Flower.は"まっすぐに嘘がないように、目の前のあなたに歌うことを徹底している"という。心と愛を込めて伝えようとしている姿に心を打たれていると、"やりたいことを胸を張ってやって、明日を生きる"と続けた。その言葉を放つ金子の決意にも聞こえたが、同様にその場に立つ我々にも伝えてくれたように感じる。
The Gentle Flower.の出番、つまりこのイベントもいよいよ終盤に差し掛かる。またも一変して、夏の恋を憂うラヴ・バラード「線香花火」を奏でた。男性目線の曲だからこそ、金子の表現が切なさ、悲痛とも取れる言葉と相まって、センチメンタルに曲を紡いでいく。ストレートな歌詞を素直に心で受け止めるリスナーたちの琴線に触れ、彼等の目は潤んでいた。続くミディアム・バラード「弱虫とラブレター」もそのまま聴き入るリスナー。"君をセカイイチにできるよ"という歌詞が前曲と対比してより染み入っていく。サビはみんながじっと深く頷きながら、とにかく愛の溢れたその歌詞たちを受け止めた。
"これは別れじゃない。再会の歌"と言って9曲目「軌跡」を鳴らす。まもなく迎えるエンディング、エモーショナルに駆られながらもフロアが綻んでいくのが、序盤から広がるクラップから感じ取れる。ラスサビ前にクラップをもう一度煽ると、会場全体がこの日一番の団結を見せた。"あなたと僕たちの選択の先に今日みたいな日があると思うと愛しい"、"必ず生きて未来でまた会いましょう"と伝えて残すは2曲に。10曲目「スペースダイバー」でマイクをスタンドから外した金子は、フロアを隅々まで見渡していく。サビに向かって余力を使って煽るとフロアは応えるように拳を上げる。音楽ライヴではよく"グルーヴ"という表現が使われるが、この様はそれを超えた一種の"ムーヴメント"と化していた。拳を天に伸ばしながら、叫びながら歌いながら揺れながら、歌詞と込められたメッセージを確実に受け止める。"今の僕たちに残っているのは愛だけ"。合間に金子が放った言葉が印象的だった。そして本編最後の曲「有名になったら」に突入。曲が始まるとクラップに包まれるフロアと、ステージが、互いに全てのパワーを出し切っているからこそいっそう音色が、リズムが、歌詞が心に響く。楽曲が終わりに近づくにつれて魂をぶつけ合っているような一体感とエネルギーが生まれ、"今日のことを忘れないように!"というメッセージを残して本編が終了した。

まだまだパワーが残るフロアからはすぐにアンコールが求められた。The Gentle Flower.がステージに戻ってくると、シャツを着替えた金子が最後のMCを始める。そこではThe Gentle Flower.にとっての"さらなる挑戦"の告知がなされた。7周年を迎える、来たる11月10日に下北沢 LIVE HOUSE MOSAiC、近松にて、The Gentle Flower.主催の2会場往来型サーキット・ライヴ"Light up"の開催決定である。"Light up"は今回で10回目を迎える自主企画イベント。"地元群馬の音楽シーンに光を"というコンセプトで、2019年からThe Gentle Flower.が不定期で開催しているものだ。今回は全国各地の未来を担っていく複数のバンドと共に、"日本の音楽シーンに光を"というメッセージを込めて開催。キャリア最大規模且つ2会場を往来するサーキット・ライヴの形式を持って行われる。会場からは鼓舞する大きな拍手が送られ、この夜を締めくくる最後の曲に差し掛かるところだったが、急遽セットリストを変更して、サブスク未配信の曲「前兆」を披露。"全て削って帰る!"、"ついてきてくれ渋谷!!"と煽ってステージとフロアがこの日一番のボルテージに達した。サビでフロアも余力を振り絞って拳を突き上げ、感情を剥き出しにぶつけていく。金子が天を仰ぎ最後の音が鳴り止むと、はち切れんばかりの拍手が会場を満たし、本公演が終了した。

終演後、しばらく会場内ではドリンクを片手に感想を友人と語り合ったり、物販に並んだり、各々の過ごし方で会場に漂う熱気の余韻に浸りながら過ごしていたが、みんな笑顔だった。リスナーたちにも"出し切った感"があり、本気で3組に向き合い、その場を楽しみ、音楽を浴びていたのだろう。どのバンドも与えられた時間内で世界観を色濃く出して惹き込み、我々を離さなかった。3組が音楽を愛し、ひたむきにロックとパフォーマンスと向き合っているからこそだろう。

カラノア、KAKASHI、そしてThe Gentle Flower.がこの空間を楽しみ、それを我々に愛を持って音楽として届けてくれたことで、この濃厚な3時間、間違いなくThe Gentle Flower.が愛され、誰からも期待されていることが保証されたと言えよう。愛され力だけではない。もちろん楽曲もパフォーマンス力も十二分だ。この熱量、この愛情――この公演、次世代のロック・スターが誕生した瞬間に違いない。

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