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LIVE REPORT

Japanese

加藤里保菜

2025.07.20 @LIVE STUDIO LODGE

Writer : 長澤 智典 Photographer:尾田(SKIYAKI.inc)

"D4DJ"の青柳 椿(燐舞曲/Vo)役としても有名、舞台役者、声優を中心に活動中の加藤里保菜が満員の観客たちを前に、初めてのワンマン"加藤里保菜 1st LIVE「りほなつ日和。」"を行った。"D4DJ"を通しては大きなステージでのライヴも多く経験しているが、彼女自身の"キャラクターを通してではない、素顔の加藤里保菜を皆さんにお届けしたい"という思いから行った今回の公演。この日は、舞台上のテーブルにランタンやキャンドルライトを置き、ライヴハウスを"夜のキャンプ場のテントの中"に見立て、みんなで素敵な夏の一夜を過ごそうと装った。披露した楽曲も、オリジナル曲はもちろん、他のアーティストとのコラボ曲、この日のテーマに据えていた"夏の想い出(なつ日和)"を題材にした曲のカバー等を中心に構成していた。

最初のブロックでは、コラボ曲を並べて歌唱。冒頭を飾った「ロリータ田舎に生まれ」で彼女は、人肌の温もりのような声で優しく歌い掛けた。ハートウォームな雰囲気とは裏腹に、フロアからは騒ぎたくてウズウズしている空気も伝わってくる。「途切れて続く」、「メロウチューン」でも、加藤は一つ一つの言葉に気持ちを込め、思いを馳せるかのごとく歌っていた。曲を重ねるごとに、熱を抱いた心がどんどん色付くようだった。

続いては、ピアノの演奏に乗せてのカバー・ブロックへ。サカナクションの「怪獣」を、抑揚のある声で演奏を引っ張るように歌い上げ、UNISON SQUARE GARDENの「シュガーソングとビターステップ」を、心が跳ねるよう軽やかに、しかも早口で歌い上げる姿が印象的だった。夏を舞台にした、サザンオールスターズの「真夏の果実」やフジファブリックの「若者のすべて」では、歌詞に綴られたノルスタルジックでセピア色の景色に、歌声の絵筆で少しずつ淡い彩りを加え、一人一人の心に忘れたくない夏の想い出の景色を映し出していく。曲に合わせ、歌詞に綴られた心模様を際立てるように歌唱。ピアノ演奏のみを背景にしているという理由もあるが、原曲とはいい意味で異なる、それぞれの曲の持つ景色を鮮やかに浮き彫りにしていたのも印象的だった。

2024年7月に配信リリースした「故郷」では、胸に手を寄り添え、地元の茨城県に住みながら夢を追い求めていた頃の自分の気持ちを思い返すように、温かな声で歌う。その思いに観客たちも気持ちを寄り添わせ、少しでも彼女と同じ青春の香りを感じようとしていた。続いて新曲「ただいま、つくば山。」が始まった途端、ウズウズしてきた気持ちを思い切り爆発させようと、フロア中の人たちが総立ちになり、力強く元気いっぱいに歌う加藤と一緒に拳を振り回し、"オイ! オイ!"と大きな声を上げて騒ぐ。

最後のブロックでは、加藤はアコースティック・ギターの弾き語りで歌唱。人前では5年ぶりの披露という理由もあり、必死にコードを追いかけながら、ZONEの「secret base ~君がくれたもの~」と、本名陽子の「カントリー・ロード」をカバーする。自分のリズムで歌えるのもあり、慣れない演奏ながらも、観客たちの手拍子もしっかりと自身のペースに巻き込みながら届けてくれた。最後は、再びピアノ演奏をバックに、今度はオケではなく生演奏で「故郷」を歌唱。一言一言に想いを巡らせ、気持ちを込めて歌う彼女の声に、満員の観客たちも手やペンライトを揺らしながら、同じように思いを寄り添わせていた。

どの曲もそう。役者ではなく、心の化粧を落とした素顔の加藤里保菜として歌っていたように思う。"これがいつもの私だから"と気心の知れた友達へ向けるような、飾らない、茶目っ気のある姿を見せてくれたのが嬉しかった。


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