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WHISPER OUT LOUD

Skream! マガジン 2025年03月号掲載

2025.02.11 @代官山UNIT

Writer : 菅谷 透 Photographer(WHISPER OUT LOUD):村上凌一、小泉勇也

WHISPER OUT LOUD(以下:WOL)が、自主企画[WHISPER OUT LOUD pre. "KEYS IN PURPLE"] を代官山UNITにて開催した。ラウド・シーンで頭角を現した彼等が敬愛する先輩バンドのNewspeak、FIVE NEW OLDをゲストに迎え行ったライヴは、タイトルが示す通りに新たな世界への扉を開くための鍵となる一夜になった。

1番手を務めたNewspeakは、雄大なサウンドスケープでエモーションを届ける「Blue Monday」で一気に観客の心を掴むと、続く「Wide Bright Eyes」ではダンサブルなグルーヴとコーラスで一体感を生み出していく。"代官山、もっと行けますか?"というRei(Vo)の問い掛けから「Leviathan」で弾みをつけると、「Before It's Too Late」では温かみのあるサウンドで包み込む。中盤では"バラードで重たい曲だから短いセットでは普段やらないんだけど、彼の熱い気持ちを聞いたから"と、WOLのMotokichi(Vo)が好きな曲だという「Be Nothing」をプレイ。ピアノ弾き語りから衝動的なバンド・サウンドへと移ろい、感情を爆発させていくナンバーでドラマを描いた後は、踊れる「State of Mind」、「Bleed」へシフト・チェンジし、表現力の幅を見せつけていた。Yohey(Ba)が"これからシーンを作っていくやつらなんだろうと思ってます"とWOLを称えると、Reiも"後輩みたいな感じで来てくれるけど、そういう接し方は苦手で......だから友達になってください"とコメント。今後また両者が共演する機会にも期待が持てそうだ。ラストに披露された、挑戦する人々の背中をまばゆい光で後押しする「White Lies」は、彼等なりのWOLへのエールだった。

続くFIVE NEW OLDは、ゴスペルをフィーチャーした「By Your Side」でスタートすると、コール&レスポンスを経た「What's Gonna Be?」で洒脱なダンス・ホールへと会場を染め上げていった。HIROSHI(Vo/Gt)はNewspeakのReiのMCを引き合いにし、"僕はがっつり先輩で(WOLに)カッコいいところを見せたいと思います"と冗談めかして語っていたが、この日のステージはまさに手加減なしの、ライヴ・バンドとしての確かな実力が見える内容に。これもWOLを強敵(と書いて"とも")と認めたからこそなのだろう。キレのあるビートに高速ラップが冴え渡る「Liberty」、叙情的な音像を描く「Rhythm of Your Heart」は、幅広い音楽性を持つ彼等の面目躍如だ。

中盤では、WOLがライヴ前にカバー動画を投稿していた「Home」を披露する場面もあり、両バンドが共有する価値観が窺えた。HIROSHIは占いで"一生の親友ができる"という結果が出たそうで、"それは今日なんじゃないか"と、WOLはもちろん、会場にいる観客や未来のバンドマンとの出会いを祝福。ラストはダイナミックなアンサンブルで身体を揺らす「Trickster」、「Don't Be Someone Else」をプレイし、濃密なセットを締めくくった。パンク・シーンをスタート地点に、豊かな音楽性でキャリアを重ねてきた彼等の歩みは、WOLが目指す場所への指針となるのかもしれない。

セット・チェンジを経て、Motokichiが単独でステージに登場。"時間が巻いてるみたいなので"と声出し練習をしてからスタートしたWOLのアクトは、シネマチックなオープニング映像がスクリーンに投映され、冒頭から超ド級のスケール感だ。1曲目の「Stay」では、ライヴの直前に公開されたMVでも印象的な赤と青のライティングを纏い、ドラマチックなサウンドとMotokichiの繊細でありながら強烈なヴォーカルで、観客を圧倒。続く「One More Time」ではTK(Ba)の軽快なビートがフロアを揺らしていき、「Take Control」ではKanatoのシンプルだがキャッチーなリフや、流麗なソロといったギター・プレイが躍動した。

ドラムンベースを思わせる疾走感の「Save Me」、メロディックな「True Self」と幅広いサウンドを提示しながら、一本筋の通った印象を受けるのは強固な演奏力と表現力の証明だろう。MCでMotokichiは、現体制で約3年活動してきたなかで、その唯一無二の音楽性で時に疎外感を感じることもあったと告白。それでも自らのスタイルを提示し、もう一つ上のステージへと歩を進めるためにこの日のライヴを設けたのだという。そんな過酷でもあった運命へと立ち向かい続ける意志を歌った「Face My Fate」は、熱を帯びた演奏でより重みを伴って響いていた。ライヴならではのフィジカルなアレンジで届けられた「Aster」を経て、「STEP」では着実に歩みを進めていく決意を歌に込める。とびきりダンサブルな「Magic」と、ラウドなサウンドで狂わせる「27club」の対比も見事で、フロア最後方に至るまで熱気が伝播していた。そんな一体感をラスト・ナンバーの「Memories」へと繋げ、目の前の壁をブチ破るような爽快感でエンディングを迎えた。

異なるシーンの先輩バンドを迎えながらも、見事に共存/共鳴できることを示したこの日のライヴ。MCでは今後の活動予定としてEPの制作、自主企画"KEYS IN PURPLE"のエクストラ・ショーやCrowsAlive、Good Grief、UNMASK aLIVEとのスプリット・ツアーも告知されており、その際にMotokichiは、占いの本で"積み重ねたものが爆発する年"になるという結果が出たと語っていたが、この一夜はまさに今後の躍進の第一歩と言えるだろう。すでに会場のキャパシティを超えたスケール感を持つパフォーマンスを展開するWOLが、新たなシーンと交わったことでどのような化学反応を起こしていくのか、期待しかない。

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