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LIVE REPORT

Overseas

TUK SMITH & THE RESTLESS HEARTS

Skream! マガジン 2024年11月号掲載

2024.09.29 @渋谷CLUB QUATTRO

Writer : 菅谷 透 Photographer:Teppei

"遅れてきたピュア・ロックンローラー"ことTuk Smith(Vo/Gt)率いるTUK SMITH & THE RESTLESS HEARTSが、初の来日公演を東京と大阪で開催。ノスタルジックであり、フレッシュでもある普遍的なロックンロール・サウンドで、集まった観客と熱狂的な一夜を作り上げた。

東京公演の舞台である渋谷CLUB QUATTROでは、観客が開演前からBGM(THE POLICEの「So Lonely」)に合わせて手拍子を鳴らしていて、日本での初ライヴへの期待感と高揚感が一目で分かる。照明が暗転しメンバーが登場。最後に姿を現したTukがギターをかき鳴らすと、8月にリリースされた最新アルバム『Rogue To Redemption』の収録曲である「Little Renegade」のイントロへ。"ロックンロール・ショーに来てくれてありがとう!"というひと声で、ライヴの口火を切った。力強いだけでなく渋みもある歌声を響かせるTukに、クールに情熱的なギターを奏でるTobin Dale、ズシンと響く迫力のビートを叩きつけるMatthew Curtis(Ba)、Nigel Dupree(Dr)のリズム隊が組み合わさったサウンドはラウドだが耳障りではなく、足元から突き動かされるような衝動となって伝わってくる。

冒頭から全開の演奏に、観客が手を掲げたり頭上でクラップしたりと熱のこもった反応を示せば、その光景を見てTukが"みんなは今までで最高のオーディエンスだよ"と笑みを浮かべ、喜んだ観客がさらにボルテージを上げていく好循環が生まれていた。爽やかに疾走する「Glorybound」や「Same Old You」、シンプルでダイナミックなリフがうなる「Lookin' For Love, Ready For War」と続けると、「Shadow On The Street」では蠱惑的なフェイザー・サウンドから開放的な歌メロが提示され、シンガロングも巻き起こる。華やかなアクションを続けるTukの存在感、シンプルなステージ・セット、そしてスマホよりも手を掲げ熱狂する観客――これらの要素が重なって、かつてのロック黄金時代にタイムスリップしたかのような感覚へと陥ってしまった。この日を実現させたプロモーターやレコード会社、会場に集まったファンへTukが"ロックを信じてくれてありがとう"と想いを伝えた後は、ハード・ロックのエッセンスを感じさせるツイン・リードから「Girls On The East Side Of Town」を披露。フロア全体に広がった一体感は、Tukが言うところの"ロックンロール・チカラ(力)"を体現していた。

スライド・バーを用いたTobinのブルージーなソロからは、アコースティック・パートへと突入。「Blood On The Stage」でウェットな雰囲気に惹き込むと、オープニングで演奏された「Little Renegade」のリイマジンド・バージョンも披露された。『Rogue To Redemption』日本盤ボーナス・トラックに収録されている楽曲だが、ライヴでの演奏はこの日が初めてだったそうで、来日を待ち望んでいたファンへのスペシャルなプレゼントとなったことだろう。情感豊かな展開の「Everybody Loves You When You're Dead」でこのパートを締めくくった後は、必殺リフの「Ballad Of A Misspent Youth」で再び加速。「What Kinda Love」ではハイトーンのシャウトが炸裂し、フロアも呼応するように熱量を爆発させていく。ウイスキーの瓶を回し飲みして弾みを付けると、「Ain't For The Faint」、「Runnin' With The Wild Ones」でクライマックスへ。Tukが観客一人一人に視線を送りながら合唱を扇ると、マイク・スタンドを倒してもお構いなしの情熱的なパフォーマンスで本編を終えた。

自然発生したTukコールを受け、再びステージにメンバーが登場。Tukは"俺が好きなこういうロックンロールは、アメリカでは日本程ビッグじゃない。だからずっとこの国に来たいと思っていたんだ。みんな本当にぶっ飛んでるよ"と感謝を述べると、ラストは「Take The Long Way」を披露。紆余曲折のキャリアを歩んできたTukが、回り道を経て辿り着いた遠い異国の地で作り上げた、幸福感に満ちた光景に胸が熱くなった。遅れてきた――つまり今の時代に間に合ったロック・スターは、ヴィンテージなロックの灯を現代、そしてこの先へと繋いでいくようなステージを見せてくれた。これからもTukは、"ロックンロールの力"を我々に伝えてくれることだろう。


[Setlist]
1. Little Renegade
2. Glorybound
3. Same Old You
4. Lookin' For Love, Ready For War
5. Shadow On The Street
6. Girls On The East Side Of Town
7. Blood On The Stage
8. Little Renegade (Reimagine)
9. Everybody Loves You When You're Dead
10. Ballad Of A Misspent Youth
11. What Kinda Love
12. Ain't For The Faint
13. Runnin' With The Wild Ones
En. Take The Long Way

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