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LIVE REPORT

Japanese

Aooo

Skream! マガジン 2024年11月号掲載

2024.10.18 @新宿 東急歌舞伎町タワー前 シネシティ広場

Writer : 石角 友香 Photographer:Kato Shumpei

Aoooが1stアルバム『Aooo』のリリースを記念して、新宿 歌舞伎町のど真ん中をジャックし、フリー・ライヴを敢行。ファンはもちろん、その場に居合わせた人たちの足も止めたパフォーマンスは令和ジャパンのスーパーバンド誕生を予感させた。

もはや言わずもがなだが、現在のネット・ミュージック・シーンを代表するクリエイターであるすりぃ(Gt)とツミキ(Dr)、YOASOBIの"Coachella Valley Music and Arts Festival"でのステージ等、大舞台でのサポート経験豊富な女性ベーシスト やまもとひかる、そして赤い公園以来のバンドとなる石野理子(Vo)。このメンバー構成だけでもキャッチーだが、肝心なのは彼等のバンドをやりたいという初期衝動と、その意思を具体化した1stアルバム『Aooo』の勢いと完成度の両立にある。ちなみに全曲、一発録りによる本作。4人のキャラクターとバンド・サウンドの旨みが高度に凝縮されている。

霧雨に煙る歌舞伎町。続々と集まってきたオーディエンスは、ヴィジョンに映し出される映像を楽しみながら4人の登場を待つ。この場所でライヴが行われることへの興奮はやはり現場ならではの体感だ。19時になるとバックヤードから出てくるメンバーが映し出され、ステージに登場した4人は右手からすりぃ、石野理子、やまもとひかる、ツミキと横一列の配置。スターターはアルバム同様「FLASH FORWARD」で、ゴリゴリのギター・ロックであり、またやまもとの図太いベース・プレイが凄まじく映える。しかも歌詞は"思惑が煙る新宿通り"で始まる、このシチュエーションに似合いすぎるナンバーだ。一瞬で駆け抜けるこのショート・チューンに続き、畳み掛けるように「サラダボウル」に突入。4人全員がフロントマンのようなこのバンドの強みが一瞬にして伝播した。

石野の"「青い煙」!"というタイトルコールに歓声が上がると、後押しされたのか、さらにアクティヴにパフォーマンスする石野。彼女の哲学が反映された凄烈な歌詞が、凛とした佇まいで説得力を増していく。広場の各所にスピーカーが設置されている細やかさや、かなりの台数で捉えたメンバーの表情をヴィジョンで確認できるのも、バンドの熱量を実感できる大きな要因になっている。

ポップでキッチュな「イエロートイ」では石野がトイ・ピアノを弾いたり、メンバーのソロをフィーチャーしたり、4人それぞれの強みが打ち出される。なかなか見事な進行だ。MCで石野が改めて謝辞を述べ、スマートフォンでの撮影と拡散OKな旨を伝える。自分のためというより、素直に今ここで起きていることを発信したくなった人も少なくないのでは? さらに「ネオワビシイ」ではタイトルである"ネオワビシイ"をシンガロングしたり、"キーボード・ソロ、私!"とカオスなフレーズを石野が弾いたりして、ジャンルのレンジの広さも堪能させ、すりぃのギター・ロックど真ん中なリフから始まる「Casablanca」。
石野のロング・トーンも決まって、ますます演奏の求心力が高まる。石野&やまもと作のミディアム・チューン「ネロリ」は、音源よりもシンガー・ソングライター的な側面を聴かせ、メロディの良さが伝わるのだが、骨太なバンド・サウンドが一本の筋を通す感じだ。合わせて、ヴィジョンでは新宿の夜景や馴染みの建物が映るのが映画的でエモーショナル。

フロントとしてMCは1人で担った石野が、"今日ここでやる曲は全てアルバムに収録されているので"と言いつつ、"今日やらない曲も入っているので、気になった方はCDを手に取っていただけたら嬉しいです!"とアピール。必要なことを伝えなければ、という彼女の律儀さがむしろ清々しい。Aoooの真の魅力は演奏で分かるのだから。

終盤はフォーキーなイントロから、グッとオルタナ色を強めていく「水中少女」。ツミキの表現する青春ギター・ロックが「水中少女」だとすれば、続く「リピート」はすりぃのそれだ。ギタリストとしてもルーツを開陳したフレーズや音色に彼の個性が見えて、今、Aoooという肉体性を獲得した楽しさがプレイに凝縮されているようだった。そしてラストはこのメンバーで初めて作ったナンバー「アパシー」を夜に向けて放つ。尖ったマイナーチューンはガレージ・ロックっぽいすりぃのギター、煽るようなツミキのドラミング、ガッチリ低いところで蠢くやまもとのベースラインで強烈な体感を生む。



しかも歌謡的なメロと乗りやすいビートが今、むしろクリティカルに感じた。約40分間で10曲。イベントやフェスより多い曲数、街中と思えない程しっかりプロデュースされた音作りも素晴らしいが、何より異なるバックボーンを持つ4人が集まり、全員の存在感が強いバンドとして成立している事実に興奮した。ジャンルが細分化され、分析的に音楽を聴く傾向の強い今にあって、久々に現状を超えてくるバンドに出会えた手応えが残った。

今回見逃した人は、12月の1stツアー[Aooo 1st Live Tour "BOWWOW"]をぜひチェックしてみてほしい。

[Setlist]
1. FLASH FORWARD
2. サラダボウル
3. 青い煙
4. イエロートイ
5. ネオワビシイ
6. Casablanca
7. ネロリ
8. 水中少女
9. リピート
10. アパシー

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