Japanese
ヤングスキニー
Skream! マガジン 2024年05月号掲載
2024.04.26 @Zepp DiverCity(TOKYO)
Writer : 藤坂 綾 Photographer:うえむらすばる
3月にEP『不器用な私だから』をリリースしたヤングスキニーが、全国ツアー["老いてもヤングスキニーツアー vol.3" 2度あることは3度ある編]を開催、3月16日から全国を回ったツアーのファイナルを、4月26日Zepp DiverCity(TOKYO)で迎えた。
満員のフロアは開演前から熱気がすごく、この日のライヴへの期待と共にバンドの今の勢いを感じる。SEが流れるとゴンザレス(Gt)、りょうと(Ba)、しおん(Dr)がひとりひとり登場し、ステージ中央で深々と頭を下げる。そして最後にかやゆー(Vo/Gt)が現れると「ヒモと愛」でライヴはスタート。"ヤングスキニーです、よろしく。今日はツアー・ファイナルです。みんなを持ち帰るつもりで頑張ります"と「ゴミ人間、俺」と続く。ゴンザレスが頭上で手を叩くと、大きな手拍子で応えるフロア。「愛の乾燥機」では"もっと来い!"としおんが連発し、会場はますます熱を帯びていく。
ツアーのエピソードからそのまま「本当はね、」へと繋げ、「美談」、「ワンナイト」でしばしクールダウンするものの、ステージに向けられる真剣なファンの眼差しが愛おしく、胸の奥が熱くなる。彼らの歌がそれぞれの体験や日常とリンクし、その想いが静かに燃え上がっているかのような風景。それは「ベランダ feat. 戦慄かなの」、「コインランドリー」、「雪月花」でも同様で、様々な傷や痛みと向き合い、抱きしめ、それをきれいさっぱり浄化していくかのようだ――彼らの音楽が日常を抱きしめ、歌にすることで消化するかのように。
この日珍しく友達を何人かライヴに誘ったというかやゆー。"どんなに大きなライヴハウスでも、どんなに小さなライヴハウスでも、俺がやりたいと思ってることは変わらなくて、ただ友達にカッコいいって言ってもらえるような音楽をやりたい、人でありたい。そう言ってもらえる瞬間のために僕は音楽をやってます。数少ない友達が一緒に遊んでくれて、一緒に飲んでくれて、一緒に語り合ってくれて、そんななんでもない日々を、愛すべき日々を送っていきたいです"と言うと、「愛すべき日々よ」。一体感とかそんなものを通り越して彼らの音楽がこんなにもそれぞれの日常にリンクする理由はここにある。極々些細な日常、小さな小さな世界、それでもそれが最も愛すべきものだと誰もがわかっているから、そしてそれはとても輝かしく、儚いものだとわかっているから、だからヤングスキニーの音楽はこんなにも破壊力があるんだ。
"このツアーを回ってきて、4年間音楽をやってきてわかったことがある。ヤングスキニーはロックだった"と始まった「精神ロック」ではギターが炸裂するロックを聴かせ、途中"お前がやりたいと思ったことに嘘をつくな"と叫ぶ。"これがロックだ"とか"何がロックだとかどうでもいい"とかその矛盾がまたリアルで、このバンドの純度が高い証拠。全力でフロアを煽るしおんの笑顔とメンバーの笑顔、それに応えるファンの笑顔と歌声が会場に溢れ返り、「らしく」、「憂鬱とバイト」で本編は終了。そしてアンコールでは"好きにやっちゃってください"と「プレイボーイシンドローム」、「禁断症状」、「不純愛ラブストーリー」で暴れまくり。ロックでもロックじゃなくてもどうでもいいし、パンクでもパンクじゃなくてもどうでもいいけど、とにかくカッコいい。頭も心もすべてが空っぽになるまで歌い、踊り、叫び、ツアーの幕を閉じた。
この日、次のツアー["老いてもヤングスキニーツアー vol.4" いったことないとこあったんだ編]を発表したヤングスキニー。たくさんの経験が加わることで、この研ぎ澄まされた音楽がこの先どのように変化してゆくのだろうか――彼らの描く音と日常にこれからも期待し続けていたい。
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