Japanese
きのこ帝国
Skream! マガジン 2017年06月号掲載
2017.04.19 @中野サンプラザ
Reported by 小田 淳治
夏の匂いを先取りした気候、桜も緑の洋服に袖を通した4月中旬の中野サンプラザで、きのこ帝国が鳴らした1曲目は「桜が咲く前に」だった。桃色の照明の下で歌われたこの曲は、バンドがメジャーで初めてリリースしたシングルであり、佐藤千亜妃(Vo/Gt)が生まれ育った岩手県から上京するときの心境を綴った曲でもある。個人的な想いとバンドの門出が結実した楽曲は、桜も散りきろうかという東京でしっかりと観客の心に根を張り、花を咲かせた。その光景は、きのこ帝国のバンドとしての成長と、彼らの音楽に宿る生命力の強さが表れた瞬間でもあったように思う。
昨年11月にリリースした最新アルバム『愛のゆくえ』を引っ提げた今回のツアーには、"花の名前を知るとき"というタイトルが付けられていた。楽曲それぞれが誰かのストーリーとなり、アルバム全体で1冊の短編集を成すようなコンセプトは、今日のライヴ全編を語るうえでも必要不可欠な要素だ。そのコンセプトは、今までバンドが奏でてきたすべての楽曲にも同様に影響していく。続くマーチのリズムとメランコリックなリリックがかわいらしい「怪獣の腕のなか」も、リリース当時とは異なったストーリー性を携えて私たちに語り掛けてきた。「クロノスタシス」では歌詞のとおり、ゆらゆらと揺れるステージ照明が楽曲と観客の歩幅を合わせていき、西村"コン"(Dr)と谷口滋昭(Ba)によるR&B然としたグルーヴは春夜を艶やかに彩る。そんな夜は続く「海と花束」の冒頭、あーちゃん(Gt)の荒々しいディストーション・ギターによって一気に明けていき、目も開けられないほどの眩しい音で観客を包み込んでく。出だしから4、5曲でカタルシスへと誘うその流れは、ライヴ全体の期待感に応えた華々しい幕開けでもあった。
"こんばんは、きのこ帝国です"と佐藤が簡単な挨拶を済ますと、小刻みなベースが印象的な「LAST DANCE」が聴こえてきた。ささやくような声が響きわたる"I love you"のフレーズは、会場の温度感を徐々に上げていく。フリーキーな演奏にメンバー自身の肩の力も抜けたのか、そのままレゲエのリズムが心地いい「夏の影」、ホールの形状によるディレイと相まってサイケデリアの増した「MOON WALK」と最新アルバムからの曲が立て続けにプレイされる。かと思えば、ギターを置き、キーボードを力強く打鍵するあーちゃんに見惚れる「スカルプチャー」など、冷静且つ激情に身を任せたメンバーの演奏姿には、何か鬼気迫るものも感じられた。彼らのヒリヒリとした音楽とパフォーマンスは、視覚的に『愛のゆくえ』というアルバムの奥ゆかしさを引き出し、私たちの身体を確かに満たしていく。このとき感じる音楽の幸福感、それもまた、観客に今日という日を特別な思い出として記憶させる大切なエッセンスとなったはずだ。
観客のハンドクラップとバンドのアンサンブルがユニゾンした「風化する教室」を経て、コン、谷口、あーちゃんの3人をメインにしたMCへ。改めてファンへの感謝、そしてホール規模でのライヴはお客さんの顔が意外とよく見えると、時折笑いを交えたトークで会場を和んだ空間に変えていく。そんなやりとりを見ていると、楽曲とのギャップも含め、同じ時を過ごしてきたからこそ育まれたであろうメンバーシップにも、私たちは惹かれていることに気づかされる。
歌詞がツアーのタイトルとしても引用された「愛のゆくえ」からライヴ後半はスタート。つんざくようなフィードバック・ノイズと、ホールから飛び出さんばかりの躍動感が今も脳裏に残る。映画"湯を沸かすほどの熱い愛"の主題歌として書き下ろされ、アルバムを制作する原動力ともなったこの表題曲から放たれるパワーは凄まじい。そのエネルギーは「夜が明けたら」を挟んでプレイされた名曲「東京」、本編のラストを飾った希望への光を見いだす「死がふたりをわかつまで」に至るまで、一切途切れることはなかった。
メンバー全員が今回のツアーTシャツに着替えたアンコールでは、激しいバンド・サウンドで出会いと憂いを歌った「疾走」が鳴り響く。そしてカラフルなライティングが心躍る、聴く人の背中を押す応援歌「ありふれた言葉」にてライヴは幕を閉じた。演奏が終わった会場を見渡せば、今日のライヴにおける幸福感を受けてたくさんの拍手の花が咲いていた。今年9月にバンドは結成10年を迎えるという。今日語られた19の物語は、バンドの9年間の軌跡であるとともに、また新しい物語に向けたプロローグでもあったように思う。ツアーの終着点が、常に新しい音楽の始まりであること。ミュージシャンとしても、クリエイターとしてもこれ以上に素晴らしい姿勢はないだろう。またここから、きのこ帝国の未来が始まっていく。
[Setlist]
1. 桜が咲く前に
2. 怪獣の腕のなか
3. クロノスタシス
4. 海と花束
5. 猫とアレルギー
6. LAST DANCE
7. 夏の影
8. MOON WALK
9. スカルプチャー
10. 畦道で
11. 雨上がり
12. 風化する教室
13. 愛のゆくえ
14. 夜が明けたら
15. 東京
16. クライベイビー
17. 死がふたりをわかつまで
en1. 疾走
en2. ありふれた言葉
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