Japanese
undervár
Skream! マガジン 2015年03月号掲載
2015.01.30 @代官山UNIT
Writer 山口 智男
昨年12月17日にリリースした2ndアルバム『literacy』の最後に収められていた「Defying Gravity」(ご存知、ミュージカル"ウィキッド"の劇中歌)を、MAL(Pf)のピアノに導かれ、Duran(Vo/Gt)が歌い始めるというオープニングに意表を突かれた。しかし、考えてみれば、"(自分達を縛りつけている)重力に逆らう"という意味のタイトルを持つこの曲ほど、"解放リテラシー"と題された今回のツアーのオープニングにふさわしい曲はなかったかもしれない。
そして、眩い光の中、ピアノだけをバックにDuranが「Defying Gravity」を歌い上げると、メンバー全員が力一杯、音を鳴らし始め、「レソフライト」になだれこむ!Duranが奏でるトリッキーなギター・フレーズが印象的なアップテンポ・ナンバー。静と動のコントラストを大胆につけた展開が心憎い。YUTARO(Ba)が足を跳ね上げる激しいアクションを見せながら一気に加速していく演奏を追いかけるようにスタンディングの客席から手拍子が起こった。
『literacy』をひっさげ、全国7ヶ所を回った[undervár LIVE tour 2015"解放リテラシー"]。そのファイナルとなる東京公演。"こんばんは、undervárです。音を楽しんで、もっと暴れてください"
YUTAROがファンが埋めた客席に向かって一言挨拶すると、MALが華やかな音色のピアノを打ち鳴らし「colorful period of history」が始まった。Duranの軽快なカッティングにMALのピアノが絶妙に重なり合うファンキーなポップ・ナンバーだ。客席の後ろから観ている筆者には見えないが、手拍子しているファンはみんな満面の笑みを浮かべていたに違いない。間奏では、Duranが思いきりギターを泣かせたブルージーなソロとバキバキと唸るYUTAROのスラップ・ベースの対決も飛び出した。
そして、Duranのソウルフルな歌にYUTAROとMALが美しいハーモニーを重ねた「思・想ゲーム」。テンポを若干落としながら、福島有(Dr)が刻むダンサブルなビートの上で大空に舞い上がるようなメロディを歌うDuranの艶やかな歌声を聴きながら、元々ギタリストとして活躍していたDuranをヴォーカリストに抜擢したYUTAROの閃きに感謝、感謝、感謝。
前半が終わったところで、ツアー各地で共演してきたバンドとお客さんに感謝を述べたYUTAROは[理屈じゃないよ、大事なのは"理摘む(rhythm)""勘"だ。]という『literacy』のキャッチコピーについて、"理屈を摘み取って勘や直感で、自分を信じてテンポよく生きていくことを伝えたかった。そういうのもありなんじゃないか"と改めて説明。そして、SNSで世界中の人々がそれぞれに喜怒哀楽さまざまな物語を書いているこの時代、"世界の人に向けてどういう歌詞を書けばいいか考えたとき、生まれたことにHappy birthdayと言って、生まれたから今ここに一緒にいるということを言いたいと思った"と曲の背景を訥々と語ってから、"誰の代わりでもない世界のひとりに向けた歌"という「せかいの日・鳥へ」を披露。ぐっとテンポを落として、バンドの佇まいや曲が持つクールな印象とは裏腹に内に情熱を秘めたundervárというバンドが持つ魅力をぎゅっと凝縮したようなスロー・ナンバーを、そこにいる全員がしみじみと聴き入った。
"最高の夜にしましょう!力を貸してください!"とDuranが客席に声をかけてから演奏した1stアルバム『UNiDENTiFiED』の「Söar」以降、バンドがクライマックスに向け、アップテンポの曲を立て続けに繰り出すと、それに応え、火がついたように客席にも動きが出る。手数の多いドラムで怒涛のリズムを繰り出す福島を中心にDuran、YUTAROの3人が向き合い、お互いに笑顔を見せ合いながら音を重ね、ピアノから離れられないことがじれったいと思ったのか、MALはイスの上に立ち上がり、体をかがめて鍵盤を連打!心底、このメンバーで演奏することを楽しんでいるような4人の姿はこの日1番の見どころとして、そこにいる全員の脳裏に焼きついたに違いない。
そして全員で歌った「ideaう」、"bye-bye"というリフレインに"前に進んでいる"という想いを込め、全員で手を振った「TT4N」で、クライマックスを迎えたバンドはアンコールで演奏したダンス・ナンバー「FUNCALL」でステージいっぱいにファンを上げ、ダメ押しで盛り上げると、記憶に残る感動的な光景を作り上げたのだった。
メンバーそれぞれにキャリアとプレイヤーとしての実力を持ちながら、undervárはまだ"若い"バンドだ。まだまだこんなもんじゃないはずだ。この次はこれを上回るものすごい光景を見せてくれるに違いない。ライヴの余韻と共にそんな期待が胸に湧き上がってきた。
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